観光・高速バス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 17:31 UTC 版)
「機関直結式冷房装置」の記事における「観光・高速バス」の解説
観光バス・高速バス車両では、登場時から長らく高出力かつ高耐久のエンジンが搭載できず、また客室の快適性と走行性能・空調性能を重視する使用形態から、床下に設置した小型エンジンで圧縮機を動かすサブエンジン式が長らく主流であった。 サブエンジン式の詳細については「独立機関式冷房装置」を参照 直結式冷房車はエアコン使用時において走行用のエンジンでコンプレッサーも駆動させるため、峠越えにおける出力低下が避けられないことから、高いエンジン出力が求められる高速バスには向かなかった。一例として、かつて中央高速バスで使用された「ワンロマ」と呼ばれる一般路線・高速バス兼用車は直結式冷房車であったため、中央自動車道の上り勾配が続く区間(特に八王子〜大月間)では出力低下による立ち往生を避けるため、やむなくクーラーを止めて走行したことがよくあった。 また国鉄バスでも、当初は高速バス車両(国鉄専用型式)の試作車には直結式クーラーを搭載したが、実際に使用してみると走行性能の低下はもとより、市街地では交通渋滞に影響されてエンジン回転が上がらず、加えてバッテリー上がりが頻発したこともあった。そのため日本国内においては、1980年代までの観光・高速バスではサブエンジン式エアコンが標準的となった。 その一方で、ホイールベース部分にある床下トランクの容積を増やす手段として機関直結式冷房装置を採用することがあった。主に空港リムジンバスや、貸切バスの短尺車(7 m・9 m車)で見られ、過去には日産ディーゼル・スペースウィングの3軸車でも採用されたことがあった。 床下トランクの容積は一例として、日野・セレガRのハイデッカー車 (KL-RU4FSEA) の場合は、直結式では8.4 m3に対し、サブエンジン式では5.7 m3とかなり差がある。セレガRのスーパーハイデッカー車 (GD/GJ、KL-RU1FSEA) では、床が高くなる分だけサブエンジン式でも7.6 m3を確保できる。 また、降雪地では道路に散布される融雪剤(主に塩化カルシウム)の飛沫が床下のエアコンユニットに付着して故障することがあるため、対策として直結式を採用する事例が、広島電鉄と一畑バスの高速バス路線(陰陽連絡路線)で見られた。 その後1990年代以降は、高速・観光バス車両のエンジン出力が廉価グレードでも300 PS以上に向上し、圧縮機の容量アップや可変容量化などの改良がなされたこともあり、以前のような制約は解消されている。 また日本国外の観光・高速バス車両は直結式エアコンが主流となっており、2016年から輸入が開始されたバンホール・アストロメガは直結式を採用し、三菱ふそう・エアロキングより荷室が広くなっている。またヒュンダイ・ユニバースも直結式のみの設定である。 そのため、2005年に発売された2代目日野・セレガ/いすゞ・ガーラでは、直結式エアコンを標準で採用した。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}2代目セレガ(E13Cエンジン搭載車)の場合、先代のセレガR(サブエンジン式エアコン車)に比べて燃料消費量は40 %減、整備費用は90 %減と言われている。[誰によって?] また、2012年までサブエンジン式エアコンの設定を残していた三菱ふそう・エアロエース/エアロクイーンも、ポスト新長期規制対応車では独立機関式エアコンの設定をやめ、直結式エアコンに一本化した。
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