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三省堂 大辞林

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ブラウン-うんどう 5 【―運動】

気体または液体中に浮遊する微粒子が行う不規則運動。まわりの熱運動をする気体または液体分子が、微粒子に不規則衝突する結果起こる。1827年ブラウン(3)が、水中浮遊する花粉粒顕微鏡観察している際に発見。のちに物理学者により研究され、アインシュタイン・ランジュバンにより理論化された。


OR事典

日本オペレーションズ・リサーチ学会日本オペレーションズ・リサーチ学会

ブラウン運動

読み方ぶらうんうんどう
【英】:Brownian motion

概要

次の性質満たす実数連続確率過程 \{B(t)\}_{t\ge0}.
(1) 重ならない区間における \{B(t)\}_{t\ge 0}増分互いに独立.
(2) B(s+t)-B(s)\,平均0, 分散\sigma^2 t\,正規分布にしたがう.
(3) B(0)=0\, かつ B(t)\,t=0\,連続.
拡散係数 \sigma^2=1\, のときを標準ブラウン運動, B_d(t) = \mu\,t + B(t)ドリフトをもつブラウン運動と呼び, \mu\,ドリフト係数と呼ぶ.

詳説

ランダム・ウォーク (random walk) とその連続化であるブラウン運動は, でたらめな動き表現する最も基本的確率過程で, 幅広い応用がある.


ランダム・ウォーク \{X_n\}_{n=1}^\infty\,互いに独立同一分布に従う確率変数の列とするとき,


S_0=s~(定数), \ \qquad S_n = s + \sum_{i=1}^n X_i (1)\,


によって定義される確率過程\{S_n\}_{n=0}^\infty\,ランダム・ウォークと呼ぶ. 特に, ある d>0\, およびすべての n\, に対して, \mathrm{P}(X_n=d)=p, \mathrm{P}(X_n=-d)=q=1-p\, であるとき, \{S_n\}_{n=0}^\infty\, は (1次元の) 単純ランダム・ウォークであるといい, さらに p=q=1/2\, のとき, 単純ランダム・ウォーク対称であるという. また, 「壁」によって動き止められたり, 動く範囲制限されるランダム・ウォーク考えることもできる. X_n\,独立性より, ランダム・ウォークマルコフ過程となる.

初期値s=0\,ランダム・ウォークにおいて, n\,ステップ後の位置期待値分散は, それぞれ \mathrm{E}(S_n)=n\,\mathrm{E}(X_1)\,, \mathrm{V}(S_n)=n\,\mathrm{V}(X_1)\, となり, 時間経過比例する. 分散時間経過比例することから, ランダム・ウォーク時間が経つにつれて次第拡散していくことが分かる.

d=1\,, 0<p<1\, として得られる単純ランダム・ウォーク \{S_n\}_{n=0}^\infty\, は, 整数状態空間とする周期2の既約マルコフ連鎖である. このマルコフ連鎖p\ne1/2\, のとき一時的であり, p=q=1/2\, ならば再帰的となる. たとえば p>1/2\, ならば S_n\, はだんだん大きくなっていく傾向があり, 正の方へドリフトする. このため出発点に戻ることは保証できなくなり一時的となるのである.

2次元対称な単純ランダム・ウォーク(2次元格子点空間上の4つの隣接点にそれぞれ確率1/4\,推移する) は再帰的, 3次元上の単純ランダム・ウォークはすべて一時的であることも知られている [1].


単純ランダム・ウォークからブラウン運動へ \{S_n\}_{n=0}^\infty\,初期値s=0\,対称な単純ランダム・ウォークとする. このランダム・ウォークが1ステップ進むのに T\, だけ時間がかかるとして, T\,d\,同時に0に近づけることを考える. t=n\,T\, に対して, 時刻t\,ランダム・ウォークx\, にいる確率v(x,t)\, と表すと, v(x,t)\,差分方程式 v(x,t+T) = \{ v(x-d,t) + v(x+d,t) \}/2\,満たすので,


\frac{v(x,t+T) - v(x,t)}{T} = \frac{1}{2}\ \frac{d^2}{T}\ \frac{v(x+d,t) - 2\,v(x,t) + v(x-d,t)}{d^2}


が得られる. d^2/T=\sigma^2\,(定数) を保ったまま T\to0 (d\to0)\, とすれば


\frac{\partial v(x,t)}{\partial t} = \frac{\sigma^2}{2}\ \frac{\partial^2 v(x,t)}{\partial x^2} (2)\,


を得る. 式 (2) は拡散方程式 (diffusion equation) と呼ばれ, その解は初期条件v(0,0)=1\,, v(x,0)=0 (x\ne0)\, のもとで, 正規分布 N(0,\sigma^2\,t)\,密度関数となる. より一般的には, 初期値が0の (必ずしも対称でない) 単純ランダム・ウォークにおいて, d^2/T=\sigma^2\,, (p-q)/d=\mu/\sigma^2\, を保ったまま T\to0\, とすると, 時刻t\, での位置正規分布N(\mu\,t,\sigma^2\,t)\, に従う確率過程が得られる [1].


ブラウン運動 イギリス植物学者ブラウン (R. Brown) は, 水面に浮く花粉中の微粒子極めて規則動きをすることを見いだした. アインシュタイン (A. Einstein) は, この運動拡散方程式 (2) によって特徴けられることを示し, その後ウィナー (N. Wiener) らによって確率過程としての基盤が築かれた. この確率過程ブラウン運動 (Brownian motion) またはウィーナー過程 (Wiener process) と呼ぶ.

(1次元の) ブラウン運動\{B(t)\}_{t\ge0}\,次の性質満たす実数確率過程である:

1. 独立増分過程である.
2. 任意の s\,, t>0\, に対して B(s+t)-B(s)\,正規分布N(0,\sigma^2\,t)\, に従う.
3. B(0)=0\, かつ B(t)\,t=0\,連続.

1. より, 時刻 s\, 以降\{B(t)\}_{t\ge s}\,振る舞いs\, までの履歴には依存しないため, ブラウン運動はマルコフ過程である. さらに, ブラウン運動が強マルコフ性を持つこと, 標本路が連続となることも知られている [2].

\sigma^2\,拡散係数呼び, 特に \sigma^2=1\, のブラウン運動を標準ブラウン運動と呼ぶ. また, B_d(t) = \mu\,t + B(t)\, によって定まる \{B_d(t)\}_{t\ge0}\,ドリフトを持つブラウン運動と呼び, \mu\,ドリフト係数と呼ぶ.


鏡像原理 ドリフトのないブラウン運動 \{B(t)\}_{t\ge0}\, に対して \tau_a\,\{B(t)\}_{t\ge0}\,初めa\, を横切る時刻とすると, \tau_a\,停止時 (stopping time) となる. t\ge\tau_a\, において \{B(t)\}_{t\ge\tau_a}\,a\, に関して対称標本路を持つ確率過程\{\bar{B}(t)\}_{t\ge0}\,


\bar{B}(t) = \left\{\begin{array}{ll} B(t), &\quad t<\tau_a, \\ 2\,a - B(t), &\quad t\ge\tau_a, \end{array}\right.


定める. \{B(t)\}_{t\ge0}\,強マルコフ性を持つことと, \{B(t)\}\,\{\bar{B}(t)\}\,対称性から, \{B(t)\}\,\{\bar{B}(t)\}\, は同じ確率法則に従うことがわかる. 一般にこのような性質鏡像原理 (reflection principle) と呼び, 初到達時間分布などを求める際に利用される.


拡散過程 ドリフト係数拡散係数位置x\,時刻t\,依存した値\mu(x,t)\,, \sigma^2(x,t)\, をとるように一般化して得られる確率過程\{D(t)\}_{t\ge0}\,拡散過程 (diffusion process) と呼び, \mu(x,t)\,\sigma^2(x,t)\, を, それぞれドリフト関数, 拡散関数と呼ぶ. 拡散過程強マルコフ性持ち, その標本路は連続である. 逆に, 連続標本路を持つマルコフ過程拡散過程となることが知られている.

ブラウン運動や拡散過程標本路は, 連続であるがいたるところ微分不可能という性質を持っている. このため拡散過程解析においては, 確率積分確率微分方程式といった通常微分積分とは異な概念が必要となる [3, 4].



参考文献

[1] W. Feller, An Introduction to Probability Theory and Its Applications, Volume 1, 2nd Ed., John Wiley & Sons, 1957. 河田龍夫監訳, 『確率論とその応用 I』, 紀伊国屋書店, 1960 (上巻), 1961 (下巻).

[2] K. Itô and H. P. McKean, Diffusion Processes and Their Sample Paths, Second Printing, Springer-Verlag, 1996.

[3] 木島正明, 『ファイナンス工学入門 第I部 ランダムウォークとブラウン運動』, 日科技連, 1994.

[4] 渡辺信三, 『確率微分方程式』, 産業図書, 1975.



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ブラウン運動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2011/08/27 04:53 UTC 版)

2次元でのブラウン運動の1000ステップ分のシミュレーションの例。運動の起点は (0, 0) である。各ステップの x成分とy成分は独立で、分散は2で平均は0の正規分布に従う。数学的なモデルでは、ステップは不連続ではないと仮定している。

ブラウン運動(ブラウンうんどう、英語:Brownian motion)とは、液体のような溶媒中(媒質としては気体固体もあり得る)に浮遊する微粒子(例:コロイド)が、不規則(ランダム)に運動する現象である。1827年(1828年という記述もあり)、ロバート・ブラウンが、水の浸透圧で破裂した花粉から水中に流出し浮遊した微粒子を、顕微鏡下で観察中に発見した。[1]

長い間原因が不明のままであったが、1905年アインシュタインにより、熱運動する媒質の分子の不規則な衝突によって引き起こされる現象であるとして説明する理論が発表された。(この成果より、当時認められていなかった原子および分子の存在が初めて具体的に確認された。)[2]

ブラウン運動はかなり広い意味で使用されることもあり、類似した現象として、電気回路における熱雑音[3][4](ランジュバン方程式)や、希薄な気体中に置かれた、微小な鏡の不規則な振動(気体分子による)などもブラウン運動の範疇として説明される。




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