情報
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/15 11:18 UTC 版)
生態学的情報
環境中で個体が活動するという生態学的事実を、情報概念によって捉える向きもある。
1950年代に米国の心理学者J.J.ギブソンは《刺激情報》《アフォーダンス》という概念を提唱した[2]。情報は人間とは別にいわば“環境”の側に存在し、そこに意味や価値 (アフォーダンス) が存在することを知覚者に知らせる、という考え方であり、《情報》の概念を理解するには《環境》と《人間》の関係を考慮することが重要であるという面から把握されたのである[2]。
物事の関係性を記述している文書、またはその状態も情報である。
物理と情報と宇宙
マクスウェルの悪魔という1867年ごろに考案され、20世紀にも議論が行われた思考実験に、情報が関わっている。この実験では、情報とエントロピーの直接的関係が示されている。この思考実験は長らく難問として議論の的となっていたが、1980年代に、系のエントロピーを増大させずに情報を破壊することはできない、との見解に達した。エントロピーの増大とは、一般的には熱の発生を意味する。この考え方を論理回路に適用すると、ANDゲートが発生する熱エネルギーの理論的最小値はNOTゲートのそれよりも大きいということになる(ANDゲートは2ビットを入力として1ビットを出力するため、情報が破壊されているが、NOTゲートでは単に反転させるだけで情報が破壊されていないため)。こういった理論は量子コンピュータとも関連する(可逆計算)。
量子もつれ現象によって、2つの粒子が分離して参照されていない状態で、ある種の、光速を超えて「情報」がもたらされる、ように見える現象がある(「相互作用」ではない)。2つの粒子が離れ、一方の粒子が観測されて量子状態が決定されたとすると、自動的に他方の粒子の量子状態も決定される(ベルの不等式の破れ)。
しかし、これを利用して情報を間接的であっても光速を越えて伝達することはできない[要出典]。アリスとボブが離れた場所に居るものとし、互いにもつれの状態にある量子がそれぞれの手元にあるものとする。アリスがその量子を観測することで、ボブの手元にある量子についての情報も、アリスは得ることができる。しかしその情報にもとづいてボブが手元の量子に何かをするためには、何らかの(古典的な)方法でアリスからその情報を送ってもらう以外に手段は無い。まとめると、観測によって、何か「光速を越えた情報の伝達」のようなことが起きるわけではない。
なお、極端な(しかし検証可能性の無い)仮説としては、我々の宇宙・物理世界が情報処理的な「シミュレーション」である、といったようなものもある(デジタル物理学)。
量子重力理論を実現すると期待されている超弦理論は、ブラックホール熱力学の解析で生まれたホログラフィック原理と関連し、その原理は「全宇宙が宇宙の地平面上に描かれた2次元の情報構造と見なせる」という。
また2000年代に入ってからは、量子情報から時空間が創発するという理論的な仮説が立ち上がっている。「実はこの宇宙も我々もすべて(情報的な存在で)シミュレーターの中の架空の存在なのかも知れない」とも考えられるようになってきている[17]。
情報理論と数学
情報の量的側面(情報量)については、アンドレイ・コルモゴロフらによる確率論の確立といった背景もあるわけであるが、1948年にクロード・シャノンによって形式化され[2]、こんにちでは「情報理論」と呼ばれている。シャノンの情報理論ではその事柄の起こる確率を元に情報量を定義した[18]。たとえば、天気に「晴れ」「曇り」「雨」「雪」の4つの選択肢があり、いずれの確率も同じ場合は、「晴れ」であることがわかれば、 = 2ビットの情報が得られたことになる、と考えるわけである[2]。
一方でシャノンの情報理論では「情報」から主観的価値的な側面が捨てられてしまっており[19]、すでに「情報」という言葉の日常的な用法とは合致しないが、それとは別のひとつの用法を示している。しかし、そもそも情報の「価値」とはなんなのか、という議論を追加する必要がある。前述の4種類の天候が、それが天気予報としての情報ならば、情報理論では全体における確率が高いものほど情報量が少なく、確率が低いものほど情報量が多いとして扱う。例えばそれが、沖縄県や静岡県の平野部の天気についてであった場合は、「雪」である可能性は極めて低いため、「雪」の場合の情報量は多い、ということになる。これは日常的な感覚にも合致しているし、可逆データ圧縮の原理として日常的に応用されてもいる。
情報通信
情報理論の背景には「情報通信」がある(シャノンの論文のタイトルは「通信の数学的理論」であった)。
- ^ a b c d e f g h i j k l m デジタル大辞泉
- ^ a b c d e f g h i j 安西祐一郎「情報」『岩波 哲学・ 思想事典』1998年。
- ^ a b 関連項目: エピジェネティックス、細胞記憶
- ^ L. Floridi, Information - A Very Short Introduction (Oxford University Press) provides a short overview.
- ^ a b 坂本賢三「情報」『世界大百科事典』平凡社、1988年。
- ^ 酒井清 改訳 (1881年11月15日). “佛國歩兵陣中要務實地演習軌典(再版)”. 国立国会図書館デジタルコレクション. 内外兵事新聞局. 2019年8月14日閲覧。
- ^ 小野厚夫: 情報という言葉を尋ねて(1). 情報処理学会誌, Vol.46, No.4, pp.347-351, 2005.
- ^ 軍事領域における訳語の変遷と原状は、高井三郎『知っておきたい現代軍事用語--解説と使い方』アリアドネ企画、2006年、42-45ページ、「〔情報、情報資料、諜報〕intelligence, information, espionage」参照。
- ^ 「高度情報化社会の諸相 歴史・学問・人間・哲学・文化」p5 折笠和文 同文舘出版 平成8年9月20日初版発行
- ^ 情報という言葉の語源とその周辺について2024年7月7日閲覧
- ^ Information Theory2024年7月7日閲覧
- ^ 「高度情報化社会の諸相 歴史・学問・人間・哲学・文化」p6 折笠和文 同文舘出版 平成8年9月20日初版発行
- ^ 情報という言葉を尋ねて(1)同(2)同(3)
- ^ https://for-patients.c-cat.ncc.go.jp/knowledge/relationship/genes_and_genomes.html 「遺伝子・ゲノムとは」 国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター(C-CAT) 2024年7月15日閲覧
- ^ David B. Dusenbery (1992), Sensory Ecology: How organisms acquire and respond to information, New York: W.H. Freeman & Co, ISBN 978-0716723332
- ^ Stewart, Thomas, (2001). Wealth of Knowledge. Doubleday, New York, NY, 379 p.
- ^ 『ATOM 原子の正体に迫った伝説の科学者たち』 近代科学社、2010 ISBN 4764950111
- ^ 「情報理論 改訂版」p2-3 三木成彦・吉川英機 コロナ社 2000年1月13日初版第1刷発行
- ^ 「情報理論 改訂版」p3 三木成彦・吉川英機 コロナ社 2000年1月13日初版第1刷発行
- ^ 法令用語と判例における「情報」 - 法政大学 白田秀彰
- ^ 野口悠紀雄『情報の経済理論』東洋経済新報社、1986年、[要ページ番号]頁。ISBN 4-492-31075-4。
- ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p101-103 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
- ^ 「新版 マス・コミュニケーション概論」p31 清水英夫・林伸郎・武市英雄・山田健太著 学陽書房 2009年5月15日新版初版発行
- ^ 「情報社会と情報倫理 改訂版」p1−4 梅本吉彦編著 学陽書房 令和2年1月25日発行
- ^ 「情報社会と情報倫理 改訂版」p8−9 梅本吉彦編著 学陽書房 令和2年1月25日発行
- ^ https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201703/1.html#secondSection 「「個人情報保護法」をわかりやすく解説 個人情報の取扱いルールとは?」政府広報オンライン 2022年8月5日 2024年7月15日閲覧
- ^ 「高度情報化社会の諸相 歴史・学問・人間・哲学・文化」p46-49 折笠和文 同文舘出版 平成8年9月20日初版発行
- ^ https://www.mext.go.jp/content/20200608-mxt_jogai01-000003284_003.pdf 「第2章 情報活用能力の育成」文部科学省 令和2年6月 2024年7月15日閲覧
- ^ 「高度情報化社会の諸相 歴史・学問・人間・哲学・文化」p86-87 折笠和文 同文舘出版 平成8年9月20日初版発行
- ^ Beynon-Davies P. (2002). Information Systems: an introduction to informatics in Organisations. Palgrave, Basingstoke, UK. ISBN 0-333-96390-3
- ^ Beynon-Davies P. (2009). Business Information Systems. Palgrave, Basingstoke. ISBN 978-0-230-20368-6
- ^ Witzany G. (2010) Biocommunication and Natural Genome Editing. Springer: Dordrecht
- ^ Sandro Nielsen: 'The Effect of Lexicographical Information Costs on Dictionary Making and Use', Lexikos 18/2008, 170-189.
- ^ Shu-Kun Lin (2008). 'Gibbs Paradox and the Concepts of Information, Symmetry, Similarity and Their Relationship', Entropy, 10 (1), 1-5.
情報と同じ種類の言葉
「情報」に関係したコラム
-
CFDでは、コモディティや株式、株価指数、債券などさまざまな商品を扱っています。ここでは、これらの商品に関連するニュースを提供しているCFD業者のサイトの一覧を紹介します。 CFD業者 ニュース名 D...
-
証券会社では、株式投資に役立つレポートを提供しています。レポートは、口座開設者に無料で提供しているものがほとんどですが、中には口座を開設していなくても閲覧できるレポートもあります。レポートの内容は、そ...
-
FX(外国為替証拠金取引)の為替レートのリアルタイムチャートが閲覧できるWebサイトの一覧です。Webサイトでは、1分足や5分足、30分足、60分足などのさまざまな時間でのチャートを無料で見ることがで...
-
日本の株式上場企業は、東京証券取引所(東証)をはじめとする証券取引所の独自の基準により、業種別に分類されています。例えば、東京証券取引所(東証)の場合、業種分類は「業種別分類に関する取扱い要領」により...
-
証券会社では、実際の株式取引を行う前に、株式取引が体験できるデモトレードサービスを用意している場合があります。デモトレードサービスは、実践の取引画面と同じような環境で、株式の売買を行ったり、株式情報を...
-
株式投資は、10万円、100万円単位のお金が必要というイメージがありますが、実は、わずか1000円から始めることができます。株式投資を1000円から始めるには、いくつかの条件があります。まず、株式の売...
- >> 「情報」を含む用語の索引
- 情報のページへのリンク