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提携形ゲーム

読み方:ていけいけいげーむ
【英】:game in coalitional form

概要

協力ゲーム表現形式1つ. プレイヤー集合 N \,特性関数 v \, (提携形成により獲得可能な利得の和を表す関数)の組 (N,v) \,で表わされる.特性関数形ゲームとも呼ばれる. また, 特性関数の値が利得ベクトル集合表される場合もある(譲渡可能効用もたないゲーム).協力により得られ成果合理的な基準を基に各プレイヤー分配した結果を提携形ゲームの解と呼び, コア, 安定集合, 交渉集合, カーネル, 仁, シャープレイ値などがある.

詳説

 提携形ゲーム (game in coalitional form) は協力ゲーム表現形式一つであり, プレイヤー集合N\, と, プレイヤー提携 (coalition) を形成し共同行動をとる際に実現可能な結果を表す特性関数 (characteristic function) v\, の組(N, v)\, で表わされる. このために提携形ゲームは特性関数形ゲーム (game in characteristic function form) とよばれることもある. 特性関数の値は, 提携がそのメンバーだけで実現可能な利得総和 (実数値) で表される場合 (譲渡可能効用を持つゲーム, game with transferable utility, TU-game) と, 提携の各メンバー実現可能な利得ベクトル集合表される場合 (譲渡可能効用持たないゲーム, game without transferable utility, NTU-game) がある. 譲渡可能効用を持つゲームでは, 共同行動利害調整するために貨幣などの媒介物による利得別払い (sidepayment) が必要となる. 譲渡可能効用持たないゲームの詳細については [13] を参照.

 提携形ゲーム(N, v)\, における基本的な問題は, プレイヤー間の協力結果, (1) いかなる提携形成され, (2) 提携メンバーの間で利得どのように分配されるか, である. 協力に関する交渉結果, 各プレイヤーi\, 最終的に分配される利得x_i\, から成るベクトルx=(x_1, x_2, \ldots, x_n)\, 利得ベクトルとよび, さまざまな合理性の基準により, 結果として到達されると考えられる利得ベクトル集合を提携形ゲームの解とよぶ.

 優加法性 (superadditivity) をみたすゲームにおいてはプレイヤー全体による提携Nが形成される考えられるのでv(N)\, の値をどのようにプレイヤー間で分配すべきかが問題となる. このとき, ゲームの解の基本的な条件としては全体合理性 (total group rationality) と個人合理性 (individual rationality) の2つあげられる. 前者は, 利得ベクトルが, プレイヤー協力して実現できる実現可能集合においてパレート最適 (Pareto optimum) であることを要請し, 後者ゲーム参加して協力することの結果が, 単独行動するよりも悪くならないことを要請している. 全体合理性をみたす利得ベクトル準配分 (preimputation) とよび, 全体合理性個人合理性両方をみたす利得ベクトル配分 (imputation)とよぶ.

 提携形ゲームの解で, 経済分析費用分担問題など応用多く, よく知られているのはコア (core) である. コアは常に存在するとは限らないが, 存在のための必要十分条件がボンダレーヴァ (O. N. Bondareva) やシャープレイ (L. S. Shapley) によって研究されている. 特に, 市場経済ゲームとして定式化した市場ゲームについては多く研究があり, 競争均衡コア含まれることが知られている. また, 非分割財市場ゲームなどの種々の割当て市場ゲーム投票ゲーム, 費用分担ゲームなどにおいても, コア分配案の安定性を示す重要な概念となっている.

 コア同様に 支配 (domination) 関係によって定義された解として知られているのはフォンノイマン (J. von Neumann) とモルゲンシュテルン (O. Morgenstern) によって提唱され安定集合 (stable set) である [14]. 安定集合フォンノイマン・モルゲンシュテルン解 (von Neumann-Morgenstern solution) とよばれることもある. 安定集合存在しない場合もあるし, 複数存在する場合もあるが, 存在すればコアを含む. また, コア自身安定集合であれば, コア以外に安定集合存在しない.

 一方, 提携構造考慮入れた特性関数を基に始まった一連の研究があり, それらのゲームの解としては交渉集合 (bargaining set) , カーネル (kernel), 仁 (nucleolus) がある. 交渉集合オーマン (R. J. Aumann) とマシュラー (M. Maschler) によって異議と逆異議用いて定義された解であり, 常に存在し, コア, カーネル, 仁を含んでいる [2]. カーネルと仁は提携のもつ利得ベクトルへの不満 (超過要求) に基づいて定義された解である. カーネルデービス (M. Davis) とマシュラーにより導入され [4], 仁はシュマイドラー (D. Schmidler) により導入された [10]. カーネルと仁はともに常に存在し, 仁はカーネル最小コア (least core) の共通部分含まれている. 仁は常にただ1つ配分から成り, その計算法についてもいろいろな研究なされている. 破産問題においては, ユダヤ教教典かつ律法書であるタルムード (Talmud) に1500年前記述され分配方法カーネル与え分配一致するという興味深い結果知られている [3]. カーネルと仁は配分集合を基に, 定義されているが, 準配分集合において同等定式化を行うと, 準カーネル, 準仁などの概念導かれる. これらの解の性質については [1]の18章にまとめられている.

 提携形ゲームにおいて, プレイヤーがそのゲーム参加する場合ゲーム事前評価の値をゲームの値という. ゲームの値概念の中で最もよく知られたものはシャープレイ値 (Shapley value) である [11] . シャープレイ値全体合理性, 対称性, 加法性, ナルプレイヤーのゼロ評価の4公理をみたす唯一の値 (ゲーム関数) として与えられる. シャープレイ値応用1つ投票ゲームへの適用である. シャープレイ・シュービック指数呼ばれ, 各投票者影響力を示すパワー指数1つとして広く用いられている.

 提携形ゲームにはこのように多数解概念提唱されているが, それらの解概念共通点差異調べるためにいろいろなゲームクラスにおいて, 解の間の幾何学的関係研究されている. 凸ゲーム (convex game) のクラスにおいては, 交渉集合コアおよび安定集合一致し, シャープレイ値コア重心になる. また, カーネルは仁と一致することが知られている. 凸ゲームを含む広いゲームクラス他のゲームクラスにおける解の関係については [5] を参照されたい.

 近年, 公理化のアプローチ多くの提携形ゲームの解概念用い, 統一的な公理(整合性公理)で解の性質解明しようとする研究進んでいる. ある状況 (ゲーム) で解の与え利得分配と, プレイヤー数名が解の与え利得持ってそのゲームから退出し, 残され状況 (縮小ゲーム) での解の与え利得分配比較する. 整合性公理は, この両方状況での解の与え利得分配一致することを要請している. このとき, 残されプレイヤーへの退出プレイヤー協力形態により縮小ゲーム構造異なり, この縮小ゲーム差異を基に, コア, 準仁, 準カーネル, シャープレイ値などの整合性公理による公理化が研究されている. この分に関して例えば [6] を参照.

 なお, 提携形ゲーム全般の詳しい解説は [7], [8], [9], [12], [13] などを参照されたい. また, [1] のいくつかの章には, 提携形ゲームに関するトピックテーマごとに詳細にとめられており参考になる.



参考文献

[1] R. J. Aumann and S. Hart, eds., Handbook of Game Theory Volume I, Volume II, North-Holland, 1992, 1994.

[2] R. J. Aumann and M. Maschler, "The Bargaining Set for Cooperative Games," in Advances in Game Theory, M. Dresher, L. S. Shapley and A. W. Tucker, eds., Princeton University Press, 1964.

[3] R. J. Aumann and M. Maschler, "Game Theoretic Analysis of a Bankruptcy Problem," Journal of Economic Theory, 36 (1985), 195-213.

[4] M. Davis and M. Maschler, "The Kernel of a Cooperative Game," Naval Research Logistics Quarterly, 12 (1965), 223-259.

[5] T. S. H. Driessen, Cooperative Games, Solutions and Applications, Kluwer Academic Publishers, 1988.

[6] T. S. H. Driessen, "A Survey of Consistency Properties in Cooperative Game Theory," SIAM Review, 33 (1991), 43-59.

[7] 船木由喜彦, エコノミックゲームセオリー, サイエンス社, 2001.

[8] 武藤滋夫, ゲーム理論入門, 日本経済新聞社, 2001.

[9] 岡田章, 『ゲーム理論』, 有斐閣, 1996.

[10] D. Schmeidler, "The Nucleolus of a Characteristic Function Game," SIAM Journal of Applied Mathematics, 17 (1969), 1163-1170.

[11] L. S. Shapley, "A Value for n-Person Games," in Contributions to the Theory of Games II, H. Kuhn and A. W. Tucker, eds., Princeton University Press, 1953.

[12] 鈴木光男, 『新ゲーム理論』, 勁草書房, 1994.

[13] 鈴木光男, 武藤滋夫, 『協力ゲーム理論』, 東京大学出版会, 1985.

[14] J. von Neumann and O. Morgenstern, Theory of Games and Economic Behavior, 3rd ed., Princeton University Press, 1953.

「OR事典」の他の用語
ゲーム理論:  投票ゲーム  探索ゲーム  提携  提携形ゲーム  支配  支配戦略  最小コア



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