その他の宗教曲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/18 21:32 UTC 版)
「オルランド・ディ・ラッソ」の記事における「その他の宗教曲」の解説
その他の典礼音楽には、賛歌やソロモンの雅歌、100曲以上のマニフィカト、聖務週間日課のためのレスポンソリウム、受難曲、預言者エレミアの哀歌、主要な祭日のための独立した楽曲などがある。 ラッソは、「ムジカ・レゼルヴァータ musica reservata 」様式の作曲家として知られている。大まかに言うと、テクストの内容を音楽に濃密に表出させ、半音階技法をとる作曲様式のことをいい、特に音楽通のために作曲された楽曲の様式を指すともいわれる。ラッソ作品でこの様式を代表する有名な例は、12曲のモテットからなる曲集《シビラの預言 Prophetiae Sibyllarum 》であり、ジェズアルドを連想させるような大胆な半音階的和声が広く活用されている。この作品における和声進行のいくつかは、20世紀初頭になるまで 二度とお目見えしないようなものもある。 ラッソは、すべての福音書に基づき受難曲を作曲した。すなわち、《マタイ受難曲》《マルコ受難曲》《ルカ受難曲》《ヨハネ受難曲》である。全曲とも無伴奏様式で作曲されている。 モテット作曲家としてのラッソは、ルネサンス音楽全体で最も変幻自在で秀逸である。その作品は、崇高なものから滑稽なものまで幅広く、しばしば宗教音楽には結びつかないような一抹のユーモア感覚も忍ばせている。例えば、《バビロンの河のほとりに Super flumina Babylonis 》は、拙い歌手の諷刺であり、口ごもったり、やめたり歌いだしたりして、大体のところ混乱に陥っている。モーツァルト的な作曲態度でというわけではないが、発想としては《音楽の冗談》に近いものがある。ラッソのモテットの多くは、儀式的な機会のために作曲されたが、首脳陣の訪問や婚礼・条約締結などの国事に楽曲の提供を要請される、宮廷作曲家にはありがちなことだった。しかしながらラッソが最も広い範囲にわたって永続的な名声をかち取ったのは、宗教的なモテット作曲家としてであった。 ラッソの《ダヴィデの改悛詩篇集 Psalmi Davidis poenitentiales 》(全7曲)は、ルネサンス音楽全体の詩篇唱の中で最も有名な作品である。華麗対位法(自由対位法)が使われ、ゴンベールのようなネーデルランド流儀の通模倣様式は避けられているが、それでも随所でパレストリーナ作品とは異質の表現手段が使われている。ラッソは、いずこをとっても情緒的な効果を求めて力を尽くし、テクスチュアの多様性を利用し、テクストの終わりになるまで曲付けに心配りを続けている。この曲集の最終曲、《深き淵よりわれは叫びぬ De profundis 》(詩篇 第129番)は、多くの研究家によって、同一のテクストによるジョスカン・デ・プレの作品と並んで、ルネサンスのポリフォニー音楽の最も高い水準に位置づけられている。
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