核酸 核酸の概要

核酸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/20 04:30 UTC 版)

フラノース分子部の位置関係
ヌクレオチドを接続するホスホジエステル結合
RNAとDNA、それぞれの核酸塩基

なお、糖鎖の両端のうち、5'にリン酸が結合して切れている側のほうを 5'末端、反対側を 3'末端と呼んで区別する。また、隣り合う核酸上の領域の、5'側を上流、3'側を下流という。

構造

一次構造

核酸の一次構造とは、(デオキシ)ヌクレオシド成分がホスホジエステル結合によって、連続的に連結され、枝分かれのない、ポリヌクレオチド(ヌクレオチドの重合体。核酸と区別して、20程度の短いものを指すことがある)鎖を形成させるような(デオキシ)ヌクレオシド配列である。

二次構造

核酸の二次構造とは、一本鎖の主にホモポリヌクレオチド(塩基成分が同一のヌクレオチド重合体)の場合には、塩基間の相互作用によって規定されるヌクレオシド成分の空間的配置をさす。2本の相補鎖の場合には、同一の鎖の隣接塩基間の相互作用と、互いに平行している鎖の対向塩基間の水素結合により安定化された規則的な二重螺旋(DNAには三重、四重螺旋も存在する)を意味する。

三次構造

核酸の三次構造は、固定化された二重螺旋とそれ以外のタイプの配列で形成される。

四次構造

核酸の四次構造は、リボソームヌクレオソームのような核蛋白質と相互作用している高分子の空間的配置を意味する。特に、ポリヌクレオチドとポリペプチドの相互依存による高分子構造を指す。

核酸塩基

核酸塩基 (nucleobase) は核酸 (DNA, RNA) を構成する塩基成分で、主なものにアデニングアニンシトシンチミンウラシルがあり、それぞれ A, G, C, T, U と略す。構造の骨格からプリン塩基 (A, G) とピリミジン塩基 (C, T, U) とに分けられる。

塩基 略号 分類 構造式 DNA
or
RNA
ヌクレオシド リボヌクレオチド デオキシリボヌクレオチド
アデニン A プリン塩基 DNA
and
RNA
アデノシン アデノシン一リン酸 (AMP)
アデノシン二リン酸 (ADP)
アデノシン三リン酸 (ATP)
デオキシアデノシン一リン酸 (dAMP)
デオキシアデノシン二リン酸 (dADP)
デオキシアデノシン三リン酸 (dATP)
グアニン G グアノシン グアノシン一リン酸 (GMP)
グアノシン二リン酸 (GDP)
グアノシン三リン酸 (GTP)
デオキシグアノシン一リン酸 (dGMP)
デオキシグアノシン二リン酸 (dGDP)
デオキシグアノシン三リン酸 (dGTP)
チミン T ピリミジン塩基 DNA チミジン
または
5-メチルウリジン
5-メチルウリジン一リン酸 (TMP)
5-メチルウリジン二リン酸 (TDP)
5-メチルウリジン三リン酸 (TTP)
チミジン一リン酸 (dTMP)
チミジン二リン酸 (dTDP)
チミジン三リン酸 (dTTP)
シトシン C DNA
and
RNA
シチジン シチジン一リン酸 (CMP)
シチジン二リン酸 (CDP)
シチジン三リン酸 (CTP)
デオキシシチジン一リン酸 (dCMP)
デオキシシチジン二リン酸 (dCDP)
デオキシシチジン三リン酸 (dCTP)
ウラシル U RNA ウリジン ウリジン一リン酸 (UMP)
ウリジン二リン酸 (UDP)
ウリジン三リン酸 (UTP)
デオキシウリジン一リン酸 (dUMP)
デオキシウリジン二リン酸 (dUDP)
デオキシウリジン三リン酸 (dUTP)

核酸やヌクレオチドの構成単位(の繰り返し数)として、たとえば、10塩基(1本鎖の場合)または10塩基対(2重鎖の場合)などと便宜的に用いる。

塩基対における水素結合

核酸塩基略号表
略号 塩基(略称の由来)
A アデニン (Adenine)
T チミン (Thymine)
G グアニン (Guanine)
C シトシン (Cytosine)
U ウラシル (Uracil)
R プリン (puRine)
Y ピリミジン (pYrimidine)
M A あるいは C (aMino)
K G あるいは T (Keto)
S G あるいは C (G と C の結合は強い (Strong))
W A あるいは T (A と T の結合は弱い (Weak))
B G あるいは T あるいは C (A の次は B)
H A あるいは T あるいは C (G の次は H)
V A あるいは G あるいは C (TU の次は V)
D A あるいは G あるいは T (C の次は D)
N AGTCのどれか (aNy)

DNAの場合、アデニン (A) とチミン (T)、グアニン (G) とシトシン (C) は水素結合を形成する。AT対が二つの水素結合を形成するのに対し、GC対は三つの水素結合を形成する。そのため、GC含有量が大きい領域では安定性が高まる。略号の A + T が Weak の頭文字W、G + C が Strong の頭文字Sとなっているわけである。

一方、RNAは、アデニン (A) とウラシル (U)、グアニン (G) とシトシン (C) で塩基対を形成する。塩基としてチミンではなくウラシルで構成されるが、ウラシルもチミン同様ピリミジン骨格であり、アデニンと塩基対を形成する。ウラシルは、チミンのメチル基が水素基に置換された塩基である。

比較的広範囲で使われている略号を示した。分野によってはこれと異なった略号を用いることもある(修飾塩基など)。また、塩基とヌクレオシドを区別したい場合は三文字の略号を使う場合もある。


  1. ^ 蛋白質の変性については変性#変性(生体高分子)参照
  2. ^ КООПБРАТИВНОСТЬの暫定的和訳。英語ではcooperativeness
  3. ^ I. Tinoco, Jr., O. C. Uhlenbeck, M. D. Levine
  1. ^ N. K. カチェトコフ/E. I. ブドフスキー 編、橋爪たけし 監訳「核酸の有機化学 上」 1974年 講談社出版
  2. ^ 下の図のアイディアは杉本直己「遺伝子化学」2002年 p36 に書かれている図3.9から流用
  3. ^ “Nucleic Acid Contents of Japanese Foods”. NIPPON SHOKUHIN KOGYO GAKKAISHI 36 (11): Table 2. (1989). doi:10.3136/nskkk1962.36.11_934. 


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