その実在
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/16 04:34 UTC 版)
「エマニュエル・ゴールドスタイン」の記事における「その実在」の解説
ウィンストンは後に逮捕され、仲間だと思っていたオブライエンから尋問と拷問を受けるが、ゴールドスタインや組織が本当に実在したのかどうかを問うウィンストンの質問にオブライエンは答えない。 「“兄弟同盟”は実在するのですか」「ウィンストン、そいつは君が永久に知ることのできない問題だ。もし君を仕上げた後で君が自由の身になれたとしても、また君が九十歳まで生き存えられたとしても、その質問に対する回答が『イエス』か『ノー』かということは分るまい。君が生きている限り、それは君の頭の中に解けない謎として残るだろう」 また彼は党の目的とする真の権力は人間を支配する力であること、党が作る未来の世界では憎悪に文明の基礎が置かれ、絶えず人が人を踏みつけ苦痛を与え勝利を収めることが繰り返され、しかもそれが絶えず増大してゆくこと、しかしそのためにはいかなるときでも敵の存在が不可欠なことを説く。 顔というものは踏みつけるためにあるものだ。異端者、つまり社会の敵は何時までも存在し、従って彼らは繰り返し敗北を喫し、屈辱を受けることになるのだ。(…)スパイ、裏切り、逮捕、拷問、処刑、行方不明は永遠になくなるまい。勝利の世界であると同時に恐怖の世界となるのだ。党が強力になればそれだけ寛容ではなくなるし、反対派が弱化すればそれだけ専制は強化される。ゴールドスタインとその異教は永久に生き続けよう。毎日のように、いや一瞬毎に彼らは敗北させられ、面目を傷つけられ、嘲弄され、唾を吐きかけられるだろう――それでいながら、彼らはずっと生き続けるのだよ。 オブライエンはゴールドスタインの本を書くのに自分も協力したと言い、社会の在り方の説明としては本当だが、党を打倒するためという政治綱領は全くのナンセンスであると述べる。しかしこの言葉も真実であるかどうかは明らかにはされない。
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