バルト海 沿岸都市

バルト海

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/04 23:19 UTC 版)

沿岸都市

ヘルシンキ港
タリン港
クライペダ港

バルト海沿岸は非常によく開発された地域であり、大規模な都市が多く存在する。沿岸都市で最も大きなものは、人口470万人のロシア・サンクトペテルブルクである。

バルト海沿岸の大都市は、以下のようになっている(人口順):

都市名 人口 都市圏人口
サンクトペテルブルク 03/ロシア 4,700,000人 6,000,000人
ストックホルム 01/スウェーデン 0843,139人 2,046,103人
リガ 05/ラトビア 0696,567人 0842,000人
ヘルシンキ 02/フィンランド 0605,022人 1,358,901人
グダニスク 07/ポーランド 0462,700人 1,041,000人
カリーニングラード 03/ロシア 0431,500人
シュチェチン 07/ポーランド 0413,600人 0778,000人
タリン 04/エストニア 0429,500人
グディニャ 07/ポーランド 0255,600人 1,041,000人
キール 08/ドイツ 0242,000人[23]
エスポー 02/フィンランド 0257,195人 ※ヘルシンキ大都市圏の都市
リューベック 08/ドイツ 0216,100人
ロストック 08/ドイツ 0212,700人
クライペダ 06/リトアニア 0194,400人
オウル 02/フィンランド 0191,050人
トゥルク 02/フィンランド 0180,350人

海上交通網

バルト海は内海のため、海況が穏やかであり、また対岸までの距離も短いため、古くより海上交通網が発達している。現在は、移動時間の短い飛行機の利用も多いが、費用が安い、航空路がない、静養などの理由により船舶を利用する人も多い。貿易船の来航も多いほか、バルト海周辺各国の首都・主要都市からは毎日、シリヤラインタリンクなど海運会社の運航するフェリーなどの大型船舶が出航しており、近隣諸国の諸都市とを結ぶ重要な交通手段となっている。中にはバルト海クルーズを行うツアーも数多くある。また、北欧諸国特有の海上交通利用法として、ショッピング目的での利用がある。北欧諸国はどこも高福祉政策をとっているため税金が重く、特に酒や食料品など日用品も高税率となっている。しかし、国際航路であれば船上では免税となるために、安い品を求めて人々が国際航路に乗り込み、船上のショッピングモールで砂糖、肉類などを買い込むといったショッピングクルーズが盛んである[24]。これは北欧諸国がのきなみヨーロッパ連合に加盟した21世紀になっても、EU関税 同盟に加盟していないオーランド諸島に寄港することで免税条件をクリアする[25]などの方法で続いている。

バルト海南岸と北岸を結ぶ鉄道連絡船も数多く存在し、とくに島嶼の多いデンマーク国内を結ぶものや、ドイツ・デンマーク・スウェーデン各国を連絡するものなどがある。一般的には車両航送を行うものがほとんどで、乗客は列車に乗車したままバルト海を渡ることができる。しかし20世紀後半以降、各地で橋梁の建設が進み、連絡船は次第に数を減少させつつある[要出典]

1980年代にはすでに小ベルト海峡を越えてユトランド半島とフュン島を結ぶ橋が架けられていたが、1997年6月1日には大ベルト海峡を越えてフュン島とシェラン島とを結ぶグレートベルト・リンクが開通し、さらに2000年7月1日にはエーレスンド海峡を越えてシェラン島のコペンハーゲンとスカンディナビア半島のマルメとを結ぶオーレスン・リンクが開通して、ここにバルト海を越えてヨーロッパ大陸とスカンディナヴィア半島を直接結ぶ鉄道・道路ルートが完成した。また、フェーマルン・ベルト海峡を潜って、ドイツのフェーマルン島とデンマークのロラン島を結ぶフェーマルン・ベルトトンネルの建設が現在進んでおり、これが完成すればハンブルクとコペンハーゲンの間がさらに短縮される[要出典]

政治

冷戦中は、東側に属するソヴィエト連邦と西側に属する西ドイツ、および中立を標榜する北欧諸国との角逐の場であったが、冷戦終結とソヴィエト連邦崩壊とともに地域協力の必要性が生じ、1992年には沿岸10か国とアイスランドの加盟するバルト海諸国理事会が設立された。2005年、ロシア大統領のウラジーミル・プーチンはバルト海の海底を通ってロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインノルド・ストリームの建設協定を締結し、2011年11月8日に稼働を開始した[26]


注釈

  1. ^ 『新版 地学事典』(平凡社、1996年)1046頁「バルト海」の項によれば、面積42万2000 km2、平均深度55 m、最深422 m[1]
  2. ^ 塩分濃度はバルト海の各所で異なっている。表面では7 ‰、海盆の低層では12-167 ‰である。カテガット海峡では207 ‰以下、ボスニア湾やフィンランド湾では37 ‰以下で、融雪期に河川からの流入量が増すとさらに下がる。特に湾の部分では、下層から外洋の海水が入り込むことで塩分濃度をかろうじて保っている[1]
  3. ^ 氷河性アイソスタシー。英語版記事「Isostasy#Isostatic effects of ice sheets」を参照。
  4. ^ 隆起の中心にあたるのが、かつて存在した厚さ2-3キロメートル (km) の氷床の中心が位置していたボスニア湾で、9ミリメートル (mm)/年のペースである[6]。隆起は、バルト海周辺では1-10 mm/年[1]バルト楯状地全体では5-9 mm/年[7]のペースで進み、バルト楯状地は紀元前6800年頃からの累計で約260 mも隆起したと考えられている[7]。しかし今後も200 mは隆起するとみられており、最終的に520 mは隆起すると考えられている[6]
  5. ^ 『新版 地学事典』(平凡社、1996年)での説明によれば、まず2万-1万2000年前頃に、スカンディナヴィア半島を覆っていた氷床(スカンジナビア氷床)が次第に融けて後退する過程で、現在はバルト海の南部にあたる部分において淡水の湖であるバルト氷湖英語版を形成した[9]。1万年前には湖は北海に対して開け[9]ヨルディア海英語版となった。8500年前には、再び湖となり(アンキルス湖またはアンシルス湖)、7500年前にリットリナ海となる。その後、4000年前頃にはリムネア海、1500年前にはマイア海となって[1]、こんにち知られるバルト海の姿に至る。

出典

  1. ^ a b c d e f g バルト海」『新版 地学事典』p.1046
  2. ^ The Baltic Sea, Kattegat and Skagerak – sea areas and drainig basins” (PDF). スウェーデン気象・水文研究所 (SMHI). 2014年10月27日閲覧。
  3. ^ ヨーロッパの北の海』p.48
  4. ^ ヨーロッパの北の海』pp.20-21
  5. ^ ヨーロッパの北の海』p.104
  6. ^ a b 地形学事典』pp.517-518
  7. ^ a b バルト楯状地」『新版 地学事典』p.1046
  8. ^ 地球を旅する地理の本 5』pp.166-167
  9. ^ a b バルト氷湖」『新版 地学事典』p.1047
  10. ^ 物語 ウクライナの歴史』pp.32-33
  11. ^ 中世ヨーロッパの歴史』pp.130-131
  12. ^ 魚で始まる世界史』p.74
  13. ^ ハンザ「同盟」の歴史』pp.104-105
  14. ^ 北の十字軍』p.274
  15. ^ 魚で始まる世界史』p.79
  16. ^ 商業史』p.122
  17. ^ 近世スウェーデンの貿易と商人』pp.7-27
  18. ^ 近世スウェーデンの貿易と商人』pp.39-48
  19. ^ 図説ロシアの歴史』p.62
  20. ^ 小町文雄『サンクト・ペテルブルグ』中央公論新社、2006年、12-14頁。
  21. ^ 北欧の外交』pp.15-26
  22. ^ 北欧の外交』pp.77-82
  23. ^ Statistische Kurzinformation (ドイツ語)” (PDF). Landeshauptstadt Kiel. Amt für Kommunikation, Standortmarketing und Wirtschaftsfragen Abteilung Statistik. (2012年7月5日). 2012年11月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年10月11日閲覧。
  24. ^ 東欧を知る事典』p.390
  25. ^ オーランド諸島 - フィンランド大使館・東京 : フィンランドについて : オーランド諸島”. フィンランド大使館・東京. 2019年3月2日閲覧。
  26. ^ 廣瀬陽子(旧ソ連地域研究) (2011年11月16日). “独露のノルド・ストリームの開通 - その背景と駆け引き”. SYNODOS. http://synodos.jp/international/2723 2014年11月12日閲覧。 
  27. ^ 環バルト海』pp.32-36
  28. ^ a b 菊池隆之助「バルト海における環境保護の経緯」『環境技術』第2号、環境技術学会、1999年2月20日、148-150頁、doi:10.5956/jriet.28.148NAID 10029246157 
  29. ^ 佐伯富樹「バルト海域の海洋環境保護に関する条約」『中京大学教養論叢』第15巻第4号、中京大学、1975年3月31日、1091-1105頁、ISSN 0286-7982NAID 110004642161 
  30. ^ https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=hvd.hj1391;view=1up;seq=60





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