遊び 遊びの概要

遊び

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/05 01:36 UTC 版)

ピーテル・ブリューゲル子供の遊戯
1560年に描かれた油彩画で、当時のヨーロッパにおける様々な遊びを網羅しようとした風俗画の傑作。

遊びは、それを行う者に、充足感やストレスの解消、安らぎや高揚などといった様々な利益をもたらす。ただし、それに加わらない他者にとってその行動がどう作用するかは問わないのであり、たとえ他者への悪意に基づく行動であっても当人が遊びと認識するのであれば、当人に限ってそれは遊びとなる(むろん、他者はそれを容認しない)。

遊び・遊戯の語源

中国古代の哲人荘周の言行録である『莊子』には「遊」という字が106回使用されており、中国思想史の上で「遊び」という概念は『莊子』と密接な関係を持っている[1]。『莊子』では、人間の心と世界()を結びつけて、何物にも囚われれない主体的で自由な心の在り方を「遊び」と表現した。「遊戯」という言葉の初出として、司馬遷が『史記』老子韓非列傳で荘周を解説する中で綴った「我れ寧ろ汚瀆の中に游戲して自ら快し」という一文が挙げられる[1]。その後、老荘思想の「遊び」の概念は禅宗仏教哲学へと継承され、形骸化した外物を徹底的に排除する「遊戯三昧」へと展開した[1]。これらの中国における「遊」の哲学は日本の仏教芸術にも影響を与えている。

和語あそび」の語源について定説というべきものは無いが、大喪儀の際などに(もがり)の神事に従事することを職とした品部である「遊部(あそびべ、あそべ)」[2]古代に存在したことなどを論拠に、その本義を神道の神事に関わるものとする説がある[3]。ただし、遊部を管掌した遊部君はその居住地や氏族の性格から鉱物採集・金属精錬にも従事したと見られため、「遊部」とは「阿蘇部」のことと考えられ、鳴釜神事に仕える吉備の阿曽女や吉備の鬼神である温羅の妻・阿曽媛と同じ、「ア」(接頭語)、「ソ」(金属・鉄)の意味であったと見る説もある[4]漢字の「」は、「」と「ゆれ動く」意と音とを示す「(ゆう)」によって構成され、「ゆっくり道を行く」意を持つと共に、「あそぶ」意をも表わしている[5]

遊戯(ゆうぎ、wikt)は、第1義に、遊びたわむれること[2][6][7]。第2義には、子供たちが行う、音楽に合わせた踊りや運動であり、美化語で「おゆうぎ」とも言う[6][7]。ただし、「ゆうぎ」と読むようになったのは明治時代以降であり、それ以前は「ゆげ」(ときに「ゆけ」)もしくは「ゆうげ」と読んでいた[3]

「遊び」にかかわる語

遊山(ゆさん[2]、ゆうざん[5])は、他の語義もあるが、一義に、気の向くまま山野に出かけて遊ぶこと[5](現代日本語で言うところの、行楽ピクニックハイキングに近い[5])、一義に、気晴らしに遊びに出かけることを言う。物見遊山(ものみゆさん)は、物見(見物)して遊山すること[6]。気の向くままに見物して遊び歩くこと[6]春遊(しゅんゆう)は、野外に出かけてを楽しむこと[6]。以下は「」の原義に近い「道を行く」意が強まって、遊覧(ゆうらん)は、見物して回ることを、遊歴(ゆうれき)は、をして各地を巡ること[6][7] を、漫遊(まんゆう)は、気の向くままに旅をして各地を巡ること[6][7] を、吟遊(ぎんゆう)は、各地を巡りながら詩歌などを詠むこと[2] を指す。外遊(がいゆう)は、外国を旅すること[2][6][7]、外国に留学すること[6][7]、および、昭和平成時代に見られる用法としては、研究・視察・交渉等々何か重大な目的や使命を帯びて外国を旅することをも意味する。遊学(ゆうがく)は、故郷を離れて他の地域・他国で学問すること[6][7] を意味する。

遊興(ゆうきょう)は、面白く遊ぶこと[2][7]。遊び興じること[2][5][6]。特に、料理屋待合などで酒を飲んだりして遊ぶこと[2][7]。または特に、色事に興じること[6][* 1] を意味する。


注釈

  1. ^ 『角川 新字源』では、第2義に「花柳界に遊ぶ」
  2. ^ 和訳版に(Huizinga 1963)がある。
  3. ^ 和訳版に(Caillois 1971)がある。

出典

  1. ^ a b c 福永光司「中国宗教思想史」『中国宗教思想 1』岩波書店〈岩波講座 東洋思想〉第13巻1990年、ISBN 4-00-010333-4 pp.98-107.
  2. ^ a b c d e f g h 広辞苑
  3. ^ a b 世界大百科事典』 第二版
  4. ^ 宝賀寿男「第六章 高志之利波臣の起源」『越と出雲の夜明け』法令出版、2008年。
  5. ^ a b c d e 『角川 新字源』
  6. ^ a b c d e f g h i j k l 大辞泉
  7. ^ a b c d e f g h i 大辞林』 第二版
  8. ^ a b c d e f 森下2000, p. 172.
  9. ^ a b c ホイジンガ(1973)pp.11-14
  10. ^ a b c d カイヨワ(1990)
  11. ^ a b c d e f g h 森下2000, p. 173.
  12. ^ a b c d 森下2000, p. 174.
  13. ^ a b 無籐隆 二宮克美、子安増生(編)「遊び」『キーワードコレクション 発達心理学』改訂版第3刷 新曜社 2005 ISBN 4788508923 pp.124-127.
  14. ^ ピアジェ 1976『遊びの心理学』黎明書房。
  15. ^ 河崎道夫編著1983『子どもの遊びと発達』ひとなる書房。
  16. ^ a b 中村哲之, 藤田和生, 瀧本彩加, 別役透, 渡辺創太, 森本陽, 溝川藍, 高岡祥子, 鹿子木康弘「)「研究開発コロキアム」報告〔要約版〕:〔グローバルCOE〕採択:遊び行動と認知機能の関係性についての比較認知科学的・比較認知発達科学的研究」『研究開発コロキアム : 平成20年度 成果報告書』、京都大学大学院教育学研究科、2009年3月、 22-23頁、 NAID 1200032386922021年11月22日閲覧。
  17. ^ a b c 森川愛. ““動物の心”に関する研究 (PDF)”. (ウェブサイト). 北海道大学農学部. 2021年11月22日閲覧。
  18. ^ 加藤由子 (2009年10月5日). “平成21年度横浜市立小学校長全体研修会 講演「動物学からみたヒトの子」 加藤由子先生 (PDF)”. Y・Y NET(公式ウェブサイト). 横浜市教育委員会. 2013年1月12日閲覧。
  19. ^ スー・ドナルドソン, ウィル・キムリッカ, 青木人志, 成廣孝 『人と動物の政治共同体 : 「動物の権利」の政治理論』尚学社、2016年、168頁。ISBN 9784860311261NCID BB22813976 
  20. ^ a b c 早木仁成 2005, p. 52.
  21. ^ 早木仁成 2005, p. 5.
  22. ^ a b 早木仁成 2005, p. 49.





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