『快楽電流』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/13 04:59 UTC 版)
1999年3月刊行。本の帯で「小さい頃から私は売春婦に憧れていた」と謳ったこの作品は、レディースコミックから男性向けの性風俗、ポルノグラフィとしてのAVやポルノ小説(いわゆる狭義の官能小説)、売春・援助交際、東電OL殺人事件までを素材として、藤本が現代女性のセクシュアリティやジェンダーを考察する性の研究に打ちこんできた一つの成果となった。また実験小説として、女性にとってのポルノ・「エロティカ」も試みている。 本書で藤本は、現代女性の生き方が1990年代頃に「受動的な客体」から「能動的な客体」へと質的な変化が起こっていると指摘する。すなわち、受動から能動へと変わりつつも、現代女性は、男性から「愛される存在」でしかなく主体になれない、依然として客体となっているという指摘である。この指摘は、前出のジョルジュ・ドンのダンスを分析した小文に萌芽が見られる。 なお、本書は、白藤花夜子名義で発表してきた作品をも収録するため、藤本は別名・白藤との共著を強く望んだが、版元編集者と装幀デザイナーの説得で断念、白藤が藤本と同一人物であることを明かすことになり、「風俗評論家」として別名・別人格で執筆しようとする藤本の目算は潰(つい)える結果となった。 本書所収の短編官能小説「ワンナイトスタンド」は、この年の10月に出た藤沢周編集の女性競作官能小説集『歓喜まんだら』に、白藤名義で収められている。 しかし本書中で、バクシーシ山下の『女犯』を観て、「確かに面白い」と記し、その後、しかし人権上どうなのだろうかと書いたため、「面白い」と記したことで、杉田聡の批判を受けている。
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