猪俣の百八燈
名称: | 猪俣の百八燈 |
ふりがな: | いのまたのひゃくはっとう |
種別1: | 風俗習慣 |
保護団体名: | 猪俣の百八灯保存会 |
指定年月日: | 1987.01.08(昭和62.01.08) |
都道府県(列記): | 愛知県 |
市区町村(列記): | 児玉郡美里町大字猪俣 |
代表都道府県: | 埼玉県 |
備考: | 8月15日 |
解説文: | 我が国の盆行事には、百八燈【ひやくはつとう】とか百八松明【ひやくはつたい】と称して百八把の松明を焚いて精霊【しようりよう】の祭りを行うものがある。これらは新盆【にいぼん】の家で行ったり、村共同で山や河原で盛大に行ったりする。 猪俣の百八燈は、八月十五日(もとは七月十五日)に村はずれの堂前山【どうぜんやま】の丘の上に築かれた百八基の塚に百八の灯【ひ】をともす盛大な行事で、地元では猪俣小平六範綱(鎌倉時代にこの土地を開発した人物)の霊を慰めるとも伝えられている。 この行事の主体となるのは、字猪俣の満六歳から満十八歳までの子供組・若衆組【わかいしぐみ】(約五〇名)で、後見役(前年の親方)が総指揮を執り、親方(十八歳)、次親方(十七歳)が幹部となり、行事の企画・指導を行い、十五日までの間に灯をともす松根掘りや、小平六の墓掃除、道こさえ、草刈り、塚つき、燈明器づくりを行う。 塚は村はずれの丘の稜線に沿って百八基築かれており、規模は一般に高さ一メートル、直径三〇~四〇センチメートルで、留塚という両端の塚は一段と大きく、中央の二基は五重塚といって高さ二~二・五メートル、直径七〇センチメートルで、ほかの塚や留塚よりさらに大きく造られている。 行事は、十五日未明に芝を切ってきて百八の塚を築き直すことから始まり、真綿をよった燈心を取りつけた急須に石油を注ぎ燈明器として各塚に配備する。この際、五重塚と留塚、小平六の墓の側にある御公方塚【ごくぼうづか】には松根を置く。十五日の夕刻六時、寺の境内で寄せ太鼓をし、一同が集合すると境内の小平六の墓に燈明をともし、笛・太鼓の行列で出発、堂前山の塚の百八燈に点火すると同時に仕掛花火も行われる。 猪俣の百八燈は、各地で行われる盆の百八燈の行事の中でも百八の塚を築いたその上で盛大に火を焚く点で異色であり、亡魂を慰めるという趣意と相まって塚信仰の様相をよく示している。また、これらの行事が子供組・若衆組によって執行されることなどは注目すべきことで、盆行事の中に祖霊信仰の様相をうかがうことができる典型例として重要である。 |
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