アゴヒゲアザラシ
(アゴヒゲアザラシ属 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/20 15:09 UTC 版)
アゴヒゲアザラシ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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アゴヒゲアザラシ
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保全状況評価 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) |
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Erignathus barbatus (Erxleben, 1777) |
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和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
アゴヒゲアザラシ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Bearded Seal | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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アゴヒゲアザラシ生息域
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アゴヒゲアザラシ(顎鬚海豹、Erignathus barbatus)はアザラシ科アゴヒゲアザラシ属に属する海棲ほ乳類。
分布
北極点を中心にし、北緯80度以南の北極海周辺からベーリング海、オホーツク海、大西洋のセント・ローレンス湾に分布する[1]。
また、個体数は50万頭で半数がアラスカ海域に生息する。
形態
体長は200-260cm・体重200-360kgになり、北極海に生息するアザラシの中では最大である[2]。 体表に模様はなく、体色は淡灰色から暗褐色。体の大きさに比べ頭部が著しく小さい。 名前の通り他のアザラシに比べヒゲがよく発達しているが、ヒゲは名前に含まれる顎からではなく上唇付近から生えている。 日本近海に生息するアザラシ5種のうち4種(ゼニガタアザラシ・ゴマフアザラシ・クラカケアザラシ・ワモンアザラシ)はゴマフアザラシ属に属するが本種のみがアゴヒゲアザラシ属に属する[3]。
生態
単独性で流氷野が移動する比較的浅い沿岸域を好む。流氷とともに春から夏は北へ、秋から冬は南へ移動する[2]。北海道のオホーツク海沿岸では流氷域に少数の子供が見られるが成獣は稀である[2]。ゆえに日本の首都圏にアゴヒゲアザラシのタマちゃんが現われたことはきわめて稀なケースである[4][5][6][7]。
潜水に適したアザラシであり、水深50-200mの海底で各種のカニやエビ、貝などの底性無脊椎動物やタラなどの底性魚を吸引し採食する。

性成熟年齢はメスで5-6歳、オスで6-7歳である。
4月に氷上で一子を産む。産後の体重は35kg前後あることや、既に防水性の毛を持ち、生まれたときから10%近くの皮下脂肪を蓄えていることから、すぐに子は親と共に海に入り、徐々にではあるが泳ぎ始める。皮下脂肪が3%ほどしかなく白い産毛のままでは水を通してしまう産後のタテゴトアザラシが、10日ほどたってから海に入るのとは対照的である。
交尾は5月である。この時期になると、オスが喉を膨らませ水中で発声し、メスへ求愛する。この発声は1年のうちの数週間だけである。
寿命は25-30年である[8]。
人間との関係


20世紀の初頭、オホーツク海には23万頭生息していたといわれるが、ソ連が捕獲し減少した。獲頭数に規制を設けた結果、1980年代の初めには19万頭にまで回復したとしている。
2002年、東京都の多摩川にオスのアゴヒゲアザラシが出没し、タマちゃんと名付けられブームが起こった[9][10][11][12][13][14][15][16][17]。また、2005年11月頃から徳島県那賀郡那賀川町(現・阿南市)の那賀川にアゴヒゲアザラシのナカちゃんが現れブームになるも2006年8月末に中州で死んでいるのが見つかった[18][19][20][21]。
日本では、「日本の動物」として海洋堂の食玩チョコQでフィギュアが商品化された。
脚注
- ^ “アゴヒゲアザラシ”. イルカ・クジラ・アシカ world. 2016年3月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年2月27日閲覧。
- ^ a b c “アゴヒゲアザラシに関する情報” (PDF). 国土交通省 四国地方整備局. 2025年8月8日閲覧。
- ^ “日本に棲むのは〇〇アザラシ!春だけの光景って??”. 環境省 北海道地方環境事務所 (2019年5月22日). 2025年8月8日閲覧。
- ^ 「たまちゃん、船嫌い南下? 八景島シーパラダイス・◯◯さんに聞く」『東京新聞』中日新聞東京本社、2002年9月14日。オリジナルの2002年10月3日時点におけるアーカイブ。2025年5月24日閲覧。
- ^ 「タマちゃんなぜ南下、専門家は「海流」「迷子」」『朝日新聞』朝日新聞社、2002年9月17日。オリジナルの2002年10月1日時点におけるアーカイブ。2025年5月24日閲覧。
- ^ 「中川(越谷・草加)にタマちゃん?」『埼玉新聞』埼玉新聞社、2003年4月21日。オリジナルの2003年6月25日時点におけるアーカイブ。2025年6月21日閲覧。
- ^ 「タマちゃん、さらに下流で目撃 越谷の見物人は空振りに」『埼玉新聞』埼玉新聞社、2003年4月25日。オリジナルの2003年4月26日時点におけるアーカイブ。2025年6月21日閲覧。
- ^ 「あれから20年、タマちゃんにもう一度 見守る会2代目会長の夢」『毎日新聞』毎日新聞社、2022年8月7日。2025年8月8日閲覧。
- ^ 「アゴヒゲアザラシのタマちゃん追い、見物人が奔走 鶴見川」『朝日新聞』朝日新聞社、2002年9月14日。オリジナルの2002年10月15日時点におけるアーカイブ。2025年5月24日閲覧。
- ^ 「タマちゃん、一晩で3キロ川下り 横浜港近くで目撃」『朝日新聞』朝日新聞社、2002年9月14日。オリジナルの2002年10月15日時点におけるアーカイブ。2025年5月24日閲覧。
- ^ 「タマちゃん、横浜市の大岡川に出現 南下続く」『朝日新聞』朝日新聞社、2002年9月15日。オリジナルの2002年10月15日時点におけるアーカイブ。2025年5月24日閲覧。
- ^ 「タマちゃんのために「水上バイク遠慮して」 県が看板」『朝日新聞』朝日新聞社、2002年9月17日。オリジナルの2002年10月15日時点におけるアーカイブ。2025年5月24日閲覧。
- ^ 「「タマちゃん」グッズ全国発売 携帯ストラップなど」『朝日新聞』朝日新聞社、2002年9月28日。オリジナルの2002年10月1日時点におけるアーカイブ。2025年5月24日閲覧。
- ^ 「麦わら帽子の「タマちゃん」かかし登場 横浜のイベント」『朝日新聞』朝日新聞社、2002年9月30日。オリジナルの2002年10月1日時点におけるアーカイブ。2025年5月24日閲覧。
- ^ 「江戸時代にもタマちゃんがいた? 名古屋の特別展が話題に」『朝日新聞』朝日新聞社、2002年10月9日。オリジナルの2002年10月9日時点におけるアーカイブ。2025年5月24日閲覧。
- ^ 「タマちゃん、バスに乗る!? 国際興業バス、20日から記念カード」『埼玉新聞』埼玉新聞社、2003年6月18日。オリジナルの2003年6月23日時点におけるアーカイブ。2025年6月21日閲覧。
- ^ 「多摩川にひょっこり現れた人気者」『日本経済新聞』日本経済新聞社、2018年10月26日。オリジナルの2018年10月26日時点におけるアーカイブ。2020年2月27日閲覧。
- ^ 「「ナカちゃん」現れず 那賀川のアザラシ、見物人からため息」『徳島新聞』徳島新聞社、2005年11月4日。オリジナルの2006年5月20日時点におけるアーカイブ。2025年5月24日閲覧。
- ^ 「「ナカちゃん」2日ぶり姿現す 那賀川のアザラシ」『徳島新聞』徳島新聞社、2005年11月4日。オリジナルの2006年5月20日時点におけるアーカイブ。2025年5月24日閲覧。
- ^ 「ナカちゃん死ぬ」『神戸新聞』神戸新聞社、2006年8月27日。オリジナルの2006年9月17日時点におけるアーカイブ。2025年5月24日閲覧。
- ^ “II.ナカちゃんの足跡” (PDF). 国土交通省 四国地方整備局. 2025年5月24日閲覧。
参考文献
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- Ronald M. Nowak " Walker's Mammals of the World(Walker's Mammals of the World)" Baltimore : Johns Hopkins University Press(1999). ISBN 0801857899
- 和田一雄・伊藤徹魯 『鰭脚類 : アシカ・アザラシの自然史』東京 : 東京大学出版会 、1999年、284頁。 ISBN 4130601733
- 和田一雄編著 『海のけもの達の物語 : オットセイ・トド・アザラシ・ラッコ』東京 : 成山堂書店、2004年 172頁。 ISBN 4425981316
- 斜里町立知床博物館編 『知床のほ乳類』斜里町 : 斜里町教育委員会、 2000年。 ISBN 4894530813
関連項目
- アゴヒゲアザラシ属のページへのリンク