遊び 人間以外の動物の遊び

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遊び

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/01 08:00 UTC 版)

人間以外の動物の遊び

本能に裏打ちされた遊び
たちは棒切れで遊びまわり、それとは知らぬまま、生活に欠かせない運動能力や狩りの技術の習得あるいは鍛錬に励む。ここでは棒切れが遊び道具であるが、狩りをする野生動物であれば獲物がそれに当たることも多い。

遊び行動[16] は、高度な知能を具えた動物において、成長途上にある個体に多く見られるほか、成熟個体にも少なからず見られるものである[17]。 これは、動物が生きてゆく上で必要な身体能力(筋力・心肺能力〈持久力〉・運動能力等を意味する体力免疫力等を意味する基礎的体力)・知識・経験などを、おのずから習得する、あるいは鍛錬するために具わった性質と考えられる。動物は遊びのなかで狩りコミュニケーションの方法を学んでゆく。ヒトは成熟後も遊びを行なうのが一般的である一方、ヒト以外の動物は成熟するとあまり遊ばなくなると言われてきたが、必ずしも研究者はそのようには捉えていない[18]。また、家畜化およびペット化された動物、特にイヌネコなどは、成熟後も遊びたがる傾向があるように見える。イヌやオオカミ等は遊びを通じて、互酬性と公正性の社会規範を教えられる。[19]

野生動物でも、遊び行動は哺乳類鳥類に広く見られ[20]、成熟した個体であってもそれが見られる。哺乳類の中でも霊長類はよく遊び、霊長類の中でも類人猿はよく遊ぶ[21]。哺乳類では他に、クジラはよく遊び、クジラの中でもハクジラ類がよく遊ぶが、ハクジラ類の中でもイルカの遊び行動は観察機会が多いこともあってか一般にまで広く知られている。現生ゾウ目(長鼻目)のゾウ2(ロクソドンタ属〈アフリカゾウ属〉とエレファス属〈アジアゾウ属〉)もよく遊ぶ。また、デグーのような一部の齧歯類でも「物体遊びである可能性がある行動」が確かめられている[16]

霊長類の遊び

霊長類(霊長目、サル目)の遊びは、その形態的特徴から、「運動遊び (locomotor play, locomotor-rotational play, exercise play)」、「物体遊び (object play)」、激しく取っ組み合う闘争遊び (play-fighting, rough and tumble play)」、ごっこ遊びに代表される「想像的な遊び (pretend play, fantasy play, imaginative play, symbolic play)」等に大別することができ[22]、他にも、未成熟個体による擬似性行動子守り行動を遊びと見なす研究者もいる[22]

他者と遊ぶにあたって、掴む、叩く、突き放す、蹴る咬む、追う、逃げるなどといった闘争時にこそ執ることの多い行動に及ぶ際は、「本気ではない」旨を確実に伝えておくことが必要不可欠であり[20]、このような遊びのためのシグナル(プレイシグナル、プレイマーカー)として、最も明瞭なものに、遊び顔、遊び声、および、遊びたいとき以外で使われることのない特別な行動がある[20]

鳥類の遊び

鳥類では、オウム目[17] はよく遊ぶことで知られている。スズメ目に属する数もよく遊ぶが、中でもカラス科はよく遊び[17]、カラス科の中でもカラス属はよく遊ぶことで知られている(観察機会が多いこともあって一般にも広く知られている)。


注釈

  1. ^ 『角川 新字源』では、第2義に「花柳界に遊ぶ」
  2. ^ 和訳版に(Huizinga 1963)がある。
  3. ^ 和訳版に(Caillois 1971)がある。

出典

  1. ^ a b c 福永光司「中国宗教思想史」『中国宗教思想 1』岩波書店〈岩波講座 東洋思想〉第13巻1990年、ISBN 4-00-010333-4 pp.98-107.
  2. ^ a b c d e f g h 広辞苑
  3. ^ a b 世界大百科事典』 第二版
  4. ^ 宝賀寿男「第六章 高志之利波臣の起源」『越と出雲の夜明け』法令出版、2008年。
  5. ^ a b c d e 『角川 新字源』
  6. ^ a b c d e f g h i j k l 大辞泉
  7. ^ a b c d e f g h i 大辞林』 第二版
  8. ^ a b c d e f 森下2000, p. 172.
  9. ^ a b c ホイジンガ(1973)pp.11-14
  10. ^ a b c d カイヨワ(1990)
  11. ^ a b c d e f g h 森下2000, p. 173.
  12. ^ a b c d 森下2000, p. 174.
  13. ^ a b 無籐隆 二宮克美、子安増生(編)「遊び」『キーワードコレクション 発達心理学』改訂版第3刷 新曜社 2005 ISBN 4788508923 pp.124-127.
  14. ^ ピアジェ 1976『遊びの心理学』黎明書房。
  15. ^ 河崎道夫編著1983『子どもの遊びと発達』ひとなる書房
  16. ^ a b 中村哲之, 藤田和生, 瀧本彩加, 別役透, 渡辺創太, 森本陽, 溝川藍, 高岡祥子, 鹿子木康弘「)「研究開発コロキアム」報告〔要約版〕:〔グローバルCOE〕採択:遊び行動と認知機能の関係性についての比較認知科学的・比較認知発達科学的研究」『研究開発コロキアム : 平成20年度 成果報告書』、京都大学大学院教育学研究科、2009年3月、22-23頁、NAID 1200032386922021年11月22日閲覧 
  17. ^ a b c 森川愛. ““動物の心”に関する研究” (PDF). (ウェブサイト). 北海道大学農学部. 2021年11月22日閲覧。
  18. ^ 加藤由子 (2009年10月5日). “平成21年度横浜市立小学校長全体研修会 講演「動物学からみたヒトの子」 加藤由子先生” (PDF). Y・Y NET(公式ウェブサイト). 横浜市教育委員会. 2013年1月12日閲覧。
  19. ^ スー・ドナルドソン, ウィル・キムリッカ, 青木人志, 成廣孝『人と動物の政治共同体 : 「動物の権利」の政治理論』尚学社、2016年、168頁。ISBN 9784860311261NCID BB22813976 
  20. ^ a b c 早木仁成 2005, p. 52.
  21. ^ 早木仁成 2005, p. 5.
  22. ^ a b 早木仁成 2005, p. 49.


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