JR貨物EF200形電気機関車 形態区分

JR貨物EF200形電気機関車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 11:58 UTC 版)

形態区分

試作機(901号機)

901号機
(2008年2月8日) / 西阿知 - 倉敷

1990年(平成2年)6月に製作された、本形式の試作機である。落成後新鶴見機関区に配置され、各種試験に供された。

運転台屋根が前方に向かってわずかに傾斜し、取付屋根は大型で、屋根側面を濃青色と灰白色に塗り分けている。前面下部の灯火類設置箇所は濃灰色で、空調用の風道が設けられた。取付屋根の塗り分けは更新工事の実施時に廃止されている。

中間台車に設置される引張棒は、側面から見て傾斜した状態で装備される。

性能確認試験の過程で山陽本線瀬野 - 八本松瀬野八)の勾配を補助機関車無しで1,000t牽引を可能とするための勾配起動試験が行われた。当時の最高速貨物列車(1,000t、110km/h)を単独牽引するためには、余裕を考えて1,100t列車を最急勾配箇所で起動できる性能が必要となる。1991年 (平成3年) 1月から2月にかけて新鶴見機関区の構内で確認試験が行われ、起動抵抗の大きい速度5km/hまでモーター電流を750Aから780Aまで増加し、最大引張力を350kNまで大きくすることにより、1,100t列車を起動加速度0.1km/h/sで引き出し可能となる計画であった。

実際の試験は1991年 (平成3年) 3月6日の深夜に実施された。試験箇所は山陽本線神戸起点286km付近の22.5‰、半径400mの曲線区間上であり、等価査定勾配 は25.3 ‰ となる。3月4日の昼間に1,000tの勾配起動を実施したところ、引き出しはスムーズであったが速度が5km/hから上昇せず、モーター電流を790Aまで上げて試験を行うこととなった。編成は901号機を先頭に砂を詰めた試験用コンテナを搭載した貨車が20両1,000t分連結され、万が一動けなくなった時の救援用後部補機がEF67(100t)であった。午前3時45分頃、起動試験が行われ1,100 t 列車の起動に成功している[7][8]

量産機(1 - 20号機)

14号機
(2009年5月20日 / 高島 - 東岡山

1992年(平成4年) - 1993年(平成5年)に日立製作所で20両が製作され、落成後は新鶴見機関区に配置された。試作機の運用成果を基に各部を改良している[8]

インバータ装置を小型化して容積を抑え、屋根カバーの高さを 210 mm 低くした[6]。運転台屋根は室内計器の配置を変更して水平とされ、試作機とは特に側面の印象が大きく異なる[6]

乗務員室側開戸の形状を変更、屋根高さの変更に伴い、外板塗装は屋根をシルバー1色塗装とし、側板上部に青い帯を追加した[8][6]。前面下部の灯火類設置部は青色とされ、運転台空調用風道は床下に移された[6][9]

運転台は直射日光からの視認性向上のため、速度計、圧力計などの計器類を落とし込んだ配置とし、側面窓に遮光フィルムを貼り付けした[6]。操作性向上のため、主幹制御器と逆転器(レバーサ)の取り付け位置を入れ替えた[6]。また、ノッチ表示灯の設置、計器類・スイッチ類の配置の見直しを実施[6]。ブレーキノッチ数は、試作機の自弁・単弁とも15ノッチから自弁8ノッチ、単弁4ノッチに変更した[10]

台車は、ユニットブレーキ装置に駐車用ブレーキシリンダを内蔵して構造を簡素化した[9]。また、中間台車の引張棒は車体の取付部を延長し、レール面に水平となる位置で装備する[9]。これらの改良のため、台車形式はFD3A(中間)、FD4A(両端)に改められた。ブレーキ性能向上のため、発電ブレーキ用抵抗器は、容量を2,280 kWから2,730 kWに増加させた[10]


注釈

  1. ^ 第三セクターの水島臨海鉄道が事業主体となっている。
  2. ^ 全般検査期限が来る前に吹田に転属したため、大宮車両所では重要部検査のみ施工実績がある。
  3. ^ 19号機は最初に塗装変更された機体であるが、初全検後の休車期間中に塗装変更が行われたため、2010年の二全検時入場時には塗装変更がなされた後であった。
  4. ^ 同時にEF81形501号機にもラッピングが施された。

出典

  1. ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』1992年10月号RAILWAY TOPICS「JR貨物EF200形が営業運転開始」p.120。
  2. ^ 鉄道ジャーナル社『鉄道ジャーナル』1993年7月号RAILWAY TOPICS「JR貨物EF200形が本格営業運転開始」p.102。
  3. ^ 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '94年版』ジェー・アール・アール、1994年7月1日、191頁。ISBN 4-88283-115-5 
  4. ^ “Gマークに4車両”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (1992年10月23日) 
  5. ^ a b c d e f g h i j k 交友社『鉄道ファン』1990年9月号新車ガイド「JR貨物EF200形直流電機」pp.48 - 58。
  6. ^ a b c d e f g h 『鉄道ファン』通巻376号、p.121
  7. ^ 石谷 健二 (11 2002年). “ドキュメント EF200の走行試験”. 運転協会誌 (社団法人 日本鉄道運転協会) 通巻521号: 21. 
  8. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻376号、p.120
  9. ^ a b c 『鉄道ジャーナル』2012年10月号、鉄道ジャーナル社、2012年、p.32
  10. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻376号、p.122
  11. ^ 『鉄道ファン』1999年7月号、p.82
  12. ^ 『鉄道ピクトリアル』通巻712号、p.67
  13. ^ a b 『鉄道ジャーナル』通巻585号、p.91
  14. ^ 『鉄道ジャーナル』通巻585号、p.92
  15. ^ a b 『電気機関車EX』通巻7号、p.50
  16. ^ a b c 『電気機関車EX』通巻7号、p.54
  17. ^ 『2017貨物時刻表』鉄道貨物協会 p.222
  18. ^ JR貨物の「最強機関車」EF200形が引退 山口から大阪へラストラン”. 乗りものニュース. 2019年3月29日閲覧。
  19. ^ EF200-901が日立へ - railf.jp 2016年10月16日
  20. ^ EF200-901が登場時の姿で展示される - railf.jp 2017年6月4日






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