みずがめ座ゼータ星とは? わかりやすく解説

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みずがめ座ゼータ星

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/03 22:38 UTC 版)

みずがめ座ζ星
ζ Aquarii
星座 みずがめ座
見かけの等級 (mv) 3.65[1]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  22h 28m 49.90685s[2]
赤緯 (Dec, δ) −00° 01′ 11.7942″[2]
視線速度 (Rv) 25.9 km/s[3]
固有運動 (μ) 赤経: 182.92 ミリ秒/[2]
赤緯: 50.36 ミリ秒/年[2]
年周視差 (π) 35.50 ± 1.26 ミリ秒[2]
距離 94.6 光年[注 1]
(29.0 パーセク[4][5][注 1]
絶対等級 (MV) 1.3[注 2]
みずがめ座ζ星の位置(丸印)
物理的性質
色指数 (B-V) 0.406[1]
色指数 (V-I) 0.50[1]
年齢 3 ×109[6]
他のカタログでの名称
みずがめ座55番星, ADS 15971, BD-00 4365, HIP 110960, STF 2909, WDS J22288-0001
Template (ノート 解説) ■Project
みずがめ座ζ星 Aa / Ab
ζ Aquarii Aa / Ab
仮符号・別名 みずがめ座ζ2
見かけの等級 (mv) 4.30[6]
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 0.385 秒[6]
離心率 (e) 0.87[6]
公転周期 (P) 26.0 年[6]
軌道傾斜角 (i) 11.8 ± 6.7°[6]
近点引数 (ω) 100.9 ± 73°[6]
前回近点通過 2006.52[6]
物理的性質
半径 1.1 R[7]
質量 1.4 / 0.6 M[6]
表面重力 5.2 G[8][注 3]
スペクトル分類 F3 V[9]
表面温度 6,600 K[8]
金属量[Fe/H] -0.06 ± 0.15(太陽比)[10]
他のカタログでの名称
HD 213052, HR 8559, SAO 146108[4]
Template (ノート 解説) ■Project
みずがめ座ζ星 B
ζ Aquarii B
見かけの等級 (mv) 4.51[6]
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 3.496 秒[6]
離心率 (e) 0.42[6]
公転周期 (P) 540 年[6]
軌道傾斜角 (i) 142.0°[6]
近点引数 (ω) 269.3°[6]
前回近点通過 1981.50[6]
物理的性質
半径 3.5 R[7]
質量 1.4 M[6]
表面重力 4.3 G[8][注 3]
スペクトル分類 F6 IV[9]
表面温度 6,600 K[8]
金属量[Fe/H] -0.10 ± 0.15(太陽比)[10]
他のカタログでの名称
HD 213051, HR 8558, IRC +00518[5]
Template (ノート 解説) ■Project

みずがめ座ζ星(みずがめざゼータせい、ζ Aquarii、ζ Aqr)は、みずがめ座にある連星系で、「水差し」として知られるY字型のアステリズムの中心をなす恒星である[6][11]見かけの合成等級は3.65で、肉眼でみることができる[1][6]年周視差の測定から推定した、みずがめ座ζ星までの距離は、約95光年である[4][5]

名称

アラビアでは、saʽd al-akhbiyaという月宿が、みずがめ座γ星みずがめ座π星、みずがめ座ζ星、みずがめ座η星からなるアステリズムの辺りとされた。この名前は、「幕屋の中の幸運(の星)」というような意味だったと推測される[12]ウルグ・ベク星表でも、この名前がみずがめ座γ星に付けられ、ζ星、η星、π星が併せて記されている一方、カズウィーニーは、ζ星をAl Saʽdとしていたとされる[13]。また、17世紀エジプトMohammad Al Achsai Al Mouakketが著した天文暦の中で、みずがめ座ζ星は"Achr al Achbiya"(أجر ألأجبية、新ラテン語: Postrema Tabernaculorum)と記されている[14]

中国では、みずがめ座ζ星は、みずがめ座η星、みずがめ座γ星、みずがめ座π星と共に墳墓拼音: Fén Mù)という星官を形成する。みずがめ座ζ星自身は、墳墓一拼音: Fén Mù yī)つまり墳墓の1番星と呼ばれる[15][16]

特徴

発見

みずがめ座ζ星は、1779年ウィリアム・ハーシェル二重星として観測したが、クリスチャン・マイヤー1784年に出版した二重星カタログには、それより前に観測した記録が記されており、真の発見者が誰なのか明らかではない[6]。以後、十分に観測されており、位置関係の変化から、19世紀の初めにはハーシェルが連星だと認識していたとされる[11]

1941年ストランドが、写真での軌道の観測から、みずがめ座ζ星の軌道がケプラー運動から逸脱しており、みえない第3の天体が存在してその公転運動の影響を受けていると考えれば説明できることを明らかにし、みずがめ座ζ星が3重連星であることが発見された[17][18]。当初、第3成分は、二重星の暗い方の恒星みずがめ座ζ星B(みずがめ座ζ1星)の周りを公転していると考えられたが、干渉法による観測が行われるようになると、みずがめ座ζ星Bではなく二重星の明るい方の恒星みずがめ座ζ星A(みずがめ座ζ2星)が伴星を持つと考えられるようになった[19]。更に、補償光学や最新のスペックル干渉法を利用することで、第3星は直接検出され、みずがめ座ζ星Aが近接した連星(みずがめ座ζ星Aaみずがめ座ζ星Ab)で、その周りをみずがめ座ζ星Bが公転していることがはっきりした[20][6]

軌道

みずがめ座ζ星A系とみずがめ座ζ星Bとは、およそ540の周期で公転しており、軌道長半径は3.5離心率は0.42と推定される。また、軌道傾斜角は142.0であるとみられる[6]

一方、みずがめ座ζ星AaとAbとは、およそ26年の周期で公転し、軌道長半径は0.39秒、離心率は非常に大きく0.87と見積もられている[6]

物理的性質

みずがめ座ζ星AとBは、いずれもスペクトル型がF型で、明るさの差は0.2等級程度であまり違わない[9]軌道要素から予想される、各恒星の質量は、みずがめ座ζ星Aaが太陽の1.4倍、みずがめ座ζ星Abが太陽の0.6倍、みずがめ座ζ星Bが太陽の1.4倍である。星系の年齢は、みずがめ座ζ星Aa・Bの物理量と恒星の進化理論から、およそ30億年と推定され、みずがめ座ζ星Abもこれと矛盾はないが、公転軌道の特異性からみずがめ座ζ星Abは、みずがめ座ζ星Aa-Bの2重連星に捕獲された別の起源の恒星である可能性もある[6]

位置

みずがめ座ζ星は、天の赤道のすぐ近くに位置しており、2003年までは南天の恒星(赤緯が負)であったが、地球の歳差の影響で2003年11月21日頃に天の赤道を超え、北天の恒星(赤緯が正)になったとみられる[21]

脚注

注釈

  1. ^ a b 距離(パーセク)は1 ÷ 年周視差)より計算、距離(光年は1 ÷ 年周視差(秒)× 3.2615638 より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
  3. ^ a b 出典での表記は、A系が 22h 28m 49.90685s, −00° 01′ 11.7942″




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