『独考』の底本について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/13 05:32 UTC 版)
『独考』については、真葛が馬琴に送った本そのものはのこっていない。また、完本の形ではのこっておらず、異なる3本が現存している。 1つは『独考抄録』3巻で、これは、嘉永年間に文政2年11月4日奥書きの木村氏所蔵写本を転写したものだという書き入れがある。木村氏によるものと思われる「婦女の筆にしては、丈夫を慙愧せしむる事書あらはせり。尋常の女にはあらずと歎美す」との書き込みがあり、また、原本の誤字・かなまちがいを訂正したうえで筆写したという文化2年の断り書きがある。文化2年の断り書きは馬琴のものと考えられるので、もともとは馬琴が書写したものの流れを汲むものと考えられる。現在、一般に『独考』として紹介されるのは、この『独考抄録』をもとにしている。 2本めは、只野家旧蔵の自筆本『ひとりかんがへ』であるが、大正年間に刊行のため東京に運んでいたものが、関東大震災の際、焼失してしまったものである。内容は『独考抄録』上巻とほぼ同じである が、『独考抄録』にはない「気水つまる事」という一文がある。鈴木よね子によれば、この真葛自筆本は、真葛が馬琴に贈った『独考』の原型にあたるものである可能性が高い。自筆本は失われてしまったが、中山栄子による初の本格的伝記『只野真葛』(1936年(昭和11年)刊行)巻末に翻刻が掲載されている。 3本目は、真葛が『独考』に追加したいとして馬琴との文通が開始されたのちに馬琴に送ったものがあり、これは『独考追加』と呼ばれ、馬琴筆写本が国立国会図書館にのこされている。
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