一般用医薬品 第一類医薬品

一般用医薬品

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/05 16:12 UTC 版)

第一類医薬品

その副作用などにより日常生活に支障をきたす程度の健康被害が生ずるおそれがある医薬品のうち、特に注意が必要なものや、新規の医薬品。後述するスイッチOTCやダイレクトOTCの大部分が該当する。(イブプロフェンは例外で、指定第二類)

第一類医薬品を販売できるのは、薬剤師の常駐する店舗販売業や調剤薬局のみである。薬剤師が、情報提供を購入者に積極的に説明する義務がある。そのため、全ての製品において、広告では「この医薬品は、薬剤師から説明を受け、使用上の注意をよく読んでお使いください」と表示される(ただし、第一類医薬品の風邪薬・解熱鎮痛薬においては表示内容が一部異なる)。このため、店舗販売業において薬剤師が不在になった場合は販売できない。なお、薬局では薬剤師が不在となった場合は、店舗自体を閉める必要がある。

第一類医薬品は薬剤師による情報提供が必要であり、購入者から情報提供不要の申し出があった場合においても、薬剤師が必要と判断した場合には、積極的に情報提供を行わせる必要があること。また、薬剤師以外が情報提供を行うことがないよう(相談は可)、登録販売者または一般従事者から薬剤師への伝達の体制およびその方法を手順書に記載することが望ましいこととされている。なお、法第36条の10第6項で医薬品を購入し、または譲り受ける者から説明を要しない旨の意思の表明があった場合には適用しないこと[5]。ただし、相談があった場合は全ての医薬品について義務となっている。

店舗における登録販売者および一般従事者による販売・授与は、薬剤師の管理・指導の下で可能とされている[6]

スイッチOTC

これまで医師の処方箋によらなければ使用できなかった指定医薬品(処方箋医薬品)指定の医療用医薬品の中から使用実績があり、副作用の心配が少ないなどの要件を満たした医薬品を薬局などで処方箋なしに購入できるよう、一般用医薬品として認可したものをスイッチOTC薬という。軽い病気や症状はドラッグストアなどで売られる市販薬で治してもらうことで、膨張する医療費を抑制するのが狙いで、風邪薬や胃腸薬、目薬、発毛剤などの製品がある。

1985年に解禁され、水虫治療用の抗真菌外用薬から始まり、イブプロフェン錠、にきび治療外用薬(ペアアクネなど)、ケトプロフェン外用剤、H2ブロッカーなどが1990年代までに市販化された。2000年代に入るとニコレット☆、フェルビナク外用剤、フルコナゾールテルビナフィンなど第二世代の水虫外用薬、ニコチネルパッチ☆、第二世代抗ヒスタミン薬アシクロビル軟膏、肝斑改善を用途としたトラネキサム酸錠剤☆、ジクロフェナクナトリウム外用剤、フッ化ナトリウムと拡充を続け、2011年にはロキソニン錠が解熱鎮痛剤として市販化されるまでに至っている(☆印は生活改善薬)。

スイッチOTC薬の価格は薬価により、メーカーの言い値が効かない医療用よりも高く、医療保険も適用されないが、医師の診察・検査料や処方箋料が不要なため、同一の薬剤を処方されるのであれば安く済み、診察や調剤の待ち時間や手間がかからず利便性が高い。厚生労働省は医療用医薬品のスイッチOTC化を推進しようとしており、さらに今後は高コレステロール、高血圧、高血糖に使用する医薬品もスイッチOTC化することが検討されている[1]

しかし、医学的知識のない者による医薬品の自己使用は病状の悪化をもたらすこともあるので、スイッチOTC製品の使用は薬剤師や医師に相談しなければならない。2009年からの改正薬事法で第1類医薬品に指定され、薬剤師の情報提供が必要(後に一部製品が第2類に鞍替えされているためこの限りではない。ただし、法第36条の10第6項で医薬品を購入し、または譲り受ける者から説明を要しない旨の意思の表明があった場合には適用しないことも留意)[5]。生活改善薬を除き、服用は短期間に留め、重症や服用しても症状がよくならない場合は、ただちに医療機関を受診すること。

2016年度税制改正で、家族合わせて年1万2千円を超える場合、超過した購入費(最高8万8千円)を確定申告所得控除できるセルフメディケーション税制が創設された。ただし年10万円超の医療費を使った場合に適用される、現行の医療費控除との併用はできない[7]

ダイレクトOTC

日本において医療用医薬品としての使用実績がない新有効成分含有医薬品を、そのまま一般用医薬品として販売したものを、ダイレクトOTC薬という。2019年9月時点でミノキシジル含有の発毛剤とチェストベリー含有の月経前症候群治療薬の2つが該当し、いずれも生活改善薬である。以前は赤ブドウ葉乾燥エキス混合物含有の軽度の静脈還流障害による足のむくみ改善薬も該当していたが、製品が製造終了となっている。

購入・使用上の注意点はスイッチOTCとほぼ同じである。

新一般用医薬品

厚生労働省告示第69号(平成19年3月30日)の別表第一に掲げる医薬品以外の第一類医薬品。いわゆるスイッチOTC、ダイレクトOTCの開発と評価のために、使用実態治験(Actual Use Trial: AUT)と市販後調査(Post Marketing Surveillance: PMS)を確実に行うことができるよう指定された区分。 外国における状況と国際的ハーモナイゼーション、具体的には米国FDAの審査手順やWHOの指針に沿う形をとるための措置。セルフメデイケーション(自己治療)には自己判断、自己責任が使用の前提であるので、添付文書とラベルを注意深く読むことが重要であり、添付文書とラベルが理解できる内容であることの重要性が高まっている背景を受けている[8]

要指導医薬品

2014年(平成26年)6月12日に、薬事法(当時)ならびに薬剤師法の一部を改正する法律の施行に伴い、第一類医薬品として販売されていた医薬品のうち、スイッチOTC化してから間もなく、一般用としてのリスクが確定していない品目や劇薬指定の品目については、改正に伴って新設された要指導医薬品へ移行となった。要指導医薬品に指定されたスイッチOTC薬については、原則3年で一般用医薬品(第一類医薬品)に移行させることとなっている[9]。書面による当該医薬品に関する説明を、薬剤師と対面して行わなければならないため、インターネットなどでの通信販売はできない。

要指導医薬品/新一般用医薬品/第一類医薬品一覧

()内は販売名である。承認されているものの販売されていない販売名は除いている。

要指導医薬品

薬剤師の対面による情報の提供および薬学的知見に基づく指導が行われることが必要なもの(法第4条第5項第3号)として厚生労働大臣が指定するもの[10]。 「要指導医薬品」と、黒枠の中に黒字で(判読できない場合は白枠の中に白字で)8ポイント以上の大きさの文字で表示する。

新一般用医薬品

いわゆるダイレクトOTCとスイッチOTC[11]。 要指導医薬品から移行されたもので、期間は移行日から1年間である。「第1類医薬品」と、黒枠の中に黒字で(判読できない場合は白枠の中に白字で)8ポイント以上の大きさの文字で表示する。数字は算用数字を用い、漢数字やローマ数字による表記は認められていない。

  • 第二世代抗ヒスタミン薬:ベポタスチン(タリオンAR)
    ※2023年12月10日付で要指導医薬品から新一般用医薬品(第一類医薬品)へ移行。
  • 角膜疾患治療薬:精製ヒアルロン酸ナトリウム(ヒアレインS)
    ※2023年9月16日付で要指導医薬品から新一般用医薬品(第一類医薬品)へ移行。

第一類医薬品

告示により指定されたもの[12]。 新一般用医薬品同様、「第1類医薬品」と、黒枠の中に黒字で(判読できない場合は白枠の中に白字で)8ポイント以上の大きさの文字で表示する。数字は算用数字を用い、漢数字ローマ数字による表記は認められない。

※オキシコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾールは膣カンジダ治療薬に限る
※ヨヒンビンは劇薬に指定されている要指導医薬品を除く、メチルテストステロンは「眉用育毛剤」として販売している製品がある
※2012年5月31日付で劇薬指定を解除
※抗炎症成分として配合されている場合は除く
  • 禁煙補助剤:ニコチン(ニコチネルパッチ)
※貼付剤のみ
  • 発毛剤:ミノキシジル(スカルプD メディカルミノキ5、ミノアップ、リアップ、リグロEX5エナジー、リザレックコーワ)
  • 消炎鎮痛剤:ロキソプロフェン(ロキソニンS、コルゲンコーワ解熱鎮痛LXα、ロキベール)
※一般用医薬品では「解熱鎮痛薬」となる。また、外用剤は除く

また、2016年9月21日に、体外診断用医薬品のうち、一般用黄体形成ホルモンキットが新たに「第一類医薬品」に指定された(指定に伴い、既に「第二類医薬品」で承認されている体外診断用医薬品については、一般用グルコースキット、一般用総蛋白キット、一般用ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンキットを対象とするように規定された)。一般用黄体形成ホルモンキットは排卵日予測検査薬(ドゥーテストLHa、ハイテスターH、チェックワンLH・II排卵日予測検査薬)として販売されている。


注釈

  1. ^ ただし、雑貨などを販売するドラッグストアなどはスーパーなどと同じように混む時間帯があるため、そのような場合は実質的に詳しく説明をしている余裕がないという実情がある。そのため、ほとんどの場合はただ販売するだけという形になりがちである。

出典

  1. ^ a b セルフメディケーションにおける一般用医薬品のあり方について(平成14年11月8日) 一般用医薬品承認審査合理化等検討会 中間報告書(厚生労働省)
  2. ^ 厚生労働省. “薬事法の一部を改正する法律の概要” (PDF). 2010年7月18日閲覧。
  3. ^ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則 - e-Gov法令検索
  4. ^ 試験問題の作成に関する手引き第4章薬事関係法規・制度p203下段(v) (PDF)
  5. ^ a b c 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律 - e-Gov法令検索
  6. ^ 薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」(平成21年5月8日薬食発第0508003号医薬食品局通知(平成23年5月13日最終改正)159条14項関係 (PDF)
  7. ^ “特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)セルフメディケーション税制”. 国税庁. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm 2020年1月17日閲覧。 
  8. ^ セルフメディケーションを視野に入れた 新一般用医薬品の開発と評価 http://homepage3.nifty.com/cont/27sup/OTC.html
  9. ^ 一般用医薬品のインターネット販売について 平成26年5月厚生労働省 医薬食品局 総務課 (PDF) 2020年1月17日閲覧
  10. ^ 要指導医薬品(厚生労働省)平成26年10月25日更新
  11. ^ 新一般用医薬品(厚生労働省告示第69号(平成19年3月30日)の別表第一に掲げる医薬品以外の第一類医薬品)一覧(平成26年10月25日現在)
  12. ^ 第一類医薬品 (PDF)
  13. ^ 「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」(平成21年5月8日薬食発第0508003号医薬食品局通知(平成23年5月13日最終改正)159条14項関係 (PDF)
  14. ^ 乱用等のおそれがある医薬品 (PDF)
  15. ^ 「薬事法の一部を改正する法律等の施行等について」(平成21年5月8日薬食発第0508003号医薬食品局通知(平成23年5月13日最終改正) (PDF)
  16. ^ 厚生労働省 医薬品等安全対策部会 (PDF) 平成21年5月8日発表






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