ノイバラ ノイバラの概要

ノイバラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/17 01:19 UTC 版)

ノイバラクロンキスト体系
ノイバラ(神奈川県横浜市・2007年5月)
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : バラ亜綱 Rosidae
: バラ目 Rosales
: バラ科 Rosaceae
亜科 : バラ亜科 Rosoideae
: バラ属 Rosa
: ノイバラ R. multiflora
学名
Rosa multiflora Thunb.[1]
シノニム
和名
ノイバラ(野茨)
英名
Japanese rose
Eijitsu rose

名称

和名の由来は、とげが多い木であることから、元々有棘の低木類のバラ(いばら)と呼んでいて[5]、野生であることから「野」がついてノイバラとなったものである[4]。別名ノバラ(野バラ)とも呼び親しまれ、日本のバラの代表的な原種である[6]。身近に見られるいわゆる「野バラ」は、大半が本種である[7]。古名はウバラあるいはウマラで、転じてノバラになったとされる[3]。イバラは棘がある小低木のバラ類の総称であったが、次第に特定植物の名称になった[3]

学名種小名multiflora の由来は、白い花を房状に沢山つけるところから、ラテン語で「花が多い」を意味する。

分布と生育環境

日本北海道から九州まで[6]、国外では朝鮮半島に分布する[8]

山地の林縁[5]原野野原草原道端河岸に自生し[4]、日当たりのよい山野のヤブや河川敷など[8]、攪乱(かくらん)の多い場所によく生え、刈り込まれてもよく萌芽する、雑草的な性格が強い。

特徴

つる性落葉低木[9]。日本を代表する野生のバラで、高さは1 - 3メートル (m) ぐらいになる[5]は半つる性で、細く長く伸び、直立または半直立でよく枝分かれして、茂みとなって繁茂する[10][7]。ふつう枝には鋭いとげがあって、時にとげのないものもある[9][6]。高さ2 mほどに伸びて斜めに立ち上がるようになると、茎はしなだれるようになり、他の木にとげを引っかけて持たれるようにして伸びていく[6]。とげは表皮が変形したもので、葉腋の下に1対つき、赤褐色で下向きに歪曲している[6]樹皮は灰褐色や黒紫色、若い枝は緑色か紅紫色[11]。成木になると樹皮は縦に裂けて薄片となって剥がれてトゲはなく、若い幹にはトゲが残る[11]

はバラ科に特徴的な奇数羽状複葉互生[9]小葉が2 - 4対、5 - 9枚つき[4]、全体の長さは10センチメートル (cm) ほどになる。小葉は、長さ2 - 5 cmほどの楕円形・長楕円卵形・卵形で、頂小葉は側小葉よりもやや大きい[10][12]葉縁には細かい鋸歯があり[4]、葉身は薄くて軟らかくしわがあり、表面は光沢がなく無毛、裏面は軟毛が密生する[12]。小葉がついている葉軸には、軟毛と小さなとげがある[12]。葉柄の基部には櫛形の托葉がつき、葉柄に合着していて縁に細かい切れ込みがある[10][12]

花期は初夏(4 - 6月)[4][9]円錐花序で、枝の端に白色のを房状に多数つける[12]。個々の花は径25 - 30ミリメートル (mm) 程度[10]、白色の若干乱れた形の5弁花で野趣があり、花びらは先端が浅いハート形の凹んだ丸形で、やさしい芳香がある[4][8][12]雄しべは黄色く多数つき、雌しべは合着して1本になった花柱が花の中央に立つ[12]

果期は秋(9 - 10月)で[3]、球形で固い果実(正確には偽果)が結実し、赤く熟して目立つ[4][9]。偽実は萼筒が肥大したもので、直径6 - 10 mmの球形で、先端には萼片が残る[10][12]。果皮は薄くて堅くつやがあり、その中に5 - 12個の痩果が入っている[12]。落葉後も冬まで果実は残っているが、やがて黒く変色する[12]

冬芽は短枝の先端につく仮頂芽や、側芽が互生してつき、形は小さな円錐形やイボ状で、4 - 6枚の芽鱗に覆われる[11]。落葉後の葉痕は細長い三日月状か横線形をしていて、維管束痕は3個あるが不明瞭[11]

道端にも多く出現し、棘が多いので雑草としては嫌われる。刈り取っても根本から萌芽し、根絶は難しい。除草剤がよく効くほか、小さいものは根ごと掘り返して対策する。


注釈

  1. ^ 「うまら」と「いばら」は同じ語の異形どうしで、「魚」を意味する「うを⇔いを」などと同様、「う-」の形と「い-」の形が(あるいは地域を隔てて)併存していたものと考えられる。またマ行とバ行の交替は現代語「淋しい」などにも見られる、珍しくない現象。

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Rosa multiflora Thunb.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年6月7日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Rosa polyantha Siebold et Zucc.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2020年6月7日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 田中潔 2011, p. 69.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 田中孝治 1995, p. 154.
  5. ^ a b c 大嶋敏昭監修 2002, p. 333.
  6. ^ a b c d e f g 谷川栄子 2015, p. 142.
  7. ^ a b c d 林将之 2011, p. 149.
  8. ^ a b c d e 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 179.
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n 馬場篤 1996, p. 89.
  10. ^ a b c d e f g 西田尚道監修 学習研究社編 2009, p. 62.
  11. ^ a b c d e 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 155.
  12. ^ a b c d e f g h i j 谷川栄子 2015, p. 143.
  13. ^ 大字典 150版 上田万年 啓成社 1941
  14. ^ 詳解漢和大字典 増補版 服部宇之吉, 小柳司気太 共著 富山房 昭和18
  15. ^ 藤原行成はなぜ妻を「孟光」と称するのか : 日本における孟光像の一考察 章剣 広島大学文学部中国中世文学研究会 中国中世文学研究. (59) 2011-09-20


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