『黒海からの手紙』
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「オウィディウス」の記事における「『黒海からの手紙』」の解説
『黒海からの手紙』(Epistulae ex Ponto、エピストゥラエ・エクス・ポント)全四巻は追放中にかかれたもう一つの詩集である。一巻ごとに異なる友人に対して宛てた書簡の形式をとる。追放処分が解かれて帰還できることに関して、『悲しみの歌』のときよりも悲観的になっており、内容は大略次の三点からなる。一点目はオウィディウスの追放刑を解くことを皇帝の一族に訴えてくれることを願う友人たちへの依頼、二点目は作品に関する友人たちとの議論、三点目は追放中の生活の描写である。 第一巻は10歌を収める。オウィディウスは自身の健康状態を語り(第10歌)、希望や記憶、ローマへの郷愁を歌う(第3, 6, 8歌)。トミスにおいて必要とするものに関する記述もある(第3歌)。第二巻はゲルマニクスを熱烈に待望する内容(第1, 5歌)のほか、追放地での絶望と生活を描いたり、友人たちに自分に代わってローマで主張してもらいたいことを述べたりする内容がある。第三巻は9歌を収める。妻に宛てた内容(第1歌)のほかは友人たちに宛てた内容である。詩人はタウリスのイフィゲニアの物語を語り(第2歌)、クピードーの夢の話をするが(第3歌)、批判に応える歌もある(第9歌)。第四巻は16歌を収める。トミスでの生活の報告と友人たちへの語りかけを主な内容とするが、オウィディウス最後の作品となった。詩人はトミスの冬と春について(第10, 13歌)、また、その地理と気候について語り(第7歌)、気持ち半分ながらもトミスがいいところだと誉める(第14歌)。また、詩人は友人たちが何くれとなく相談に乗ってくれること、援助を申し出てくれることに感謝を捧げる(第4, 9歌)。第12歌はトゥティカヌスという名前の友人に宛てたものであるが、その名前が韻律にうまくはまらない。最終第16歌は敵に宛てたものであり、詩人はあいつを独り残して逝けないと嘆く。結びの対句は「私の肉体を刺すあなたの鉄によろこびはどこにあるか?私が肉体の傷をいやす場所はどこにもない。」である。
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