JR貨物EF200形電気機関車 JR貨物EF200形電気機関車の概要

JR貨物EF200形電気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 11:58 UTC 版)

JR貨物EF200形電気機関車
貨物列車を牽引する901号機
(2012年4月24日)
基本情報
運用者 日本貨物鉄道
製造所 日立製作所
製造年 1990年(試作機)
1992年 - 1993年(量産機)
製造数 21両
運用開始 試作機:1992年7月2日[1]
量産機:1993年4月10日[2]
運用終了 2019年3月28日
主要諸元
軸配置 Bo - Bo - Bo
軌間 1,067 mm(狭軌
電気方式 直流1,500 V
架空電車線方式
全長 19,400 mm
全幅 2,900 mm
全高 試作機:4,200 mm
量産機:3,990 mm
運転整備重量 100.8 t
台車 円筒積層ゴム軸箱方式・ボルスタレス構造
FD3形(両端) FD4形(中間)
台車中心間距離 6,150 mm
固定軸距 2,600 mm
車輪径 1,120 mm
軸重 16.8 t
動力伝達方式 一段歯車減速リンク式
主電動機 FMT2形三相交流誘導電動機×6基
主電動機出力 1,000 kW
歯車比 16:75 (4.69)
制御方式 VVVFインバータ制御
GTOサイリスタ1C1M方式)
制動装置 自車:電気指令式空気ブレーキ発電ブレーキ
編成:自動空気ブレーキ
保安装置 ATS-SF, ATS-PF
最高運転速度 110 km/h
設計最高速度 120 km/h
定格速度 81.2 km/h
定格出力 6,000 kW
定格引張力 26,600 kgf
備考
第33回(1993年
ローレル賞受賞車両
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概要

1987年昭和62年)の国鉄分割民営化に伴いJR貨物は多数の機関車を承継した。直流電化区間ではEF65形EF66形などを主として用いることとなったが、景気拡大局面にあって輸送需要が増大していたことや、将来の車両取替えをも考慮し、機関車の製作を検討することとした。

輸送力増強は喫緊の課題であり、国鉄形式のEF66形・EF81形を一部改良の上で新造して賄いながら、並行して新型機関車の開発が進められ、1990年(平成2年)3月に試作機日立製作所で完成した。これがEF200形である。

以降の機関車開発の基本方針検討を目的に、VVVFインバータ制御の採用など各種の新技術を盛り込み、国鉄・JRの機関車では最高となる 6,000 kW の出力で 1,600 t 牽引を可能としたほか、補機類や操作系にも各種の新しい試みがなされた。交直流機のEF500形と同時試作され、双方に異なる機構や操作系を採用して比較試験が行われた。

1992年(平成4年)から量産され、輸送力増強が特に要求された東海道山陽本線で使用を開始した。当初計画された 1,600 t 牽引は変電所の構造上の問題が顕在化したことから実現せず、本形式は出力を制限して運用することとなった。製作は21両で終了し、以後の製作は運用コストの最適化を図ったEF210形に移行している。

新機軸の積極的な採用により、鉄道友の会1993年第33回ローレル賞を受賞している[3]。また、1992年のグッドデザイン賞を受賞した[4]。側面にはEF500形と同様 "INVERTER HI-TECH-LOCO" のロゴマークが付されている。

構造

直線を基調とした、独特な外観が特徴

車体は直線を基調とした意匠で、上面が傾斜した高運転台式非貫通の前面をもつ。機器室通路は片側に寄せられ、公式側と非公式側では側面の窓配置が異なる。落成時の外部塗色は、運転台部が濃淡ブルーの塗り分け、側面はライトグレー、乗務員室扉はカラシ色(黄緑色)である。この塗装はヨーロッパの機関車を参考にしたとされる。車体側面には"INVERTER HI-TECH LOCO"ロゴマークを付す。機関車の車軸上重量に余裕があれば、通常は粘着力向上のために余裕上限まで死重を搭載するが、本形式は事故対策の車体強化に伴う重量増加に対応させている。車体は6 mm厚の耐候性鋼板を基本とし、運転台構体には9 mm厚の鉄板が使用されており、200 tの衝突荷重に耐えられる設計とした[5]

制御方式は、GTOサイリスタ素子(4,500V - 2,000A)式VVVFインバータ制御で、1基のインバータで1台の三相交流誘導電動機を駆動する1C1M方式である[5]

主電動機には1時間定格出力が1,000 kWであるFMT2かご形三相誘導電動機を6基搭載し、定格出力は 6,000 kW(1時間)で、10 勾配での 1,600 t 牽引 (90 km/h)・25 ‰ 勾配で 1,100 t の引き出しが可能である[5]。設計最高速度は 120 km/h、定格速度は 81.2 km/h(1時間)である。従来のEF66形を大きく上回る駆動性能とされた理由は、最大 1,600 t の重量列車牽引と、旅客列車の高速高頻度運転を妨げない高加速とを両立させるためである。運転台で操作する主幹制御器は無段階連続制御が可能であるが、従来の機関車と操作をあわせ、便宜的に25ノッチ刻みとされた。連続制御を活かして主幹制御器脇に定速制御ボタンが設けられた[5]

集電装置は、国鉄・JRの機関車では初めて、日本でも大阪市交通局70系電車に次いで2例目の採用となったシングルアーム式のFPS2パンタグラフを装備した。空気上昇ばね降下式であり、大電流が流れるため舟体1つ当たりすり板が7枚取り付けられている。パンタグラフは関節部を両端に向けて搭載する。

補機類や計器類の電源を供給する電動発電機(MG)には、190 kVAの容量を備えたFDM1ブラシレス発電機を使用し、床下に搭載する[5]。空気ブレーキなどで使用される圧縮空気を供給する電動空気圧縮機は、C3000形式を2基搭載する。これとは別に、パンタグラフ上昇用として制御バッテリーを電源としたMH99-AK18補助電動圧縮機(ベビコン)が搭載されている。

電動機などの冷却に使用する電動送風機は、FMH3010A-FFK10A形を電動機・インバータ用として3基、フィルター排塵用が4基、ブレーキ抵抗器用が4基である[5]

台車ボルスタレス式のFD3形(両端)FD4形(中間)で、台車から車体への牽引力伝達は一本リンク(両端台車)および 対角リンク(中間台車)により行われる[5]。主電動機は従来の吊り掛け式を廃し台車装架としてばね下重量を軽減、動力伝達方式はリンク式である[5]。ブレーキ装置は国鉄・JR機関車で初となる電気指令式ブレーキであり、26 km/h 以上では発電ブレーキが有効となり、20 km/h以下では失効して空気ブレーキに切り替わる。編成ブレーキシステムはノッチ式のハンドル操作により、各ノッチで設定された圧力までブレーキ管圧力を減圧する自動空気ブレーキであり、高速貨車牽引用に電磁ブレーキ指令装置を装備する。基礎ブレーキは機関車としては初めてのユニットブレーキ装置(片押し式踏面)で[5]、FD3形にはばね式留置ブレーキを備える[6]

運転台はこれまでの国鉄形機関車で使われていたノッチ板式主幹制御器やブレーキ弁は一切廃止され、デスクタイプの運転台に横軸レバー式の主幹制御器・ブレーキ操作器に一新された[5]速度計・圧力計、主電動機電流計などの計器類はLEDによるデジタル表示式とされ、計器盤右端には機器情報などを表示するモニタ装置画面が配置された[5]


注釈

  1. ^ 第三セクターの水島臨海鉄道が事業主体となっている。
  2. ^ 全般検査期限が来る前に吹田に転属したため、大宮車両所では重要部検査のみ施工実績がある。
  3. ^ 19号機は最初に塗装変更された機体であるが、初全検後の休車期間中に塗装変更が行われたため、2010年の二全検時入場時には塗装変更がなされた後であった。
  4. ^ 同時にEF81形501号機にもラッピングが施された。

出典

  1. ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』1992年10月号RAILWAY TOPICS「JR貨物EF200形が営業運転開始」p.120。
  2. ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』1993年7月号RAILWAY TOPICS「JR貨物EF200形が本格営業運転開始」p.102。
  3. ^ 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '94年版』ジェー・アール・アール、1994年7月1日、191頁。ISBN 4-88283-115-5 
  4. ^ “Gマークに4車両”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (1992年10月23日) 
  5. ^ a b c d e f g h i j k 交友社『鉄道ファン』1990年9月号新車ガイド「JR貨物EF200形直流電機」pp.48 - 58。
  6. ^ a b c d e f g h 『鉄道ファン』通巻376号、p.121
  7. ^ 石谷 健二 (11 2002年). “ドキュメント EF200の走行試験”. 運転協会誌 (社団法人 日本鉄道運転協会) 通巻521号: 21. 
  8. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻376号、p.120
  9. ^ a b c 『鉄道ジャーナル』2012年10月号、鉄道ジャーナル社、2012年、p.32
  10. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻376号、p.122
  11. ^ 『鉄道ファン』1999年7月号、p.82
  12. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻712号、p.67
  13. ^ a b 『鉄道ジャーナル』通巻585号、p.91
  14. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻585号、p.92
  15. ^ a b 『電気機関車EX』通巻7号、p.50
  16. ^ a b c 『電気機関車EX』通巻7号、p.54
  17. ^ 『2017貨物時刻表』鉄道貨物協会 p.222
  18. ^ JR貨物の「最強機関車」EF200形が引退 山口から大阪へラストラン”. 乗りものニュース. 2019年3月29日閲覧。
  19. ^ EF200-901が日立へ - railf.jp 2016年10月16日
  20. ^ EF200-901が登場時の姿で展示される - railf.jp 2017年6月4日


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