海洋構築物の法的地位
【英】: legal status of artificial islands / installations and structures
同義語: installations and structures
国連海洋法条約では、排他的経済水域において人工島、設備および構築物(石油開発では一般に海洋構造物ということが多い)の設置と利用に対して沿岸国の排他的管轄権を認めている。またこれらの周囲に安全区域を設定することもできる。領海基線より 200 海里以遠の法的大陸棚上にある人工島、設備および構築物に対しても沿岸国は同様の管轄権が認められている。しかし、人工島、設備および構築物は島の地位を有せず、したがって領海を持てず、またその存在は領海、排他的経済水域または大陸棚の境界画定に影響を及ぼすものではない。 海洋構築物の分類と定義は、海事上の問題処理に適用すべき法令の選択に際して重要と思われるが、国連海洋法条約においても定義は与えられておらず、各国においてもさまざまな法令上の取扱いあるいは裁判例があって、一律ではない。特に掘削装置の場合、掘削船や半潜水式掘削バージは自航能力の有無にかかわらず船舶として扱われるのが普通であるが、掘削時海底上に脚で固定されるジャッキアップ・リグは船舶と見なす説と見なさない説がある。わが国では、商法に船舶の定義が与えられてはいるが、石油開発用の海洋構築物には当てはまりそうにない。また海洋汚染および海上災害の防止に関する法律にいう「海洋施設」があるが、海域にある鉱業法で規定する鉱山に属する工作物は含まない。これは鉱業法と鉱山保安法の法制下にある鉱山施設だからであろう。目覚ましい技術革新により、石油開発用の海洋掘削・生産施設は次々に新しいタイプを産み出している。現に北海に現れた巨大なコンクリート製重力式構造物やテンション・レグ・プラットフォーム、北極海に使用されるケーソン・リグなどは固定プラット・フォーム、土砂浚渫{しゅんせつ}により築造された人工島、浮体(船舶)などの要素を混成した特徴を持っており、海洋構築物の法律上の分類・定義はますます困難になると予想される。 |

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