『信濃の民話』の「黒姫物語」
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「黒姫伝説」の記事における「『信濃の民話』の「黒姫物語」」の解説
1957年(昭和32年)発行の『信濃の民話』に収録された「黒姫物語」は、中野市中町の綿貫市郎・松谷せつによる話を作家の松谷みよ子が再話したものである。内容を要約して以下に記す。 春、高梨政盛は黒姫と共に家臣を連れて花見に出かけた。盃を上げていると一匹の白蛇が姿を現し、黒姫は政盛に促されて白蛇にも盃を分けてやった。その夜、黒姫のもとに狩衣を着た小姓が現れて求婚する。彼は昼間に姫から盃を頂いた者だといい、その気高く美しい様に、姫も心を惹かれた。 数日後、その小姓は黒姫を嫁にもらおうと政盛のもとを訪ねた。政盛から見ても立派な青年ではあったが、自らを大沼池の主の黒龍であると話す小姓に対し、人間ではないものに黒姫を嫁がせる訳にはいかないと破談にした。それから毎日のように小姓が城を訪ねて来るようになって100日、政盛は小姓に試練を課す。しかしそれは政盛が仕掛けた罠であり、痛めつけられた小姓は正体をさらし、怒って四十八池の水を落とそうと嵐を呼んだ。 黒姫は小姓に酷い仕打ちをした政盛を責め、黒雲に向かって嵐を鎮めるよう叫び、鏡を高く投げ上げた。すると黒龍が姿を現し、黒姫を乗せて駆け上った。洪水で荒れ果てた下界を見て嘆き悲しむ黒姫に、黒龍は許しを乞うた。それから二人は共に山の池へと移り住み、その山は黒姫山と呼ばれるようになった。 松谷は戦時中の疎開先であった中野市に、民話採集を目的として再訪している。当地の老人からは、洪水のなか姫だけが生き残ったという話や、姫がヒョウタンを持って大沼池の竜のもとへ嫁いだという話を聞かされ、彼らはこうした話が黒姫伝説の由来だろうと証言した。また、黒姫は中野祇園祭に合わせて帰省し、たった3粒でも雨を降らせるとも伝わる。水害で苦しめられた経験を多く持つ世代は黒姫を「生けにえ」と捉えているのに対し、若年層は「愛の民話」と捉えており、松谷は黒姫伝説のテーマの移り変わりを感じたという。 この物語は「大沼池の黒竜」の題でテレビアニメ『まんが日本昔ばなし』で放送され、同作のDVD第48巻に収録されている。演出は水沢わたる、文芸は沖島勲、美術は山守正一、作画はスタジオ・アローが担当した。また、テレビアニメ『ふるさと再生 日本の昔ばなし』では「黒姫と竜」の題で2014年(平成26年)7月6日に放送された。
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