計量法に違反しない範囲の使用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/08 17:14 UTC 版)
「尺貫法」の記事における「計量法に違反しない範囲の使用」の解説
日本では計量単位として使用されることはなくなったが、取引や証明に当たらない計量において尺貫法の単位が使われるケースや、国際単位系の単位を表記に利用しながらも、尺貫法の値を設計者の思考上の計算または内部的な計算に用いる例はみられる。これは計算に用いるような内部的使用は、外部との取引・証明に使われるわけでないので計量法には違反しないためである。日本の事例としては以下のものが挙げられるが、いずれも、計量単位として取引や証明に用いられることは皆無である。 以下の例において、尺や升の数値が計量上用いられているように思われる例であっても、それは計量単位としての使用ではなく、「型番」や「呼称」としての使用に過ぎない。型番や呼称は計量単位そのものではないので、計量法上も認められている。例として、テレビ受像機のサイズ呼称(46型テレビ、由来はインチ)がある。 建築関連では日本家屋が尺貫法で設計されていたため、設計図面上の寸法はメートル法を用いて表記されるが、広さを坪や畳で表すなど伝統的な目安として利用されている。建築や不動産関係者間では土地の面積や床面積として、36平方尺(畳2帖の面積に相当)を表す「坪」を念頭において業務を行っている。不動産取引自体(これが計量法上の取引・証明である(計量法#取引、証明とは)。)に「坪」を使うことはありえず、例えば住宅の建設費で、坪当たりの単価を示す場合には「坪あたり○万円」が使われることは絶えて無く、「3.3平方メートルあたり○万円」と表記されるに過ぎない。坪(約3.305785 m2)と3.3 m2とでは、約0.18 %の差があるので、「坪当たり」ではなく、あくまで、3.3000 m2当たりの表記である。ただし、取引当事者の思考上は「坪」の概念があることは確かである。 ベニヤ板や石膏ボードなどの板材の大きさを表すのに「1.5×3(いごさん)」「3×6(さぶろく)」「4×8(しはち、よんぱち)」などといった呼称が用いられることがある[要出典]。これらの由来は長さを尺(曲尺)で表したもので、前者は3尺×6尺(= 90.9 cm × 181.8 cm)、後者は4尺×8尺(= 121.2 cm × 242.4 cm)の大きさの板材を指すことが多いが、いわゆるコンパネと呼ばれるコンポジットパネルでは同一の呼称を用いても 91 cm × 182 cm や 90 cm × 180 cm の製品が存在する。また、建設工事や建築現場で使用される仮設の鉄板は、その縦横の寸法を表すのに「5×10(ごっとー)」などといった型番の呼称が用いられる。その鉄板の縦横の寸法が5尺×10尺だからである。 軽トラックの荷台は3尺×6尺に余裕(メーカーにより差がある)を持たせたサイズとなっているが、この寸法は主な客層の一つである畳や襖を扱う小規模工務店の使い勝手を考慮しているためである。また市販の荷台用品は逆に荷台に合わせたサイズで製造するため、荷台マットやパネルは一枚が3尺×6尺、収納用品も幅が1尺(収穫用の籠)か3尺(蓋付きコンテナ)に合わせている。このため、多数の籠と細かい道具を使う農家や漁師にとっても結果として利便性が高くなっている。 日本の映像業界(テレビ・映画・特撮等)では、セットを建てる際などに尺貫法を使用している。 食品関連では業界団体の規格が以前から使われていた合升斗できりの良い数値をそのまま国際単位系に換算したため、一見すると中途半端な数字となっていることもある。「一升瓶」は1800 mL ± 15 mL の液体を入れる瓶、「一斗缶」(日本工業規格Z1602-2003では「金属板製18リットル缶」と呼称)は19.25±0.45 リットルの液体を入れる缶の名称として用いられる。 祝宴の鏡抜きで使われる日本酒の樽は斗が基準であるため、酒造会社は「18リットル(一斗)」「36リットル(二斗)」「72リットル(四斗)」の樽として販売されている。 ワインの瓶(フルボトル)は世界標準が0.75 Lに対し、日本のワインは日本酒の4合瓶を基準にした0.72 Lのボトルを使用している。同じくジャパニーズ・ウイスキーでは0.72 Lのボトルを使用する例が多い。 包装食パンの重量の単位として「斤」が用いられる。舶来品の1ポンド(453.6 g)から由来して、450 gを1斤(英斤と呼ぶ)として売買していた名残である。時代とともに1斤の重さが少なくなっていき、現在は公正競争規約により1斤は340 g以上と定められており、「斤」を商品に表示する場合は保証内容重量の表示に1斤が340 g以上である旨を併記することが義務付けられている。 炊飯器の炊飯容量は合を基準に設計されており、計量法のため表記されたリットルが「0.63 L(3.5合)」という半端な数字になっている。また家庭用の小型精米機も目安として合が表記されている。 剣道では用具の規格等の呼称として随所に尺貫法時代の名残が見られる。例えば、竹刀の長さは慣用的に(曲尺の)寸単位で表され、「三八(さぶはち=約115 cm)」「三九(さぶく=約118 cm)」等と呼ばれる(ただし、現行の「剣道試合・審判細則」上における竹刀の長さの規定はcm単位である)。また手刺防具においても、布団の刺し目の間隔を曲尺基準で「1分5厘(=約4.5 mm)刺」「1分(=約3 mm)刺」などと表す。袴の号数の呼び方は鯨尺の寸単位で表した裾丈の長さが基になっており、「25号」の剣道袴であれば裾丈がおよそ94.7 cmとなる。
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