JR九州787系電車 JR九州787系電車の概要

JR九州787系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/26 16:03 UTC 版)

JR九州787系電車
787系「つばめ」
(1992年 博多駅)
基本情報
運用者 九州旅客鉄道
製造所 日立製作所
近畿車輛
製造年 1992年 - 2002年
製造数 140両
運用開始 1992年7月15日
主要諸元
編成 4両・6両・8両
軌間 1,067 mm
電気方式 交流20,000V (60Hz)
架空電車線方式
最高運転速度 130 km/h
編成定員 189・193人(4両)
276人(6両)
340人(7両)
404人(8両)
全長 20,500 mm
21,600 mm (先頭車)
全幅 2,944 mm
全高 3,670 mm
車体 普通鋼
台車 ボルスタレス台車ヨーダンパ付)
コイルばね+円錐積層ゴム式
DT400K・TR400K
SUミンデン式(試作台車・一部)
DT901K・TR901K
主電動機 MT61QB型直流整流子電動機
主電動機出力 150 kW × 4 / 両
駆動方式 中空軸平行カルダン撓み板継手方式
歯車比 3.50
編成出力 2,400 kW 1,200KW (4M3T/4M2T) (2M2T)
制御方式 サイリスタ位相制御弱め界磁制御
制御装置 CS404K形制御装置
制動装置 電気指令式ブレーキ
発電ブレーキ併用)
保安装置 ATS-SKATS-DK
第36回(1993年
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1992年(平成4年)7月15日から営業運転を開始した。

概要

鹿児島本線特急有明」のうち、西鹿児島駅(現鹿児島中央駅)発着の列車について、愛称を「つばめ」に変更することが決まり、その名称にふさわしい列車として開発された。

811系電車の走行システムをベースに開発され、デザインは水戸岡鋭治主宰のドーンデザイン研究所が担当した。1992年から2002年(平成14年)までの間に、日立製作所および近畿車輛で計140両が製造され、JR発足後に登場した特急形車両として初めて製造両数が100両を越えた。

1993年(平成5年)、第36回鉄道友の会ブルーリボン賞を受賞し、通商産業省(現・経済産業省)グッドデザイン商品(現・産業デザイン振興会所管「グッドデザイン賞」)商品デザイン部門選定。

1994年(平成6年)10月に第5回ブルネル賞を受賞した[1]

開発

JR九州の鉄道事業本部長(当時)として本形式の開発に携わった川﨑孝夫によれば、デザインを担当した水戸岡は当初、本形式の名称を「RED EGG EXPRESS」とし、愛称として「REE」(リー)を採用する意向を示していたという[注 1]。車体の塗装もJR九州のコーポネートカラーである赤色になる予定であった。

これに対し、当時のJR九州社長である石井幸孝は肯定的な反応を示したが、川﨑は「RED EGG EXPRESS」は日本の列車名としては考えにくい名前で、英語名ではスラングになる可能性もあると考えていた。そこでアメリカ合衆国総領事館に問い合わせたところ、「その英語はスラングではないが、なぜ日本の列車なのに英語名を使うのか」との返答があり、これが列車名を日本語に転換する契機となった。

その後、JRグループ各社から了承を得て[2]「つばめ」の名称を復活させることが決定すると、本形式の塗装も変更されることになった。水戸岡は黒色を主張していたが、視認性の問題を考慮した結果、最終的にはグレーが採用された[3][注 2]

車両概説

本項では落成当時の仕様について記述する。

車体

普通鋼製で、屋根上など腐食しやすい箇所についてはステンレス鋼を使用している。乗降扉の横幅は783系から200mm拡大され900mmとされた。駅ホーム高さの低い路線にも入線するためステップは引き続き設置された。バリアフリー関連設備が設計変更されたモハ787形200番台および300番台では乗降扉の幅が1,000mmに拡大されている。

塗装はグレー濃淡のツートンカラーとなり、各所に「TSUBAME」のロゴが配置されている。また車体側面の車両形式・車両番号表記も、「数字または文字を1文字毎に四角で囲む」表記が初めて採用され、これが以降の水戸岡デザインの特徴となる。ただし、妻面の配置区所・形式・自重・定員表記などは従来どおり国鉄書体で表記されている。

前面は2次車以降では運転席正面の窓下に手すりが取り付けられている他、根元の部分に窪みが見られる。手すりは後年、1次車にも追加で取り付けられた。

なお、1999年(平成11年)以降に落成した車両には当初から車端部に転落防止幌が設置されていたが、それ以前の車両についても後年設置されている。

内装

側面化粧板はダークグレー、床はカーペット敷きとなっている。

グリーン車座席は2+1列のリクライニングシートで、座席の前後間隔は783系と同じ1,200mmとなる。背もたれ自体の角度と背もたれ上部の角度を別々に調節できる。サロンコンパートメントは4人用の個室となっており、開放室と同じ1人掛けのリクライニングシート1台と3人掛けのソファーが配置されている。

普通車は一般的な2+2列配置のリクライニングシートで、座席の前後間隔は783系から40mm拡大され、1,000mmとされた。背面部に収納式のテーブルを設置しているほか、簡易式フットレストを設置している。ただしサハシ787形のセミコンパートメントは、前後幅で2,010mmのコンパートメント内に2人掛けの座席を向かい合わせに配置している。

初期の一般普通席は座席背面テーブルのみだったが、4次車以降には座席外側の肘掛にも小型テーブルが追加されたほか、オーディオサービスも提供された。

クロハ786形はグリーン席・普通席ともに座席窓下足元にコンセントが設置されている。

サハシ787形とクハ787形0番台以外の普通車には、客室中央部(ただしモハ786形に限り客室前位側)に幅750mmの荷物置場を設置している。全車とも荷物棚には、蓋付きのハットラック式が採用された。

モハ786形全車には、バリアフリー対応の座席およびトイレを設置している。

LED車内案内表示器を、客室の仕切扉上部に設置している。表示は上下2段式で、上段は左から号車番号表示、座席種別表示、禁煙表示灯、トイレ使用中表示となっている。下段はスクロール式情報表示板となっている。スクロール式情報表示での英数字表示は全角文字である。

「有明」向け新製先頭車のうち後位側は、仕切扉等が883系に準じたデザインとなっている。

落成当初はクモロ787形とモハ786形の全車両にテレホンカード専用の公衆電話室が設置されていたが、電話機は後に撤去され「携帯電話コーナー」に改められた。

運転台

左にT字形横軸マスコンハンドルと、右に縦軸ブレーキハンドル(常用7段+非常)で構成される。

本系列では、JR九州の電車として初めて本格的な乗務員支援モニタを採用した。画面構成はMON3と同様で音声による停車駅接近予告機能や、現在は使用されていないがチャイムによる交交セクションの接近予告を付加している。

運転席と客室は壁で仕切られていて、客室から運転席は見えない構造となっているが、2019年3月よりBM編成を対象に客室と運転室を仕切る戸に窓ガラスおよび遮光板が付いたものに交換された。

機器類

TR400K台車

台車は新設計のDT400K(電動台車)およびTR400K(付随台車)が採用された。

制御装置は、サイリスタ位相制御MM'ユニット)と、発電ブレーキ併用による電気指令式ブレーキの組み合わせで、直流直巻電動機を採用した。電動車ユニットの偶数形式が上り(門司港)向きで、従来の車両とは上下向きが逆となっている。

パンタグラフ

クモハ786形およびモハ786形に装備しているパンタグラフはPS400K形下枠交差式パンタグラフが採用された。

最高速度は130km/h速度種別は7両編成でA28である。


注釈

  1. ^ サハシ787形の型のドーム天井は、この名称を想定して設計されたものであった。
  2. ^ 後年のリニューアル工事で黒味が増したほか、「36ぷらす3」では完全な黒色で塗装されている。
  3. ^ 2011年6月に営業終了。
  4. ^ 繁忙期に小倉駅 - 大分駅間で運転される臨時「にちりん」や「にちりん」3・16号の大分駅以北、また定期列車でも他編成の運用を代走する場合では車掌が乗務する。また抜き打ちで添乗員が乗務し、検札を行う場合がある。

出典

  1. ^ 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '95年版』ジェー・アール・アール、1995年7月1日、191頁。ISBN 4-88283-116-3 
  2. ^ 前田徹 (2003年3月21日). “春を告げるイメージ 九州新幹線は「つばめ」”. つばめ開業 (西日本新聞). オリジナルの2004年5月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20040512103916/http://www.nishinippon.co.jp/news/2004/tsubame/kanren/kiji/030321_1.html 2012年11月29日閲覧。 
  3. ^ “灰色の「つばめ」実は赤色だったかも!? 特急787系“幻の案”JR九州OBが語る 今も車内に名残アリ”. 乗りものニュース. (2023年10月13日). https://trafficnews.jp/post/128577 2023年10月14日閲覧。 
  4. ^ 川上章吉 1992, p. 75.
  5. ^ 『JR全車輌ハンドブック 2008』ネコ・パブリッシング、2008年8月1日、636-637頁。ISBN 978-4777006663 
  6. ^ 交友社鉄道ファン』1997年3月号 通巻431号 p.144
  7. ^ a b 坂正博「JR九州新幹線・特急列車の運転体系概要」『鉄道ダイヤ情報』第323号、交通新聞社、2011年3月、pp. 28-35。 
  8. ^ 787系BM106編成が塗装およびロゴ変更のうえ出場”. 鉄道ファン railf.jp 鉄道ニュース. 交友社 (2011年3月8日). 2012年10月13日閲覧。
  9. ^ 鶴通孝「INTERCITY 787 AROUND THE KYUSHU」『鉄道ジャーナル』第45巻第6号、鉄道ジャーナル社、2011年3月、74-88頁、ISSN 0288-2337 
  10. ^ 畳敷きの個室にソファ!JR九州新観光列車「36ぷらす3」公開 - RMニュース(ネコ・パブリッシング社、2020年9月29日掲載、同日閲覧)
  11. ^ 「36ぷらす3」車両レイアウトについて” (PDF). 九州旅客鉄道 (2019年12月20日). 2019年12月20日閲覧。
  12. ^ ジェー・アール・アール 編『JR電車編成表2022冬』交通新聞社、2021年11月22日、207,221頁。ISBN 978-4-330-06521-2 
  13. ^ 鉄道ジャーナル』第33巻第5号、鉄道ジャーナル社、1999年4月、95頁。 
  14. ^ a b 「JR年表」『JR気動車客車編成表 '03年版』ジェー・アール・アール、2003年7月1日、191頁。ISBN 4-88283-124-4 
  15. ^ 外山勝彦「鉄道記録帳2003年2月」『RAIL FAN』第50巻第5号、鉄道友の会、2003年5月1日、21頁。 
  16. ^ 鉄道事故調査報告書”. 運輸安全委員会(JTSB). 2022年1月9日閲覧。
  17. ^ 日豊本線「宗太郎越え」の普通列車が787系化される”. 鉄道ファン railf.jp 鉄道ニュース. 交友社 (2018年3月17日). 2018年3月19日閲覧。


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