情報処理技術者試験 概要

情報処理技術者試験

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/23 13:56 UTC 版)

概要

情報処理技術者試験は、「情報処理の促進に関する法律(昭和45年法律第90号)」第29条の規定に基づき、経済産業省情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上の水準であることを認定している国家試験である。情報システムを構築・運用する「技術者」から情報システムを利用する「エンドユーザ(利用者)」まで、ITに関係する全ての人に活用される試験として実施している。

特定の製品やソフトウェアに関する試験ではなく、情報技術の背景として知るべき原理や基礎となる技能について、幅広い知識を総合的に評価をしている。 試験合格者には経済産業大臣による「情報処理技術者試験合格証書」が交付される。

試験事務は、独立行政法人情報処理推進機構が行っている。年によってばらつきはあるが、例年50~60万人が受験している。自動車運転免許の試験を除けば、最も年間の受験者数が多い国家試験である。

試験の目的

  1. 情報処理技術者に目標を示し、刺激を与えることによって、その技術の向上に資すること。
  2. 情報処理技術者として備えるべき能力についての水準を示すことにより、学校教育職業教育企業内教育等における教育の水準の確保に資すること。
  3. 情報技術を利用する企業官庁などが情報処理技術者の採用を行う際に役立つよう客観的な評価の尺度を提供し、これを通じて情報処理技術者の社会的地位の確立を図ること。

位置付け

公的機関の情報技術職に関しては、ほとんどの場合において情報処理技術者試験や相当する試験の合格が求められている。例としては、自衛隊技術曹予備自衛官補(技能公募)や、警視庁特別捜査官(サイバー犯罪捜査官)の各職位の任用資格を得る場合などがある(詳細は後述する。)。尚、情報処理技術者試験は技術士や技能士の様に国際相互認証を実施しており、海外の国家資格との相互認証を行うことがある。しかし、中小企業診断士などと同様に、日本国内においては、業務独占資格名称独占資格必置資格ではなく[2]合格者でなければ法的に行えない業務は存在しない。この様に、国家試験ではあるものの、法律的に見て職務の中で資格が与えられる資格試験であるかははっきりしない。しかし、公的機関では試験の合格により評価し採用・昇格が規定されることがあるために資格と称する場合がある。

経済産業省はこの試験を能力認定試験と位置付けているが[2]、「資格試験であるかの議論に意義はない」としている[2]。一方で厚生労働省は資格と位置付けているものと[3]、能力評価試験に位置付けているものに分かれる。(言い換えれば、一応国家試験ではあるものの、実質的には日商簿記検定実用英語技能検定TOEICなどの検定試験の類に近い。)

試験区分

情報処理技術者試験の区分(試験区分)及びそれぞれの対象となる知識及び技能は、情報処理技術者試験の区分等を定める省令(平成9年通商産業省令第47号)において定められている。

2009年度から実施される試験区分は以下の通りである。なお、2008年度までの試験区分及び対象となる知識及び技能は、情報処理技術者試験の変遷を参照のこと。

また「レベル」は、2009年8月28日掲載の「シラバス(情報処理技術者試験における知識・技能の細目)の公開について」[4]による。

ITを利活用する者

試験区分 レベル 略号 英語名称
ITパスポート試験 1 IP Information Technology Passport Examination
情報セキュリティマネジメント試験 2 SG Information Security Management Examination

情報処理技術者

試験区分 レベル 略号 英語名称
基本情報技術者試験 2 FE Fundamental Information Technology Engineer Examination
応用情報技術者試験 3 AP Applied Information Technology Engineer Examination

高度情報処理技術者

高度IT人材として確立した専門分野を持ち、主導する者。スキルレベル4の試験類を総称して高度情報処理技術者試験と呼ばれる。

試験区分 レベル 略号 英語名称
ITストラテジスト試験 4 ST Information Technology Strategist Examination
システムアーキテクト試験 4 SA Systems Architect Examination
プロジェクトマネージャ試験 4 PM Project Manager Examination
ネットワークスペシャリスト試験 4 NW Network Specialist Examination
データベーススペシャリスト試験 4 DB Database Specialist Examination
エンベデッドシステムスペシャリスト試験 4 ES Embedded Systems Specialist Examination
ITサービスマネージャ試験 4 SM Information Technology Service Manager Examination
システム監査技術者試験 4 AU Systems Auditor Examination

  1. ^ 原則として都道府県庁所在地では受験できるが、福島県郡山三重県四日市などの例外あり。全都道府県に1箇所以上の試験会場が設けられたのは、2001年からである。奈良県では、2000年まで試験会場が設置されなかった。ただし、全47都道府県で春期・秋期いずれも受験可能になったのは、後述する山陰地区で改善された2004年秋期以降である。
  2. ^ 2022年まで、神奈川県内では「横浜」(川崎相模原を含む)・「藤沢」(茅ヶ崎平塚小田原を含む)・「厚木」の計3箇所。千葉県内では「千葉(市)」・「」の計2箇所。東京都内では「東京」「八王子」の計2箇所が設けられていた。この変更により、例えば千葉市内を希望するにしても柏市内を希望するにしても、「千葉」を選択するようになった。
  3. ^ 東京における東京ビッグサイト東京流通センター、横浜におけるパシフィコ横浜、千葉における幕張メッセ、柏における東葛テクノプラザなどといったイベント会場で試験実施実績がある[18]
  4. ^ 情報工学の分野において、「キロ」や「メガ」などのSI接頭辞を、国際単位系(SI)の定めに従わず、俗習として1024(210)倍を示す場合があるのは、コンピュータが内部ですべての数値を2進数に置き換えて処理していることと、1024(210)が概ね1000(103)であること、及び、代表的なOSMicrosoft WindowsmacOSなど)にて記憶媒体の容量やファイルサイズの換算に用いていることが主な理由である。
  5. ^ 但し、午前I試験中に途中退出した場合は採点されないため、例え基準点以上の回答をしたとしてもこの場合は除外される。
  6. ^ 例えば、警視庁では、警察官採用試験の第1次試験の成績の一部に利用される[23]
  7. ^ 2009年(平成21年)試験廃止
  8. ^ 2016年(平成28年)試験開始
  9. ^ 1971年(昭和46年)試験開始
  10. ^ 1988年(昭和63年)試験開始
  11. ^ 2006年(平成18年)試験開始
  12. ^ 高度人材ポイント制において、従事しようとする業務に関連する外国の資格等は通常1件(5ポイント)しかポイント獲得できないが、相互認証対象資格は日本の国家資格と同じ枠で2件(5ポイント×2=10ポイント)まで獲得できる[46]






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