情報 生態学的情報

情報

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 00:27 UTC 版)

生態学的情報

環境中で個体が活動するという生態学的事実を、情報概念によって捉える向きもある。

1950年代に米国の心理学者J.J.ギブソンは《刺激情報》《アフォーダンス》という概念を提唱した[2]。情報は人間とは別にいわば“環境”の側に存在し、そこに意味や価値 (アフォーダンス) が存在することを知覚者に知らせる、という考え方であり、《情報》の概念を理解するには《環境》と《人間》の関係を考慮することが重要であるという面から把握されたのである[2]

物事の関係性を記述している文書、またはその状態も情報である。

物理と情報と宇宙

マクスウェルの悪魔という1867年ごろに考案され、20世紀にも議論が行われた思考実験に、情報が関わっている。この実験では、情報とエントロピーの直接的関係が示されている。この思考実験は長らく難問として議論の的となっていたが、1980年代に、系のエントロピーを増大させずに情報を破壊することはできない、との見解に達した。エントロピーの増大とは、一般的にはの発生を意味する。この考え方を論理回路に適用すると、ANDゲートが発生する熱エネルギーの理論的最小値はNOTゲートのそれよりも大きいということになる(ANDゲートは2ビットを入力として1ビットを出力するため、情報が破壊されているが、NOTゲートでは単に反転させるだけで情報が破壊されていないため)。こういった理論は量子コンピュータとも関連する(可逆計算)。

量子もつれ現象によって、2つの粒子が分離して参照されていない状態で、ある種の、光速を超えて「情報」がもたらされる、ように見える現象がある(「相互作用」ではない)。2つの粒子が離れ、一方の粒子が観測されて量子状態が決定されたとすると、自動的に他方の粒子の量子状態も決定される(ベルの不等式の破れ)。

しかし、これを利用して情報を間接的であっても光速を越えて伝達することはできない。アリスとボブが離れた場所に居るものとし、互いにもつれの状態にある量子がそれぞれの手元にあるものとする。アリスがその量子を観測することで、ボブの手元にある量子についての情報も、アリスは得ることができる。しかしその情報にもとづいてボブが手元の量子に何かをするためには、何らかの(古典的な)方法でアリスからその情報を送ってもらう以外に手段は無い。まとめると、観測によって、何か「光速を越えた情報の伝達」のようなことが起きるわけではない。

なお、極端な(しかし検証可能性の無い)仮説としては、我々の宇宙・物理世界が情報処理的な「シミュレーション」である、といったようなものもある(デジタル物理学)。

量子重力理論を実現すると期待されている超弦理論は、ブラックホール熱力学の解析で生まれたホログラフィック原理と関連し、その原理は「全宇宙宇宙の地平面上に描かれた2次元の情報構造と見なせる」という。

また2000年代に入ってからは、量子情報から時空間が創発するという理論的な仮説が立ち上がっている。

情報理論と数学

"Wikipedia" という語のASCIIコードを二進法で表現したもの。二進法は情報のエレクトロニクス化において、ほとんどの場面で使われている。

価値判断を除いた)情報の的側面(情報量)については、コルモゴロフらによる確率論の確立といった背景もあるわけであるが、1948年にシャノンによって形式化され[2]、こんにちでは「情報理論」と呼ばれている。たとえば、天気に「晴れ」「曇り」「雨」「雪」の4つの選択肢があり、いずれの確率も同じ場合は、「晴れ」であることがわかれば、 = 2ビットの情報が得られたことになる、と考えるわけである[2]

このように捉えた「情報」からは、価値的な側面が捨てられてしまっており、すでに「情報」という言葉の日常的な用法とは合致しないが、それとは別のひとつの用法を示している。

しかし、そもそも情報の「価値」とはなんなのか、という議論を追加する必要がある。前述の4種類の天候が、それが天気予報としての情報ならば、情報理論では全体における確率が高いものほど情報量が少なく、確率が低いものほど情報量が多いとして扱う。例えばそれが、沖縄県や静岡県の平野部の天気についてであった場合は、「雪」である可能性は極めて低いため、「雪」の場合の情報量は多い、ということになる。これは日常的な感覚にも合致しているし、可逆データ圧縮の原理として日常的に応用されてもいる。

情報通信

情報理論の背景には「情報通信」がある(シャノンの論文のタイトルは「通信の数学的理論」であった)。


  1. ^ a b c d e f g h i j k l m デジタル大辞泉
  2. ^ a b c d e f g h i j 安西祐一郎「情報」『岩波 哲学・ 思想事典』1998年。 
  3. ^ a b 関連項目: エピジェネティックス細胞記憶
  4. ^ L. Floridi, Information - A Very Short Introduction (Oxford University Press) provides a short overview.
  5. ^ a b 坂本賢三「情報」『世界大百科事典』平凡社、1988年。 
  6. ^ 酒井清 改訳 (1881年11月15日). “佛國歩兵陣中要務實地演習軌典(再版)”. 国立国会図書館デジタルコレクション. 内外兵事新聞局. 2019年8月14日閲覧。
  7. ^ 小野厚夫: 情報という言葉を尋ねて(1). 情報処理学会誌, Vol.46, No.4, pp.347-351, 2005.
  8. ^ 軍事領域における訳語の変遷と原状は、高井三郎『知っておきたい現代軍事用語--解説と使い方』アリアドネ企画、2006年、42-45ページ、「〔情報、情報資料、諜報〕intelligence, information, espionage」参照。
  9. ^ 情報という言葉を尋ねて(1)同(2)同(3)
  10. ^ David B. Dusenbery (1992), Sensory Ecology: How organisms acquire and respond to information, New York: W.H. Freeman & Co, ISBN 978-0716723332 
  11. ^ Stewart, Thomas, (2001). Wealth of Knowledge. Doubleday, New York, NY, 379 p.
  12. ^ 法令用語と判例における「情報」 - 法政大学 白田秀彰
  13. ^ 野口悠紀雄『情報の経済理論』東洋経済新報社、1986年、[要ページ番号]頁。ISBN 4-492-31075-4 
  14. ^ Beynon-Davies P. (2002). Information Systems: an introduction to informatics in Organisations. Palgrave, Basingstoke, UK. ISBN 0-333-96390-3
  15. ^ Beynon-Davies P. (2009). Business Information Systems. Palgrave, Basingstoke. ISBN 978-0-230-20368-6
  16. ^ Witzany G. (2010) Biocommunication and Natural Genome Editing. Springer: Dordrecht
  17. ^ Sandro Nielsen: 'The Effect of Lexicographical Information Costs on Dictionary Making and Use', Lexikos 18/2008, 170-189.
  18. ^ Shu-Kun Lin (2008). 'Gibbs Paradox and the Concepts of Information, Symmetry, Similarity and Their Relationship', Entropy, 10 (1), 1-5.






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