サワガニ サワガニの概要

サワガニ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 16:13 UTC 版)

サワガニ
分類
: 動物Animalia
: 節足動物Arthropoda
亜門 : 甲殻亜門 Crustacea
: エビ綱(軟甲綱) Malacostraca
: エビ目(十脚目) Decapoda
亜目 : 抱卵亜目(エビ亜目) Pleocyemata
下目 : カニ下目 Brachyura
上科 : サワガニ上科 Potamoidea
: サワガニ科 Potamidae
: サワガニ属 Geothelphusa Stimpson1858
: サワガニ G. dehaani
学名
Geothelphusa dehaani White1847
英名
Japanese Freshwater Crab

分布

日本固有種で、青森県からトカラ列島(中之島)までの分布とされている。本土周辺の島嶼では、佐渡島男女群島壱岐諸島種子島隠岐諸島五島列島屋久島なども生息が報告されている。稚ガニとして孵化する(海流に乗って分布を拡大することができるプランクトンとしての幼生期間を持たない)ことから長距離の移動能力に欠けるため、地域集団毎に遺伝子レベルでの分化が認められる。

北海道でも、1990年代から生息の報告があったが、モクズガニの幼個体の誤認[1]や人為的移入の可能性も指摘されており、標本がないため生息の確認には至らなかった[2]。2020年には、2018年9月に北海道渡島半島の河川にてサワガニ属の一種の生息及び繁殖を確認したことが北海道大学の杉目良平らにより報告された。ただし、このサワガニ個体群も北海道在来であることは確認されていない[3]

特徴

オスの腹部

甲幅20-30mm、脚を含めた幅は50-70mmほど。体色は甲が黒褐色・脚が朱色のものが多いが、青白いもの(地方によっては「シミズガニ」と呼ばれる)、紫がかったものなども見られ、よく見られる体色は地域個体群によって異なる。甲羅には毛や突起などはなく、滑らかである。オスは右の鋏脚が左よりも大きくなるが、左のほうが大きい個体もいる。 の上流域から中流域にかけて生息する。和名どおり水がきれいな渓流(沢)・小川に多いので、水質階級I(綺麗な水)の指標生物ともなっている。日中は石の下などに潜み、夜になると動きだすが、の日などは日中でも行動する。また、雨の日にはから離れて出歩き、川近くの森林や路上にいることもある。活動期は春から秋までで、冬は川の近くの岩陰などで冬眠する。

食性は雑食性で、藻類水生昆虫、陸生昆虫類カタツムリミミズなど何でも食べる。一方、天敵ヒキガエルアカショウビンカワセミサギ類、イノシシイタチイワナなどがいる。

から初夏にかけて交尾を行ったあと、メスは直径2mmほどのを数十個産卵し、腹肢に抱えて保護する。卵は他のカニに比べると非常に大粒で、産卵数が少ない。幼生は卵の中で変態し、孵化する際には既にカニの姿となっている。稚ガニもしばらくは母ガニの腹部で保護されて過ごす。同じく川に生息するモクズガニアカテガニなどは幼生に放さないと成長できないが、サワガニは一生を通じて海と無縁に生活する。寿命は数年-10年程とされる。

体色

茶色型
青色型

孵化時の体色は全て淡黄褐色で成長に伴い体色が変化していく。また、体色変異は照度、餌、底質の色などの生息環境に左右されると考えられているが十分に解明されていない。

1989年に鹿児島県で調査を行った鈴木廣志、津田英治らの報告によれば、14mmまでの個体はほぼ茶色型で、二次性徴が発現する時期の甲幅が14mm以上になると青色型もしくは赤色型の体色を呈するようになる[4]ことが明らかにされた。また、鹿児島県内には「赤色型」「茶色型」「青色型」の個体が生息しているが、「赤色型」「青色型」分布の境界は、約6300年前に発生した幸屋火砕流[5]に起因する堆積物の分布北限とほぼ一致するとしている[4]

別名

タンガネ(長崎県、「田蟹」の意味)、イデンコガニ(徳島県つるぎ町、「いでんこ」とは排水溝の意味)、ヒメガニ(和歌山県、赤い体色によるものと見られる)


  1. ^ 円子紳一, 持田誠「浦幌川におけるモクズガニの記録」『浦幌町立博物館紀要』第20号、浦幌町立博物館、2020年3月、33-34頁、NAID 120006826259 
  2. ^ 駒井智幸、丸山秀佳、小西光一「北海道産の十脚甲殻類の分布リスト」『甲殻類の研究』第21巻、日本甲殻類学会、1992年、189-205頁、doi:10.18353/rcustacea.21.0_189NAID 110002698388 
  3. ^ 北海道におけるサワガニGeothelphusa Stimpson, 1858の学術的報告
  4. ^ a b 鈴木 廣志、津田 英治:鹿児島県におけるサワガニの体色変異とその分布 『日本ベントス学会誌』 Vol.1991 (1991) No.41 P37-46, doi:10.5179/benthos1990.1991.41_37
  5. ^ 九州地方の第四紀テフラ研究 巨大火砕流堆積物の第四紀学的諸問題 第四紀研究 Vol.30 (1991) No.5 P.329-338, doi:10.4116/jaqua.30.329
  6. ^ 寄生虫ミニ辞典 - 海外勤務健康管理センター
  7. ^ 両側胸水貯留で発症したウェステルマン肺吸虫症の1例 日本胸部疾患学会雑誌 Vol.21 (1983) No.4 P.388-392, doi:10.11389/jjrs1963.21.388
  8. ^ 家族内発症したウエステルマン肺吸虫症の2例 日本胸部疾患学会雑誌 Vol.32 (1994) No.5 P.476-479, doi:10.11389/jjrs1963.32.476
  9. ^ マダガスカル産サワガニの 1 新属と 2 新種 Skelosophusa (Crustacea, Decapoda, Brachyura), a New Genus of Potamonautid Freshwater Crab from Madagascar, with Descriptions of Two New Species Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology 20(4) pp.161-172 1994122
  10. ^ フィリピン産サワガニ類 : I. サワガニ科 The Freshwater Crab Fauna (Crustacea, Brachyura) of the Philippines : I. The Family Potamidae ORTMANN, 189 Bulletin of the National Science Museum. Series A, Zoology 18(4) pp.149-166 19921222
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 環境省レッドリスト2019の公表について』(プレスリリース)環境省、2019年1月24日https://www.env.go.jp/press/106383.html 
  12. ^ “ミヤコサワガニを指定/政府、希少野生動物種に”. 宮古毎日新聞. (2016年12月15日). http://www.miyakomainichi.com/2016/12/95592/ 
  13. ^ Peter K. L. Ng, 諸喜田 茂充、「琉球列島産陸生サワガニの新属(Ryukyum)』 『Crustacean research』 1995年 24巻 p.1-7, doi:10.18353/crustacea.24.0_1, 日本甲殻類学会


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