マルチチューブラーフレーム
パイプ材を溶接接合して組み立てる溝造で、合理的設計であれば軽量かつ高剛性のフレームが得られる。すべて溶接でつないでいくので溶接ひずみも出やすく、高度な溶接技術が要求される。全溶接構造であるため脆弱な箇所が生じるのは避け難いが、手づくりの自由度があり、少量のスポーツカー、レーシングカー、コンセプトカーに使われている。
マルチチューブラーフレーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 01:43 UTC 版)
「フレーム形式 (自動車)」の記事における「マルチチューブラーフレーム」の解説
多数の小径鋼管を応力の発生に沿った配置に組み合わせて溶接する方法で、CADのワイヤーフレーム(線図、透視図)を実体化したような見た目となる。古くは丸鋼管を用いていたが、規格品の種類が増えた現在では、角鋼管が使われることが多い。 スペースフレーム(空間骨格 = 3次元の骨組み。建築におけるスペースフレーム(英語版))、スケルトン(骨格)、英語で鳥かごを意味する「バードケージ (bird cage)」(バードゲージの表記は誤り)などの別称もあり、単にチューブラーフレームとも呼ばれるほか、ジャングルジムとたとえられることもある。 大規模な生産設備が不要で、モノコックに勝る強度と剛性が簡単に得られ、軽量でスペースを取らない点や、改造や修復も容易なことなど、利点は非常に多い。その特徴から、レーシングカーや少量生産のスポーツカーに採用例が多く、個人レベルでの制作も可能である。短所としては、構造上高剛性を確保しようとすると開口部が狭くなり横開き式ドアの設置が困難になることや、ロボット組み立てなどの大量生産に向かないことがある。 フェラーリはエキゾチックカーの中では生産台数が多い部類に入るため、コストと生産性のバランスから、キャビン部分のみがモノコック構造で、前後をマルチチューブラーフレームとした構成を長年にわたり踏襲している。 車体外皮は応力を負担しない場合が多く、アルミ合金や鉄の薄板、FRPで済ませるものが多い。バスでは、大きな薄板が振動することで発生する騒音(ドラミング)を防ぐ設計が必要となる。ロータス・7とケイターハム・スーパーセブンは軽量化とコストダウンのため管径を抑えており、一部の外板を応力部材として利用している。 マセラティ・ティーポ61マルチチューブラーフレーム マセラティ・ティーポ61の外観。 ランチア・デルタS4マルチチューブラーフレームの例。ボディーは単なる覆いに過ぎず、主要な機能部品は全て細い鋼管組みのフレームに取り付けられている。 シュコダ 706 RTO MEXマルチチューブラーフレームの車体構造。 バスでは、欧州において古くからこの工法が用いられており、モノコックのように車体形状や開口部が強度や剛性に影響を与えることがないため、エンジンやドアの位置、窓の形と大きさなどの自由度が大きく、2階建バスや連節バスをはじめ多彩なバリエーションを生んできた。同じ理由で、米国製をはじめとする自走式キャンピングカー(RVやモーターホームと呼ばれるもの)もほとんどがこの工法で製作されている。 日本のバス車両では、1977年(昭和52年)に日野自動車と日野車体工業が大型観光・高速バス「スケルトン RS」を初めて製品化。その車種名から「スケルトンボディ」の名が広まった。日野自動車はさらに、1980年(昭和55年)には路線バスとして初めてスケルトンボディを採用した中型車「レインボーRJ」を発売、日本のバスのスケルトン化に先鞭をつけた。三菱自動車工業(現:三菱ふそうトラック・バス)もこれに続き、1982年(昭和57年)にがスケルトンボディを採用した初代エアロバスを発売。その後は他社もスケルトンボディのバスを製造するようになり、日本のバスでもスケルトンボディが主流となった。 メルセデス・ベンツ・O 321 HL1954 - 1964バスボディーの場合、大きな窓と細いピラー、リベットのない外板など、モノコック構造とは対照的な外観となる。 日野・スケルトン RS120P日本のバスで最初にスケルトンボディを採用した。カタログカラーに近い自家用バス。
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