りすの書房とは? わかりやすく解説

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りすの書房

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/27 04:57 UTC 版)

りすの書房(りすのしょぼう)とは、東京都墨田区に存在した出版社である。代表取締役男性2015年11月時点で26歳)が1人で経営していた[1]が、同社代表は2015年11月20日に解散したと述べている[2]。「ユダ書院」ほか、4つのレーベル(ブランド名)で出版していたという[3]

概要

会社の所在地[4]には、理容室が存在する[5](現在は取り壊されて別の建物が存在する)。2015年11月6日放送の日本テレビスッキリ!!』の報道に拠れば、取材する2日前まで「りすの書房」という縦書きの札が出ていたことが明らかとなっている[6]

『亞書』

2015年2月からアマゾンジャパンインターネット通販で1冊6万4800円の値段をつけた『亞書』が96巻ほど次々と1冊ずつだけ扱われてきた[5]ことが、同年10月頃にネット上で話題となった。どの巻もA5判で480ページのハードカバーである[1]

それを受けて、全国紙週刊誌がこれを採り上げ、国立国会図書館納本制度により、すでに42冊分の136万円余が支払われていることが明らかになった[1]。さらに、亞書以外も含めた同社出版の本(著作権のない聖書などを「1冊5万円ほど」[5])は、国立国会図書館にこれまで288冊届き、このうち252冊分の代償金として621万7884円が既に支払われていることも判明した[7]

国立国会図書館の広報によると、「ハードカバーで製本されており、簡易なものではありませんでした。また、ネット上でも頒布されていたのをこちらで確認しています」[5]ということである。田村俊作慶應義塾大学名誉教授図書館情報学専攻)は、「本の内容から納本の適否を判断することは、検閲につながるのでやってはならない」[1]と述べつつ、「想定外のことだが、この仕組みを悪用しようとすれば、できてしまいそうなことが明らかになった」と述べている[1]

同社代表の主張

亞書について、同社代表は、「まだ1冊も売れていない」と述べている[1]時事通信によると、同書は「注文を受けてから製本するオンデマンド出版本で、販売実績はない」[8]とされているが、他方で同社代表は朝日新聞社の取材に対して「1巻につき20部作っています」とも述べている[3](112巻まで作った[3]ということなので、これが本当ならば112×20=2240冊の『亞書』が存在していることになる)。

この「亞書」の著者として記されている人物「アレクサンドル・ミャスコフスキー」は、架空の人物[1]、実際は同社代表が自分で書いたという[3]。同書の内容は、「パソコンギリシャ文字ランダム即興的に打ち込んだものなので、意味はない」という[3]。また、自分でレーザープリンタ印刷したと述べている[1]

週刊新潮によると、同社代表は、亞書にはレーザープリンタ2台100万円など計1500万円の費用が掛かっており、赤字だと主張している[9]が、この1500万円のうち「800万円が僕の人件費です」と述べている[9]

これに対して、板倉宏日本大学名誉教授刑法)は、「800万円の人件費が正当な対価とは到底、認められません」[9]「高額な代償金を得ようとしたとしか思えない」[9]と述べている。

返却・代償金返金請求

当初、同社代表(匿名)は、この問題に対して「代償金の返還が請求された場合には、その請求に応じる所存でございます」[10]と述べていた。しかし、その後図書館側が本の返却と代償金返還請求を決定した[11]ため、本当に返還請求をされることになり、「納得できない」[8]と主張していた(この制度は、定価の半額で強制的に図書を持って行かれる制度であるから、本来なら返却が決まれば喜ぶべきものである)。しかし、2016年2月4日に公式サイト上で、国立国会図書館に136万円の現金を札束で持参し[12]、返納したと発表した[2]

代償金返還請求に対する同社代表の声明文

返還請求された後、同社代表は、「国立国会図書館の代償金返還に関する声明」と題した声明文を出し、国立国会図書館による頒布実態等の調査や告知[13]に対して、「その滑稽な三文芝居」「噴飯を禁じ得ず」「数を重ねるごとにいよいよつまらず、くそも出ず」「つまらぬ御託が書いてあり、苦笑しました」「この遅滞、このザマときて、こん畜生、俺は激怒した」[12]と恨み節を述べている。また、メディア報道については、「関係各社が一丸となって返還請求実現のために奔走して来た」[12]と報道機関も批判している。

また、『亞書』については、「大感謝セール、六〇〇円の叩き売り、月末恒例『亞書大売出し』を近く開催する予定」[12]としていたが、その後同社のサイトは閉鎖された。

出典

  1. ^ a b c d e f g h 塩原賢、竹内誠人 (2015年11月1日). “1冊6万円謎の本、国会図書館に 「代償」136万円”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). オリジナルの2015年11月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151101053122/http://www.asahi.com/articles/ASHBY3VSMHBYUCVL008.html 2017年1月3日閲覧。 
  2. ^ a b 解読不能な謎の高額本「亞書」 発売元が国立国会図書館に136万円を返納したと発表” (日本語). ねとらぼ. アイティメディア (2016年2月5日). 2016年5月30日閲覧。
  3. ^ a b c d e 塩原賢、竹内誠人 (2015年11月1日). “「ネットの指摘はいわれなき中傷」 「亞書」制作の男性”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). オリジナルの2015年11月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151101195008/http://www.asahi.com/articles/ASHBZ7W1WHBZUCVL03M.html 2017年1月3日閲覧。 
  4. ^ 日本出版インフラセンター・日本図書コード管理センターが運営する、登録出版者の検索にて「りすの書房」と検索。2016年1月14日閲覧。
  5. ^ a b c d “1冊6万円の本を半額で国会図書館に大量納入 税金投入する必要あるのかと疑問が相次ぐ”. J-CASTニュース (ジェイ・キャスト). (2015年10月27日). https://www.j-cast.com/2015/10/27249013.html 2016年1月14日閲覧。 
  6. ^ "物議 なぜ?"謎の本"に136万円超 国会図書館と出版社 直撃取材". スッキリ!!. 6 November 2015. 日本テレビ放送網/TVでた蔵. 2016年3月25日閲覧
  7. ^ “国立国会図書館、高額本78冊納本の出版社に代償金136万円 印刷費用など資料提出求めず”. 産経ニュース (産経新聞社). (2015年11月2日). https://www.sankei.com/article/20151102-2VAYG2XLWVOQ3OTZXL5RY4O4CI/ 2016年1月14日閲覧。 
  8. ^ a b “ラテン文字羅列「アート本」=国会図書館に納本、代償金受給”. 時事ドットコム (時事通信社). (2015年11月21日). オリジナルの2016年1月14日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/Teju1 2017年1月3日閲覧。 
  9. ^ a b c d 国会図書館をカモにできると思いついた「26歳社長」のご口上」『週刊新潮』2015年11月26日雪待月増大号、新潮社2016年1月14日閲覧 
  10. ^ 一部のWEBサイト記事および書き込み等に関する当社の見解”. りすの書房 (2015年11月2日). 2016年1月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月14日閲覧。
  11. ^ https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2015/1214208_1830.html
  12. ^ a b c d 「亞書」制作者がコメントを発表 国立国会図書館の対応に不満” (日本語). ねとらぼ. アイティメディア (2016年2月3日). 2016年3月25日閲覧。
  13. ^ 『亞書』の返却及び代償金返金請求について”. 新着情報. 国立国会図書館収集書誌部 (2016年2月2日). 2016年3月25日閲覧。



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