81式短距離地対空誘導弾 81式短距離地対空誘導弾の概要

81式短距離地対空誘導弾

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/16 15:28 UTC 版)

防衛省は略称をSAM-1、広報向け愛称を「ショートアロー」としており、部隊内では短SAM(たんさむ)とも通称される[1]

概要

ジャッキとステップを取り付けた73式大型トラックの後部に、射撃管制装置を搭載した車両一台と、発射装置を搭載した車両二台で構成される。射撃管制装置にはフェーズドアレイレーダー(Xバンド)[1]を採用し、発射後に空中におけるロックオン機能や、赤外線パッシブ・ホーミング方式を採用して、二つの目標に対する同時追跡と連続攻撃能力を有している。

発射装置は誘導弾4発を装填可能で、搭載車両のステップには予備弾を収納したコンテナを携帯できる。装填に際しては、ランチャーレール下部に置かれたコンテナ内から機力により弾体が持ち上げられ、ランチャーレールにセットされる。

発射装置に「目視照準具」を接続する事により、目視による照準も可能。安全対策として、設定時間を超えて飛翔した場合や、射撃管制装置からの指令で誘導弾を自爆させることができる。

開発・配備

1960年代の後半から開発が始まり、1981年(昭和56年)に制式化された。

1982年(昭和57年)から陸上自衛隊の各師団に、1983年(昭和58年)から航空自衛隊の基地防空用に、81式短距離地対空誘導弾(A)の配備が始まっている。1990年(平成2年)までに陸上自衛隊の全師団へA型の配備が完了した。

1992年(平成4年)からは海上自衛隊の基地防空用に81式短距離地対空誘導弾(B)の配備が行なわれ、こちらは2006年(平成18年)には退役した。なお、陸上自衛隊では2019年(令和元年)現在も運用されている。

現在、改良型の81式短距離地対空誘導弾(C)(通称:短SAM改)は、陸上自衛隊のみで配備されており、航空自衛隊は短SAM改が対巡航ミサイル能力に劣っているとして導入していない。

配備部隊・機関

改良型

81式短距離地対空誘導弾(C)

発射機に搭載された2発のC型弾頭、先端形状の違いに注意

短SAMの実用化後、直ちに改良型の通称「短SAM改」の開発検討が開始されている[2]1989年(平成元年)からは試作が始まり、1995年(平成7年)に赤外線/可視光複合画像ホーミング方式の光波弾と、アクティブ電波ホーミング方式の電波弾の二種類が制式化された[2]電波妨害(ECM)下においては光波弾、電子光学妨害(EOCM)下においては電波弾を使用する。光波弾と電波弾では全長が異なり、電波弾の方が約15 cmほど長く、先端が尖った形状となっている。

短SAM改は光波FCSを搭載し対妨害性と全天候性が向上しているほか、固体ロケットモーターに末端水酸基ポリブタジエンを採用して無煙化と推進性能向上による被発見率の低下と射程の延長が図られている。また、FCSを通じ、目標のコース情報を把握し、ミサイル飛翔コース補正が行える[2]師団対空情報処理システム(DADS)との連接にも対応している。

射撃管制装置や発射機にも一部変更が加えられている。光波弾の終末誘導は赤外線/可視光画像誘導方式[1]により行われ、近接信管レーザー近接信管を採用。電波弾の終末誘導はフェイズドアレイ・パルスドップラー・シーカーによるアクティブ・レーダー誘導方式[1]で、近接信管はパルスドップラーによるアクティブ・レーダー信管である。短SAM改は陸上自衛隊のみが運用している。


注釈

  1. ^ 11式では3 1/2tトラックなのに対し、基地防空用地対空誘導弾では高機動車

出典

  1. ^ a b c d e PANZER 臨時増刊 陸上自衛隊の車輌と装備2012-2013 2013年1月号,アルゴノート社,P88
  2. ^ a b c 技術研究本部50年史 P171-173
  3. ^ 81式 短距離地対空誘導弾(C)”. www.asagumo-news.com. 2022年8月28日閲覧。


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