JR貨物EF200形電気機関車 運用

JR貨物EF200形電気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 11:58 UTC 版)

運用

12号機旧塗色
16号機新塗色

本形式の目的は、東海道・山陽本線系統など主要幹線において列車単位を上げ、輸送力増強を達成することである。当初の計画では、量産車が登場する1992年秋から1,300 t列車への充当を開始し、1,600 t列車に関しては地上設備の増強後に充当を開始する予定で[10]、本形式を当初の計画に沿って運用するため、変電所の増設など電力供給設備の増強が検討されていた。しかし、景気後退下で貨物輸送量が伸び悩み、設備を保有する旅客会社との調整も合意に至らず、変電設備の改良は実施を見送られた。このため、本形式を定格出力で運用する事は過剰性能となり、運用出力(≒機関車の受電電流)をEF66形と同程度の15ノッチ相当に制限して運用された。

山陽本線においては、2002年(平成14年)から開始された国庫補助による鉄道貨物輸送力増強事業[注 1]2006年(平成18年)に完了した。これは輸送の隘路となっていた同区間の電力供給能力を強化する他、線内の各貨物駅の荷役方式を改善するものであったが、この事業により運転可能な列車重量が1,200 tから1,300 tに拡大された。これを受け、2007年3月18日のダイヤ改正から同区間で1,300 t列車の運転が開始され、本形式も当該運用には重点的に充当された。

1999年4月1日付で全21両が新鶴見機関区から吹田機関区に転属した[11]

車両検査は、新鶴見区所属時代である1998年度までは大宮車両所[12][注 2]、吹田区転属後は広島車両所で実施されており、1999年から2001年にかけて初全検、2006年から2010年にかけて二全検を施工している[13]。初全検では塗料の品質向上を理由に塗装工程が省略されたが、二全検にあわせてEF210形に準じた灰色基調配色への塗装変更が順次実施され、2009年4月22日に出場した2号機を最後に全車両の塗装変更が完了した[13][14][注 3]

また特筆されるものとして、2001年1月には1号機が阪神・淡路大震災神戸復興記念事業の一環として、車体にイラストを施した「ラッピング機関車」として運用されたことがある。イラストはルーマニア出身の画家であるアレキサンドラ・ニキータによるもので、ポートタワーと震災によって犠牲となった少女をモチーフとしたひまわりの絵画と、「神戸からありがとう」のメッセージがあしらわれたものとなっていた。同車は約1年間にわたり、特別に用意されたヘッドマークを装備し、通常運用に充当された[注 4]

量産車トップナンバーである1号機は2008年に復旧工事が見送られて部品取り車となり、広島車両所に留置されていたが、2011年度に廃車、2013年1月に解体された[15][16]。残る他の車両についても、主要部品確保が困難であることから三全検は見送られ、検査切れの車両から順次運用を離脱する事となった[15]。2016年3月のダイヤ改正で定期運用は大阪貨物ターミナル駅以西のみとなり、関東圏への定期運用乗り入れは同改正をもって消滅した[16]。2018年3月のダイヤ改正で定期運用を終了し、吹田機関区のEF66形やEF210形の代走運用のみとなった[16]

2017年3月1日時点では吹田機関区に2・4-7・10・17-20の10両が配置されていた[17]が、2019年3月28日をもって全車運用離脱となった。最終運行は18号機の幡生操車場〜吹田貨物ターミナル駅間での運用であった[18]

2号機は2019年11月16日から24日にかけて京都鉄道博物館シキ800形貨車とともに特別展示され、最終日の24日には引退セレモニーが行われた。その後、2021年3月9日に吹田機関区にて解体された。


注釈

  1. ^ 第三セクターの水島臨海鉄道が事業主体となっている。
  2. ^ 全般検査期限が来る前に吹田に転属したため、大宮車両所では重要部検査のみ施工実績がある。
  3. ^ 19号機は最初に塗装変更された機体であるが、初全検後の休車期間中に塗装変更が行われたため、2010年の二全検時入場時には塗装変更がなされた後であった。
  4. ^ 同時にEF81形501号機にもラッピングが施された。

出典

  1. ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』1992年10月号RAILWAY TOPICS「JR貨物EF200形が営業運転開始」p.120。
  2. ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』1993年7月号RAILWAY TOPICS「JR貨物EF200形が本格営業運転開始」p.102。
  3. ^ 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '94年版』ジェー・アール・アール、1994年7月1日、191頁。ISBN 4-88283-115-5 
  4. ^ “Gマークに4車両”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (1992年10月23日) 
  5. ^ a b c d e f g h i j k 交友社『鉄道ファン』1990年9月号新車ガイド「JR貨物EF200形直流電機」pp.48 - 58。
  6. ^ a b c d e f g h 『鉄道ファン』通巻376号、p.121
  7. ^ 石谷 健二 (11 2002年). “ドキュメント EF200の走行試験”. 運転協会誌 (社団法人 日本鉄道運転協会) 通巻521号: 21. 
  8. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻376号、p.120
  9. ^ a b c 『鉄道ジャーナル』2012年10月号、鉄道ジャーナル社、2012年、p.32
  10. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻376号、p.122
  11. ^ 『鉄道ファン』1999年7月号、p.82
  12. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻712号、p.67
  13. ^ a b 『鉄道ジャーナル』通巻585号、p.91
  14. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻585号、p.92
  15. ^ a b 『電気機関車EX』通巻7号、p.50
  16. ^ a b c 『電気機関車EX』通巻7号、p.54
  17. ^ 『2017貨物時刻表』鉄道貨物協会 p.222
  18. ^ JR貨物の「最強機関車」EF200形が引退 山口から大阪へラストラン”. 乗りものニュース. 2019年3月29日閲覧。
  19. ^ EF200-901が日立へ - railf.jp 2016年10月16日
  20. ^ EF200-901が登場時の姿で展示される - railf.jp 2017年6月4日






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