解の存在と一意性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/27 03:25 UTC 版)
広いクラスの初期値問題において、解の存在と一意性は計算機を用いることで示されることもある。 ピカール・リンデレフの定理は、t0 および y0 を含む領域において f が連続であり、変数 y について f がリプシッツ条件を満足する場合に、初期値問題の解が t0 を含むある区間で一意に存在することを保証する。定理の証明は、与えられた初期値問題を同値な積分方程式に変換することにより行われる。その場合、積分はある関数を別の関数へ写す作用素として見なされ、その不動点が求める解となる。バナッハの不動点定理が適用されることにより、初期値問題の解であるような不動点の存在および一意性が示される。 ピカール・リンデレフの定理の古い証明では、上述のような積分方程式に収束する関数列を構築することにより、その極限としての初期値問題の解を求めている。そのような証明手法はピカールの方法あるいは逐次近似法と呼ばれている。 数学者の岡村博は、初期値問題の解が一意となるための必要十分条件を得た。この条件は、システムに対するリアプノフ関数が存在することを必要とする。 いくつかの場合では、関数 f はC1級やリプシッツ連続ですらなく、解の局所的な一意存在性を保証するための一般的な結果が適用されないことがある。しかし、ペアノの存在定理は、関数 f が単なる連続関数であっても、解の時間に関する局所存在性が保証されることを示している。ただしここで問題となるのは、解の一意性の保証はされていない、ということである。この結果は参考文献 Coddington & Levinson (1955, Theorem 1.3)あるいは Robinson (2001, Theorem 2.6)などで見られる。より一般的な結果として、関数 f が不連続である場合の解の存在を扱ったカラテオドリの存在定理が挙げられる。
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解の存在と一意性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/09 03:42 UTC 版)
決定論的な常微分方程式や偏微分方程式と同様、与えられた確率微分方程式の解が存在するか、存在するとして一意か否かを知ることは、重要である。下記は、n次元ユークリッド空間Rnに値を取り、m次元ブラウン運動Bを無作為項とする伊藤確率微分方程式の解の存在および一意性に関する一般的定理である。参考文献に記したエクセンダールの本の §5.2には、証明が記載されている。 T > 0とする。 μ : R n × [ 0 , T ] → R n {\displaystyle \mu :\mathbb {R} ^{n}\times [0,T]\to \mathbb {R} ^{n}} σ : R n × [ 0 , T ] → R n × m {\displaystyle \sigma :\mathbb {R} ^{n}\times [0,T]\to \mathbb {R} ^{n\times m}} は可測関数で、適当な定数C、Dが存在し、任意のt ∈ [0, T]、任意のx, y ∈ Rnに対し、次の2条件を満たすとする。 | μ ( x , t ) | + | σ ( x , t ) | ≤ C ( 1 + | x | ) {\displaystyle {\big |}\mu (x,t){\big |}+{\big |}\sigma (x,t){\big |}\leq C{\big (}1+|x|{\big )}} | μ ( x , t ) − μ ( y , t ) | + | σ ( x , t ) − σ ( y , t ) | ≤ D | x − y | {\displaystyle {\big |}\mu (x,t)-\mu (y,t){\big |}+{\big |}\sigma (x,t)-\sigma (y,t){\big |}\leq D|x-y|} ここで、 | σ | 2 = ∑ i , j = 1 n | σ i j | 2 {\displaystyle |\sigma |^{2}=\sum _{i,j=1}^{n}|\sigma _{ij}|^{2}} である。確率変数Zは、{Bs}s≧0により生成されるσ加法族と独立であり、かつ、 E [ | Z | 2 ] < + ∞ {\displaystyle \mathbb {E} {\big [}|Z|^{2}{\big ]}<+\infty } を満たすとする。このとき、確率微分方程式、 d X t = μ ( X t , t ) d t + σ ( X t , t ) d B t , 0 ≤ t ≤ T {\displaystyle dX_{t}=\mu (X_{t},t)dt+\sigma (X_{t},t)dB_{t}\ ,0\leq t\leq T} X t = Z {\displaystyle X_{t}=Z\,} は、以下の2つの性質を有するtに関して連続な解 X : ( t , ω ) ↦ X t ( ω ) {\displaystyle X:(t,\omega )\mapsto X_{t}(\omega )} を、Pに関して殆ど確実に一意に有する。 X は、Z と Bs (s≦t) により生成される増大情報系に適合する。 E [ ∫ 0 T | X t | 2 d t ] < + ∞ {\displaystyle \mathbb {E} \left[\int _{0}^{T}|X_{t}|^{2}\,\mathrm {d} t\right]<+\infty }
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解の存在と一意性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 15:08 UTC 版)
「シルベスター方程式」の記事における「解の存在と一意性」の解説
クロネッカー積および vec作用素 vec {\displaystyle \operatorname {vec} } の記法を用いると、シルベスター方程式は次のように書き直せる。 ( I m ⊗ A + B T ⊗ I n ) vec X = vec C {\displaystyle (I_{m}\otimes A+B^{T}\otimes I_{n})\operatorname {vec} X=\operatorname {vec} C} ここで A {\displaystyle A} は n × n {\displaystyle n\!\times \!n} 行列、 B {\displaystyle B} は m × m {\displaystyle m\!\times \!m} 行列、 X {\displaystyle X} は n × m {\displaystyle n\!\times \!m} 行列、 I k {\displaystyle I_{k}} は k × k {\displaystyle k\times k} の単位行列である。この形に書くと、方程式は m n × m n {\displaystyle mn\times mn} 係数行列による線型方程式系と見ることができる。 命題 複素数成分の n × n {\displaystyle n\times n} 行列 A {\displaystyle A} と B {\displaystyle B} が与えられたとき、シルベスター方程式が任意の C {\displaystyle C} に対して一意的な解 X {\displaystyle X} を持つための必要十分条件は A {\displaystyle A} と − B {\displaystyle -B} が共通の固有値を持たないことである。 証明 X ↦ A X + X B {\displaystyle X\mapsto AX+XB} で定まる線型写像 S : M n → M n {\displaystyle S:M_{n}\rightarrow M_{n}} を考える。 (i) A {\displaystyle A} と − B {\displaystyle -B} が共通の固有値を持たないとする。このときそれらの固有多項式 f ( z ) {\displaystyle f(z)} と g ( z ) {\displaystyle g(z)} の最大公約数は定数 1 {\displaystyle 1} である。よって複素係数多項式 p ( z ) {\displaystyle p(z)} と q ( z ) {\displaystyle q(z)} を、 p ( z ) f ( z ) + q ( z ) g ( z ) = 1 {\displaystyle p(z)f(z)+q(z)g(z)=1} が成り立つようにとることができる(ベズーの補題)。ケイリー・ハミルトンの定理より、行列多項式として f ( A ) = 0 = g ( − B ) {\displaystyle f(A)=0=g(-B)} であるので、 g ( A ) q ( A ) = I {\displaystyle g(A)q(A)=I} 。 X {\displaystyle X} を S ( X ) = 0 {\displaystyle S(X)=0} の任意の解とする。このとき A X = − X B {\displaystyle AX=-XB} であり、この等式を X = q ( A ) g ( A ) X {\displaystyle X=q(A)g(A)X} の右辺に繰り返し適用して X = q ( A ) g ( A ) X = q ( A ) X g ( − B ) = 0 {\displaystyle X=q(A)g(A)X=q(A)Xg(-B)=0} 。よって写像 S {\displaystyle S} の核の次元は0であり、階数・退化次数の定理より S {\displaystyle S} は可逆となるから、任意の C {\displaystyle C} に対し一意的な解 X {\displaystyle X} が存在する。 (ii) 逆に、 s {\displaystyle s} が行列 A {\displaystyle A} と − B {\displaystyle -B} の共通の固有値であるとする。 s {\displaystyle s} は転置行列 A T {\displaystyle A^{T}} の固有値でもあることに注意すると、零ベクトルでないベクトル v {\displaystyle v} , w {\displaystyle w} で A T w = s w {\displaystyle A^{T}w=sw} , B v = − s v {\displaystyle Bv=-sv} を満たすものが存在する。行列 C {\displaystyle C} を C v = w ¯ {\displaystyle Cv={\overline {w}}} となるよう選ぶ。右辺は w {\displaystyle w} の複素共役である。 このとき A X + X B = C {\displaystyle AX+XB=C} には解 X {\displaystyle X} が存在しない。なぜなら、複素数体上の双線型形式(半双線型形式ではない)を ⟨ c 1 , c 2 ⟩ := ∑ i = 1 n c 1 , i c 2 , i {\displaystyle \langle c_{1},c_{2}\rangle :=\sum _{i=1}^{n}c_{1,i}c_{2,i}} と定めて ⟨ ( A X + X B ) v , w ⟩ = ⟨ C v , w ⟩ = ⟨ w ¯ , w ⟩ > 0 {\displaystyle \langle (AX+XB)v,w\rangle =\langle Cv,w\rangle =\langle {\overline {w}},w\rangle >0} を考えると、この最左辺は ⟨ X v , A T w ⟩ + ⟨ X B v , w ⟩ = ⟨ X v , s w ⟩ + ⟨ − s v , w ⟩ = 0 {\displaystyle \langle Xv,A^{T}w\rangle +\langle XBv,w\rangle =\langle Xv,sw\rangle +\langle -sv,w\rangle =0} となって矛盾するからである。
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