肝臓
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/07 08:55 UTC 版)
概説
肝臓は、腹部の右上に位置して、ほぼ右肋骨の下に収まっており[1]、頭側(上方)には横隔膜が存在する。ある種の動物では体内で最大の内臓である。非常に機能が多いことで知られ、代謝、排出、胎児の造血、解毒、体液の恒常性の維持などの役割を担っている。また、十二指腸に胆汁を分泌して消化にも一定の役割を持っている。
働きは判明しているだけで500種類以上あるとされ、肝機能を人工装置によって全面的に補うことは出来ない[2]。そのため、肝臓の摘出および機能低下時の対処としては、肝細胞と人工装置との組み合わせによる、ハイブリッド型の人工肝臓が主流となっている[2]。
他方、臓器の中での部位による機能の分化が少なく再生能力が強いため、一部に損傷があっても症状に現れにくい[3]。自覚症状の少なさから、「沈黙の臓器」と呼ばれる[3]。
牛・豚・鶏などの肝臓はレバーと呼ばれ、食材とされる。世界三大珍味のひとつフォアグラは、ガチョウやアヒルに大量のエサを与え肥大させた肝臓である。また魚類(アンコウ等)・軟体動物(イカ等)の肝臓も食用にされる。なお、これらに大量に含まれるプリン体の影響により、多量の摂取は痛風などの原因になる[4]。また、ビタミンAが大量に蓄積されている北極熊やイシナギの肝臓や、テトロドトキシンが蓄積されているフグの肝臓のように、食べると危険なものもある。この他、牛や豚の肝臓は消化酵素を加えて加水分解され、肝臓水解物として二日酔いや慢性肝疾患治療の医薬品原料となる(例:ウルソデオキシコール酸)。
無脊椎動物のいくつかの群にも同様な器官があり、一般には中腸腺といわれる。カニミソなどもこれにあたる。
- ^ 安達和俊 2008, p. 309.
- ^ a b 人工肝臓 日本人工臓器学会、2021年4月8日閲覧。
- ^ a b 『人体解剖の基本がわかる事典』, p. 102.
- ^ 荒川博仁『薬と病気』ヘルス・システム研究所、2004年3月、56頁。ISBN 978-4-9025-2702-5。全国書誌番号:20636801 。
- ^ a b c d 玄番宗一 2011, p. 115.
- ^ 玄番宗一 2011, p. 116.
- ^ マイナビニュース東京大学分子細胞生物学研究所2012年7月10日閲覧
- ^ 安達和俊 2008, p. 310.
- ^ a b c d 玄番宗一 2011, p. 117.
- ^ 坂井建雄 2006, p. 178.
- ^ 坂井建雄 2006, p. 179.
- ^ 友杉直久、「2.ヘプシジンの発見とその後の発展」『日本内科学会雑誌』 2010年 99巻 6号 p.1180-1187, doi:10.2169/naika.99.1180, 日本内科学会
- ^ 嶋津孝、下田妙子 2010, pp. 46, 49, 53, 55.
- ^ 嶋津孝、下田妙子 2010, p. 47.
- ^ R.Flindt 著、浜本哲郎 訳『数値で見る生物学』ジュプリンガー・ジャパン、2007年、52-53頁。ISBN 978-4-431-10014-0。
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