『万国公法』への失望
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朝鮮において『万国公法』が読まれたのは、国際法における局外中立が朝鮮を取り巻く国際環境に有効ではないかと考えられたためであった。ヨーロッパではブルガリアやベルギーといった小国が大国の狭間にあって、列強の相互利益が合致しているために亡国とならずに済んでいる。このような国際情勢は朝鮮にも当てはまり、局外中立によって朝鮮も生き残れるのではないかとの希望が国際法に寄せられた。 しかし朝鮮知識人たちの希望はすぐ失望に変わる。1895年の日清戦争は、局外中立を宣言したにもかかわらず、主戦場は朝鮮半島であった。アメリカと締結した条約には「周旋条項」があったがアメリカは容易に介入しなかった。さきの兪吉濬は、条約を締結しても、その有効性は平時に限られ、戦時には空文となると述べて失望の色を隠さない。 朝鮮において国際法への信頼性は下降線を辿ったものの、それを放棄する方向には向かわなかった。一部には国際法に対する根強い不信が生まれたが、他方ではむしろ国際法のダブルスタンダード的性格(「近代国際法の二重原理」)に眼が向けられ、国家が自力で自存・自立する努力をしなければ、国際法を利用することができないと考えられるようになり、以後改革に前向きな姿勢が導き出されるようになった。
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