「李徴」の位置付け
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 05:47 UTC 版)
中国の古来から数多くの作品が伝わる人間が虎に変化する説話の一つであり、そのすぐれた作品である。 大室幹雄によると、人間が虎に変化する物語には二つの類型がある。一つは、人間の身心に内発する何らかの変化が虎への変身を惹き起こす、内発的な動機による変態で、これを狂気型とする。もう一つは、当人の意識とかかわりなく、忽然と変身が人の身、ついでに心に生起してしまう、外発的な動機による変態で、これを憑依型とする。この分類によると、「李徴」は、狂気型に属する。 登場人物の李徴は、官職を辞めた後は、唐代に多く見られた、名声や学問、詩文の才能を元手に地方の高官の有力者に生活の糧を求めて放浪する知識人の一人であり、(李白・杜甫も同様の行為を行っている)、当時としては決して特別な存在ではなかった。 大室によると、李徴は「抜け目のないところを示し」ており、かつての赴任地である、つてがあり、名声もあったであろう江南地方を放浪し、騎馬を持ち、下僕を伴い、貧窮を隠して皇族のうちの名士であることを利用して、悠々たる風情を装い、高官や有力者を歴訪したに違いないと推測している。傲慢な性格でありながら、妻子のために1年もこのような、彼にとって不本意と思われる行為を続け、目的を達成したことを、「或る意味で、李徴は立派だった」とも評している。 「李徴」では虎に変化した理由は明確ではないが、このような心理的負担が李徴の病と発狂の原因と推測される。
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