『塩と硫黄』(1960)
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「アンナ・ラングフュス」の記事における「『塩と硫黄』(1960)」の解説
次作『砂の荷物』と共通の主人公マリアは作者ラングフュスの分身であり、また、「マリア」はゲットーまたは強制収容所で亡くなった彼女の母の名前であり、娘の名前でもある。本作品は、ワルシャワ・ゲットーに隔離されたユダヤ人女性とその夫が、逃亡中にポーランド人の裏切りに遭い、スパイ容疑で逮捕され、ユダヤ人であることを認めた夫は処刑され、対独抵抗運動家であったマリアはゲシュタポにより刑務所に収監されるといった、ラングフュスの戦争体験に基づく自伝的な小説である。本書には(ワルシャワ・ゲットーからトレブリンカ強制収容所に移送するユダヤ人を集めた)ウムシュラークプラッツ(集荷場)の様子も描かれている。ルブリン地区親衛隊・警察の統括責任者オディロ・グロボクニクのもと、この大規模移送の準備を命じられたのはアダム・チェルニャクフのユダヤ人評議会であった。マリアは、ウムシュラークプラッツの監視に当たっていたユダヤ人警察官に助けられ、無事、両親のもとに帰りつくが、これがゲットー脱出の契機になっている。書名の「塩と硫黄」は、次の『申命記』29章23節によるものであり、「ユダヤ人に対する憎悪、人間の残虐性、人間の道徳や尊厳の崩壊」を暗示している。 全地は硫黄となり、塩となり、焼け土となって、種もまかれず、実も結ばず、なんの草も生じなくなって、むかし主が怒りと憤りをもって滅ぼされたソドム、ゴモラ、アデマ、ゼボイムの破滅のようである。
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