ゼアズ・ア・プレイス
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レコーディング
ビートルズは1963年2月11日に、アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』のレコーディングの大半を、3つのセッションに分けて合計12時間45分かけて行なった。レコーディングはEMIレコーディング・スタジオのスタジオ2で行われ、プロデュースはジョージ・マーティンが手がけ、エンジニアはノーマン・スミスが担当した[14]。当時レノンは風邪をひいていて[14]、セッション中もレノンとマッカートニーは鼻をすすり、咳をしていた[15]。ビートルズは、最初に「ゼアズ・ア・プレイス」を10テイク録音し[14]、その間にリズムギターとベースのパートを作り直した[10]。昼休みの後、レノンはテイク10にハーモニカをオーバー・ダビングして曲を完成させた[14]。レノンは3度オーバー・ダビングを試しており、それらはテイク11から13とナンバリングされ、そのうちテイク13が「ベスト」とされた[16]。
2月25日、マーティンはスミスの協力のもと、EMIレコーディング・スタジオのスタジオ1でアルバムの編集およびミキシングを行なった。2人はテイク13を使用して、「ゼアズ・ア・プレイス」のモノラル・ミックスとステレオ・ミックスを作成し[17]、レノンのハーモニカに重い残響音を加えた[18]。なお、ミキシング作業には、ビートルズのメンバーは立ち会っていない[19]。
リリース・評価
パーロフォンは、1963年3月22日にイギリスでアルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』を発売。「ゼアズ・ア・プレイス」は「蜜の味」と「ツイスト・アンド・シャウト」の間に配置された[20]。同年8月まで「レノン=マッカートニー」という呼称が使用されていなかったことから、作者名は「マッカートニー=レノン」というクレジットになっている[21]。『レコード・ミラー』誌にアルバムのレビューを寄稿したノーマン・ジョプリングは、本作について「切ない」「バッキングに明確なビートがある」とし、「典型的なナンバー。傑出した曲ではないものの、魅力的な曲」と結論づけている[22]。
ヴィージェイ・レコードは、1963年7月22日にアメリカでは初となるビートルズのアルバム『Introducing ... The Beatles』を発売。こちらでも「蜜の味」と「ツイスト・アンド・シャウト」の間に配置された[23]。発売当初は注目されることはなかったが、1963年12月にアメリカでビートルマニアが到達し、ビートルズの人気が急上昇すると、レコード会社は音源の再販を急ぎ[24]、1964年1月27日にアルバムを再発売した[25]。トリー・レコードは、1964年3月2日[注釈 2]にアメリカで「ゼアズ・ア・プレイス」をシングル盤『ツイスト・アンド・シャウト』のB面曲として発売。本作はBillboard Hot 100で最高位74位を記録した[1]。
作家のグリール・マーカスは、本作について「白熱していて、リンゴ・スターのドラミングを中心としたアレンジは息を呑むほど」と評し、本作の音楽性と歌詞が後のビートルズの音楽の成功の雛形になったと主張している[30]。ロックの殿堂のハワード・クレイマーは、本作がビートルズ初期の影響を示していて、エヴァリー・ブラザースのようなハーモニーとブリル・ビルディング式のソングライティングを結びつけていると述べている[31]。ハーツガードは、本作と「ミズリー」について「『プリーズ・プリーズ・ミー』における“2つの眠れる美女”」という認識を示している[5]。ライリーも「『アスク・ミー・ホワイ』や『ドゥ・ユー・ウォント・トゥ・ノウ・ア・シークレット』のようなティーニーボッパーな曲よりも、より成熟している」と述べている[4]。
ハーツガード、クリス・インガム、イアン・マーシャルはそれぞれ、本作の歌詞がアルバムの他の楽曲のそれよりも深く、後のビートルズ、特にレノンのより内省的な構成を先取りしていると述べている[32][33][34]。ケヴィン・ハウレットとルイソンはこの曲がレノンの「自分探しと、そのような知識がもたらす充実感への初期の魅力」を示していると述べている。ハーツガードは、本作の「自由な発想の感性」は、後にレノンが1966年に発表した「アイム・オンリー・スリーピング」や「トゥモロー・ネバー・ノウズ」で展開されたと論じている[32]。作家のジョナサン・グールドは、2007年に出版した著書『Can't Buy Me Love』の中で、本作を「『プリーズ・プリーズ・ミー』のぎこちないリライト」と切り捨て、本作の歌詞を「ひどい」「この曲が後のビートルズの内省的な歌詞の先取りだと見る人は寛大すぎる」と述べている[35]。
複数のライターが本作とザ・ビーチ・ボーイズが1963年に発表した「イン・マイ・ルーム」を比較しており、ライリーはビートルズの楽曲を「はるかに良い」と考えており[4]、音楽評論家のロバート・クリストガウとジョン・ピッカレラも「レノンには自分の部屋以外に行くべき場所があり、ブライアン・ウィルソンよりもそこに行く方法がある」と述べている[36][4]。ライリーは、ビートルズのハーモニーとザ・ビーチ・ボーイズのハーモニーを比較して、「レノンとマッカートニーがザ・ビーチ・ボーイズによる同様の試みの効果を倍増させる」と述べている[4]。ハーツガードも同様にボーカルを称賛しており、曲の冒頭でのハーモニーを「崇高」と表現している[5]。
クレジット
※出典[37](特記を除く)
- ジョン・レノン - ボーカル、リズムギター、ハーモニカ
- ポール・マッカートニー - ボーカル、ベース
- ジョージ・ハリスン - リードギター、バッキング・ボーカル
- リンゴ・スター - ドラム
- ジョージ・マーティン - プロデュース[14]
- ノーマン・スミス - エンジニア[14]
注釈
出典
- ^ a b “The Hot 100 Chart”. Billboard (1964年4月11日). 2020年10月19日閲覧。
- ^ Lewisohn 2000, pp. 353, 364.
- ^ a b c d Everett 2001, p. 143.
- ^ a b c d e Riley 2002, p. 56.
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- ^ Sheff 1981, p. 196.
- ^ MacDonald 2007, p. 65.
- ^ a b Everett 2001, p. 145.
- ^ a b c Miles 1998, p. 95.
- ^ a b c d e Pollack 1991.
- ^ Everett 2001, pp. 116, 127.
- ^ MacDonald 2007, pp. 58, 62, 77, 80, 85.
- ^ Womack 2009, p. 286.
- ^ a b c d e f Lewisohn 1988, p. 24.
- ^ Winn 2008, p. 29.
- ^ Winn 2008, p. 32.
- ^ Lewisohn 1988, p. 28.
- ^ Everett 2001, p. 123.
- ^ Lewisohn 1988, pp. 23, 28.
- ^ Lewisohn 1988, p. 32.
- ^ Lewisohn 1988, pp. 23–24.
- ^ Jopling, Norman (30 March 1963). “Guess What!”. Record Mirror: 12.
- ^ Womack 2009, p. 290.
- ^ Gould 2007, pp. 212–213.
- ^ Womack 2009, pp. 290–291.
- ^ Lewisohn 1988, p. 200.
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- ^ Winn 2008, p. 106.
- ^ Marcus 1980, pp. 186–187.
- ^ Kramer 2009, p. 68.
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- ^ Cott & Doudna 1982, pp. 249–250.
- ^ MacDonald 2005, p. 65.
- ^ Deming, Mark. Flamin' Groovies Now - Flamin' Groovies | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年10月20日閲覧。
- ^ Deming, Mark. Dogs from the Hare That Bit Us - The Dickies | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年10月20日閲覧。
- ^ Rabid, Jack. Flamin' Groovies Now - Flamin' Groovies | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年10月20日閲覧。
- ^ Deming, Mark. B-Sides the Beatles - The Smithereens | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年10月20日閲覧。
- ^ “BBC Radio 2 - 12 Hours to Please Me, Gabrielle Aplin - There's A Place - Please Please Me session”. BBC. 2020年10月20日閲覧。
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