アイランズ (キング・クリムゾンのアルバム)
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『アイランズ』 | ||||
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キング・クリムゾン の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 | ||||
ジャンル | プログレッシブ・ロック | |||
時間 | ||||
レーベル | ||||
プロデュース | キング・クリムゾン | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
チャート最高順位 | ||||
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キング・クリムゾン アルバム 年表 | ||||
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ミュージックビデオ | ||||
「Sailors Tale」 - YouTube |
『アイランズ[注釈 1]』(英語: Islands)は、キング・クリムゾンが1971年に発表したスタジオ・アルバム。通算4作目。
解説
1970年、キング・クリムゾンはロバート・フリップ(ギター、メロトロン)とピート・シンフィールド(作詞、照明)の2名のオリジナル・メンバーと、メル・コリンズ(サックス、フルート)、ゴードン・ハスケル(リード・ボーカル、ベース・ギター)、アンドリュー・マカロック(ドラムス)の新メンバー[注釈 2]、さらにジャズ・ピアニストのキース・ティペット[注釈 3]と彼のグループのメンバーやジョン・アンダーソンらのゲストによって、サード・アルバム『リザード』を制作した。そしてオリジナル・メンバーによる1969年のアメリカ・ツアー以来となるライブ活動を行うために、12月にアルバムを発表する前にリハーサルを開始するが、その初日の11月2日にハスケル、引き続いてマカロックが脱退してしまった[1]ので、新メンバーを探さなければならなくなった。
フリップは同年6月に、ティペットが主催する60名を超える大編成ジャズ・バンドであるセンティピードのアルバム『セプトーバー・エナジー』のプロデューサーを務めた[2]。その時に紹介されたボーカリストのボズ・バレルをオーディションに招き、採用した。またキース・エマーソンに推薦されたドラマーのイアン・ウォーレスをやはりオーディションの後に採用。ベーシスト探しは難航し、ようやくスティーライ・スパンのリック・ケンプに決定したが、ライブ活動の為のリハーサルの直前に加入を断られてしまった[3]。フリップ達はギターを弾けるバレルがベーシストを兼任する策を思いつき、フリップとウォーレスが協力して彼にベース・ギターを教えることになった[4]。
1971年4月、彼等はフリップ(ギター、メロトロン)、バレル[注釈 4](リード・ボーカル、ベース・ギター)、コリンズ(サックス、フルート、メロトロン)、ウォーレス(ドラムス、バック・ボーカル)、シンフィールド(FOH・サウンド・エンジニアリング、VCS3・シンセサイザー、照明)の顔ぶれでフランクフルトのズーム・クラブで4夜連続のコンサートを行ない[5]、ライブ活動を開始した。5月から10月末までイギリス・ツアー[6]を行なうと共に、7月からは並行して本作を制作した。シンフィールドは制作状況の変化を指摘して、フリップと彼の細かい指示により厳しくコントロールされた前作『リザード』とは異なり、本作は「ギグとギグの合間にレコーディングを繰り返す為、反動で思いつくままに制作された」と述べている[7][8]。
前作に引き続きキース・ティペット[注釈 5]と彼のグループのメンバー、加えて女性オペラ歌手のポーリナ・ルーカスとヴァイオリニストのウィルフレッド・ギブソン[注釈 6]がゲスト参加した[9]。「フォーメンテラ・レディ」[10]の初期セッションではベテランのジャズ・ピアニストであるジュールス・ルーベン(Jules Ruben)[注釈 7]が参加したが音楽的に合わず、ティペットに代わっている。
6曲中、2曲がフリップ作のインストゥルメンタルで、4曲がフリップとシンフィールドの共作。シンフィールドによる歌詞は、『オデュッセイア』の世界観から影響を受けた内容となっている。「レターズ」[11]は、デビュー当時の1969年、オリジナル・メンバーのライブで演奏されていた「ドロップ・イン」という曲を改作したものである[注釈 8]。
ジャケットはシンフィールドのデザインによる。いて座三裂星雲の写真を表裏に使用した外ジャケットに見開きのスリーブが入れられたもので、スリーブの表裏には彼が食品色素を紙に垂らして描いた島の絵が用いられ[12][13]、内側にはメンバーの写真が掲載された[注釈 9][14]。アメリカ盤の初回盤[15]のジャケットはスリーブに用いられた彼の絵に差し替えられた[16][12]。
収録曲
SIDE ONE
- フォーメンテラ・レディ - Formentera Lady (10:14)
- 船乗りの話 - Sailor's Tale (7:21)
- Fripp
- レターズ - The Letters (4:26)
- Fripp, Sinfield
SIDE TWO
- レディース・オブ・ザ・ロード - Ladies of the Road (5:28)
- Fripp, Sinfield
- プレリュード:かもめの歌 - Prelude: Song of the Gulls (4:14)
- Fripp
- アイランズ - Islands (11:51)
- Fripp, Sinfield
参加ミュージシャン
- ロバート・フリップ - ギター、メロトロン、ハーモニウム
- メル・コリンズ - サックス、フルート、バスフルート、バッキング・ボーカル
- ボズ・バレル - ボーカル、ベース、振付け
- イアン・ウォーレス - ドラムス、パーカッション、バッキング・ボーカル
- ピート・シンフィールド - 作詞、映像
ゲスト・ミュージシャン
- キース・ティペット - ピアノ
- マーク・チャリグ - コルネット
- ハリー・ミラー - ダブルベース
- ロビン・ミラー - オーボエ
- ポーリナ・ルーカス - ソプラノ・ボーカル
- ウィルフレッド・ギブソン[9] - ヴァイオリン(クレジットなし)
クレジット
Robert Fripp: | guitar, mellotron, Peter's Pedal Harmonium and sundry implements. |
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Mel Collins: | flute, bass flute, saxes and vocals. | |
Boz: | bass guitar, lead vocals and choreography. | |
Ian Wallace: | drums, percussion and vocal. | |
Peter Sinfield: | words, sounds and visions | |
Featured players | ||
Keith Tippett: | piano. | |
Paulina Lucas: | soprano. | |
Robin Miller: | oboe. | |
Mark Charig: | cornet. | |
Harry Miller: | string bass. | |
Engineer Andy Hendrikson. | ||
Cover Design & Painting: Peter Sinfield | ||
Photographs: Robert Ellis | ||
Equipment: Vick & Mike | ||
Recorded at Command Studios, Picadelly, London. | ||
Produced by King Crimson for E.G. Records. | ||
All songs published by E.G. Music Ltd. ©1971. |
本作発表後の動向
彼等は本作の発表と相前後して1971年11月10日から12月11日までの約1か月間、アメリカ・カナダ・ツアーを行った。帰国後、フリップはシンフィールドに「もう一緒に仕事ができない」と解雇を通告した[17]。さらに彼は年が明けて1972年1月のリハーサルで残りの3名と対立した[18]ので解散を決めた。彼等は所属事務所のEGからアメリカ・ツアーの契約が残っていると指摘された[19]ので、2月から契約履行の為のツアーを始め、4月1日の終了と同時に解散した。フリップ以外の3名はツアーで一緒になったアレクシス・コーナーと意気投合して、アメリカに残ってコーナーの新しいバンド『スネイプ』に加入[20]。フリップは帰国して同ツアーのライブ・アルバム『アースバウンド』(1972年)を編集する[21]とともに、新メンバーを探し始めた。
本作の制作と並行して行なわれた1971年のツアーの模様は『レディース・オブ・ザ・ロード』(2002年)、"Sailors' Tales (1970–1972)"(2017年)など[注釈 10]に収録された。
キング・クリムゾンは2014年にフリップ、コリンズを含めて再編成され、本作の収録曲の幾つかをコンサートで取り上げてライブCDに収録した[注釈 11]。
脚注
注釈
- ^ かつての日本語タイトルは『アイランド』だったが、2006年の再発CDからは原題と同じ複数形『アイランズ』となっている
- ^ コリンズとハスケルはセカンド・アルバム『ポセイドンのめざめ』にも参加した。同アルバムでは8名が現メンバー、旧メンバー、ゲストの区別なく記載され、両名が正式メンバーとしての契約を既に結んでいたがどうかは明らかではない。
- ^ 『ポセイドンのめざめ』にも参加した。
- ^ 当時は『ボズ』("Boz")と名乗った。
- ^ 前々作『ポセイドンのめざめ』にも単独でゲスト参加した。
- ^ 『セプトーバー・エナジー』の制作に参加してフリップと知り合った。「フォーメンテラ・レディ」の終結部から「船乗りの話」への移行部にかけての録音に参加。クレジットされていない。
- ^ のちに娘がシンフィールド夫人になった。
- ^ 『エピタフ -1969年の追憶-』に、1969年の「ドロップ・イン」のライブ演奏が、シンフィールドを除いたオリジナル・メンバーの名義の作品として、収録されている。
- ^ キング・クリムゾンのアルバムでは初めての事だった。
- ^ キング・クリムゾン・コレクターズ・クラブから発売された『ライヴ・アット・プリマス・ギルドホール 1971』(2000年)、『ライヴ・イン・デトロイト、MI 1971』(2001年)、『ライヴ・イン・ブライトン 1971』(2005年)、『ライヴ・アット・ザ・マーキー 1971』(2012年)がある。
- ^ 『ライヴ・アット・オルフェウム』(2015年)、『ライヴ・イン・トロント』(2016年)、『ラディカル・アクション〜ライヴ・イン・ジャパン+モア』(2016年)、『ライヴ・イン・ウィーン2016』(2018年)に「船乗りの話」と「レターズ」。『ライヴ・イン・シカゴ2017』(2017年)に「レターズ」と「アイランズ」。『メルトダウン〜ライヴ・イン・メキシコ』(2018年)に「船乗りの話」、「レターズ」、「アイランズ」。『音楽は我らが友 ライヴ・イン・ワシントン・アンド・アルバニー2021』(2021年)に「アイランズ」。
出典
- ^ Smith (2019), pp. 100–101.
- ^ Smith (2019), pp. 115–116.
- ^ Smith (2019), pp. 110–111.
- ^ Smith (2019), p. 111.
- ^ Smith (2019), pp. 485–486.
- ^ Smith (2019), p. 114.
- ^ (Smith,Sid. King Crimson:Track By Track. London:helter skelter publishing Limited.2002)
- ^ Smith (2019), p. 118.
- ^ a b Smith (2019), pp. 118–119.
- ^ Smith (2019), p. 421.
- ^ Smith (2019), pp. 114, 423.
- ^ a b Smith (2019), p. 120.
- ^ “Discogs”. 2025年8月29日閲覧。
- ^ “Discogs”. 2025年8月29日閲覧。
- ^ “Discogs”. 2025年8月29日閲覧。
- ^ 日本盤CD(IECP-50004)ライナーノーツ(赤岩和美、2003年12月)
- ^ Smith (2019), p. 123.
- ^ Smith (2019), p. 125.
- ^ Smith (2019), p. 126.
- ^ Smith (2019), p. 128.
- ^ Smith (2019), pp. 128–129.
引用文献
- Smith, Sid (2019). In the Court of King Crimson: An Observation over Fifty Years. Panegyric. ISBN 978-1916153004
外部リンク
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