くろいわ るいこう

デジタル大辞泉

くろいわ‐るいこう〔くろいはルイカウ〕【黒岩涙香】

読み方：くろいわるいこう

［1862〜1920］ジャーナリスト・翻訳家。高知の生まれ。名は周六。「万朝報(よろずちょうほう)」を創刊、主筆。「法廷の美人」「鉄仮面」「巌窟王(がんくつおう)」「噫(ああ)無情」などの翻訳・翻案に当たった。

国立国会図書館蔵

近代日本人の肖像

黒岩涙香 くろいわ るいこう

• 写真1：定本俚謡正調
• 白黒 ; 11.1×7.4cm

文久2年9月29日～大正9年10月6日（1862～1920）

高知生まれ。新聞記者、翻訳家、小説家。父は土佐郷士。慶応義塾中退。絵入自由新聞、都新聞などの主筆を歴任し、明治25年(1892)万朝報を創刊。社会派的な暴露記事や娯楽記事、自らの連載小説で部数を伸ばし、大衆新聞の先駆となった。日露戦争では主戦論に転じ、内村鑑三、幸徳秋水らの退社を招いた。大正期にも憲政擁護運動への参加、シーメンス事件攻撃など政治に強い関心を持った。翻案小説『鉄仮面』『巌窟王』『噫無情』などが名高い。

キーワード	ジャーナリスト, 文学者
号・別称等	古概(こがい) , 周六(しゅうろく)

著作等（近代デジタルライブラリー収載）

1. 人耶鬼耶 / 黒岩涙香訳 小説館, 明21.12 <YDM101324>
2. 海底之重罪 / 黒岩涙香訳 金松堂, 明22.9 <YDM100901>
3. 他人の銭 / 黒岩涙香訳述 三合館, 明22.5 <YDM101179>
4. 大盗賊 / 黒岩涙香訳述 金桜堂, 明22.4 <YDM101165>
5. 法庭の美人 / フレデリキ・ジョン・フルガス〔著〕 ; 黒岩涙香訳述 小説館〔ほか〕, 明22.5 <YDM101363>
6. 魔術の賊 / 黒岩涙香訳 小説館, 明22.7 <YDM101374>
7. 真ッ暗 / アンナ・カセリン・グリーン著 ; 黒岩涙香訳 金桜堂, 明22.12 <YDM101377>
8. 有罪無罪 / 黒岩涙香訳 魁真楼, 明22.11 <YDM101405>
9. 指環 / 黒岩涙香訳 金桜堂〔ほか〕, 明22.11 <YDM101414>
10. 悪党紳士 / 黒岩涙香訳述 明進堂, 明23.3 <YDM100776>
11. 活地獄 / 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明23.12 <YDM100806>
12. 此曲者 / 黒岩涙香訳 井上勝五郎, 明23.4 <YDM93760>
13. 執念 / 黒岩涙香訳 岩本吾一, 明23.9 <YDM101051>
14. 梅花郎 / 黒岩涙香訳述 日進堂, 明23.1 <YDM101282>
15. 美人の獄 / 黒岩涙香, 丸亭素人著 金桜堂〔ほか〕, 明23.8 <YDM95091>
16. 無惨 / 黒岩涙香著 鈴木金輔, 明23.2 <YDM95472>
17. 幽霊 / 黒岩涙香訳 井上勝五郎, 明23.1 <YDM101407>
18. 涙香集 / 黒岩涙香著 扶桑堂, 明23.9 <YDM95733>
19. 妾の罪 / 黒岩涙香訳 三友舎, 明23.9 <YDM101455>
20. 巨魁来 / ボアスゴベ著 ; 黒岩涙香訳 町田宗七, 明24.8 <YDM100948>
21. 決闘の果 / 黒岩涙香訳述 三友社, 明24.5 <YDM100980>
22. 玉手箱 / 黒岩涙香訳 鈴木金輔, 明24.5 <YDM101181>
23. 何者 / ボアスゴベ著 ; 黒岩涙香訳 都新聞社, 明24.11 <YDM101261>
24. 如夜叉 / 黒岩涙香訳 町田宗七, 明24.11 <YDM101274>
25. 何者 / ボアスゴベ著 ; 涙香小史訳 . 訂正 都新聞社, 明25.10 <YDM101262>
26. 非小説 / 涙香小史訳 扶桑堂, 明25.8 <YDM101320>
27. 大金塊 / 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明26.2 <YDM101155>
28. 鉄仮面. [1], [2], [3] / ボアスゴベ著 ; 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明26 <YDM101227>
29. 捨小舟. [1], [2], [3] / 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明28 <YDM101102>
30. 女庭訓 / 黒岩涙香訳述 扶桑堂, 明29.11 <YDM100887>
31. 六人の死骸 / 香骨著 ; 嘯月補 駸々堂, 明29.12 (探偵小説 ; 第15集) <YDM95758>
32. 人外境　上編 / 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明30.2 <YDM101275>
33. 武士道. [1], [2] / 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明30, 31 <YDM11897>
34. 露国人 / 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明32.1 <YDM101436>
35. 天人論 / 黒岩涙香著 朝報社, 明36.5 <YDM201920>
36. 雪姫 / 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明36.6 <YDM101411>
37. 暗黒星 / シモン・ニウカム著 ; 黒岩涙香訳 朝報社, 明37.9 <YDM100801>
38. 精力主義 / 黒岩涙香（周六）著 ; 平山勝熊編 隆文館, 明37.5 <YDM102262>
39. 噫無情. [1], [2] / ユゴー著 ; 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明39 <YDM100770>
40. 巌窟王. [1], [2], [3], [4] / ヂュマ著 ; 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明38, 39 <YDM100933>
41. 人生問題 / 黒岩涙香（周六）述 . 2版 鶏声堂, 明39.5 <YDM10612>
42. 人の妻 / 黒岩涙香著 扶桑堂, 明39.11 <YDM95116>
43. 何者 / ボアスゴベ著 ; 涙香小史訳 春江堂, 明40.10 <YDM101263>
44. 山と水　後篇 / フランク・バレット著 ; 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明40.4 <YDM101400>
45. 郷土柳子の話 / 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明41.6 <YDM100990>
46. 花あやめ / 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明41.1 <YDM101296>
47. 野の花. [1], [2] / 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明42 <YDM101279>
48. 人尊主義 / 黒岩涙香（周六）著 新橋堂〔ほか〕, 明43.4 <YDM96126>
49. 破天荒 / 黒岩涙香訳 扶桑堂, 明43.2 <YDM101295>
50. 青年思想論 / 黒岩涙香著 朝報社, 明45.6 (講話叢書 ; 第1) <YDM10750>

（注：この情報は、国立国会図書館ホームページ内の「近代日本人の肖像」の内容を転載しております。掲載内容の複製については、国立国会図書館の許諾を得る必要があります。）

美術人名辞典

黒岩涙香

読み方：くろいわ るいこう

ジャーナリスト・翻訳家・探偵小説家。高知県生。市郎の子。名は周六、別号に半士半商人・冷眼子・民鉄等がある。「日本たいむす」「都新聞」の主事となり、のち朝報社を設立して「万朝報」を創刊した。翻訳小説に『鉄仮面』『巌窟王』『噫無情』等がある。大正９年（1920）歿、59才。

探偵作家・雑誌・団体・賞名事典

黒岩涙香（くろいわ・るいこう）

本名黒岩周六。1962年（文久2）、土佐国安芸郡川北村生まれ。別名黒岩大。香骨居士など多数。
1882年(明15)、「東京興論新誌」で北海道開拓使長官だった黒田清隆を攻撃し、官吏侮辱罪で起訴。
1882年(明15)、「同盟改進新聞」を創刊。主筆となる。
1885年(明18)、「日本たいむす」主筆となる。
1886年(明19)、「絵入自由新聞」主筆となる。ノルマントン号事件で、公正な判決が得られなかった理由として、日本側通訳の誤りを指摘をして世に知られた。
1888年(明21)、「今日新聞」に英国ヒューコンウェイの「暗い日々」(1884年(明17))を「法庭の美人」の題で訳す。
1888年(明21)、ガボリオ、の「ルルージュ事件」を「人耶鬼耶」として「今日新聞」に訳す。
1889年(明22)、グリーンの「リーヴォンウォース事件」を「真っ暗」として「絵入自由新聞」に訳出。新聞上で犯人宛の投書を募った。
1889年(明22)、「都新聞」主筆となる。「絵入自由新聞」に連載16回まで訳していた「美人之獄」を丸亭素人に引き継ぐ。
1890年(明23)、ボアゴベの「囚人大佐」を「執念」として「都新聞」に訳す。
1892年(明25)、朝報社を興し、「万朝報」を発刊し、次々に翻訳を掲載。
1892年(明25)、ボアゴベの「サンマール氏の二羽のつぐみ」を「正史実歴鉄仮面」として「万朝報」に訳出。
1892年(明25)、コリンズの「月長石」を「我不知」として「都新聞」「万朝報」に訳出。
大好評を博し、丸亭素人、南陽外史、菊亭笑庸などの追随者を排出した。当時の文壇は硯友社の全盛期で、探偵小説に読者をとられた硯友社は春陽堂から匿名で探偵小説シリーズを刊行した。 1893年(明26)に刊行された泉鏡花の「活人形」はそのひとつ。
創作としては、1889年(明22)に小説館の「小説叢」に「無惨」を発表。「情供証拠誤判録」翻訳の第一判例を参考にしたものだった。これは1873年(明6)、アメリカで発行された“Famous Cases of Circumstantial Evidences”が高橋健三によって1881年(明14)に翻訳されたものである。
1891年(明24)、結社理想団を結成。
1893年(明26)に「万朝報」に連載した「白髪鬼」（原作はマリーコレリのヴェンデッタ）の翻案を江戸川乱歩が、1931年(昭6)に「富士」に再翻案し掲載。
1899年(明32)に「万朝報」に連載した「」（原作はAMウィリアムスンの灰色の女）を江戸川乱歩が、1937年(昭12)に「講談倶楽部」で翻案。
1918年(大7)に渡欧し、翌年帰国。
卓越した翻訳家、小説家であるに留まらない偉大なジャーナリストであり、哲学者、史学者、国士。「蝮の周六」の綽名を持つ。
1920年(大9)、肺腫瘍のため死去。