スズメバチ 天敵、捕食者および競合者

スズメバチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/12 02:26 UTC 版)

天敵、捕食者および競合者

スズメバチの天敵は捕食者として人間の他に野鳥ニワトリクマ[13]が挙げられる。またスズメバチを捕食する昆虫にオオカマキリオニヤンマなど大型のトンボクモムシヒキアブシオヤアブ等があるが、これらの昆虫との関係については、捕食/被食双方の記録が存在する。ただし、スズメバチが捕食されるケースは多くはなく、またスズメバチを捕食した記録が多いオニヤンマ等の大型トンボも生息域が限られるため、自然下においてその場面を目撃する例は稀である[注釈 2]。スズメバチが樹液に集まる際には、捕食関係ではないものの、小型の甲虫(カナブン、コクワガタ等)に対しては攻撃を行う一方で、大型の甲虫(カブトムシ、大型のクワガタムシ、カミキリムシ等)に対しては、反撃を受け殺傷される危険もあり、スズメバチの側から接近する例は少ない。とくにカブトムシの活動が全盛となる7月〜8月には、餌場を追い立てられ、好位置を独占される場面が見られる。また、大型甲虫以外にスズメバチを追い払う昆虫にオオムラサキがある。オオムラサキは樹液に集まるため、スズメバチ類と餌場争いをするが、気性の激しいオスは羽を広げてスズメバチを追い立てることが知られている。

本種に寄生する生物として菌類線虫[注釈 3]などがある。生活史を通してみると、捕食寄生者が多い昆虫には珍しい寄生虫であるネジレバネ(スズメバチネジレバネ)等がある。ネジレバネに寄生された働きバチはやや長生きして冬を越すようになり、むしろネジレバネに合わせた生活史をとるようになる[13]

幼虫の捕食寄生者としてはカギバラバチ科のハチが挙げられる。カギバラバチは葉に卵を産み、それを蛾などの幼虫が食べ、さらにそれがスズメバチの巣に持ち帰られて幼虫のエサとなり、寄生が始まる[13]。オオハナノミ科の甲虫にもこの習性がある。

スズメバチ類の巣にはしばしばベッコウハナアブ類の幼虫が寄生し、営巣盛期には排泄物や巣の下部に廃棄された成虫や幼虫の死体を摂食している。これが、晩秋の巣の衰退期になると巣の上部に侵入し、生きた幼虫をも捕食し成長する。また、朽木の中に越冬室を掘って冬眠中の新女王蜂は、しばしばコメツキムシ科の甲虫の幼虫によって捕食される。アリもまた天敵であり、特に営巣初期で働きバチの個体数が少ないときに襲われると巣を放棄することもある。そのため、数匹の女王バチが共同で営巣を始めることもある[13]:58

メイガの仲間(メイガ科シマメイガ亜科)のうち,ギンモンシマメイガ Pyralis regalis とモモイロシマメイガ Hypsopygia mauritialis がスズメバチの巣に寄生する。

の一種であるハチクマは、スズメバチの巣を攻撃し、巣盤を持ち帰り、幼虫とさなぎをひな鳥の餌としている[13]。ハチクマの攻撃を受けたスズメバチは、クモの子を散らすように逃げ惑い、毒針を用いた防御行動を起こさないという(ハチクマの羽毛越しには針が届かず、攻撃が効かない)。

ヒトは、スズメバチを巣ごと駆除したり、食用として幼虫やさなぎや成虫を採集する。クマは巣を破壊し、中の幼虫やさなぎを食い荒らす。

また、同じスズメバチ類の中でも捕食―被食の関係がある。オオスズメバチは生殖個体である雄蜂や、養育期には他のスズメバチの巣を頻繁に攻撃する。また、チャイロスズメバチはキイロスズメバチ等の初期段階のコロニーを襲撃して乗っ取る社会寄生を行う。

スズメバチの天敵

天敵
Bird
ハチクマ Honey buzzard
ムシヒキアブ Assassin fly オニヤンマ Jumbo dragonfly オオカマキリ Giant mantis
ギンモンシマメイガ Snout worm モモイロシマメイガ Snout worm ネジレバネ Twisted-wing parasite センチュウ Roundworm

注釈

  1. ^ Jリーグのチーム「アビスパ福岡」は、これより命名されている。
  2. ^ これはスズメバチに限ったことではなく、大型の捕食生物同士が衝突するケース全般に言えることである。
  3. ^ スズメバチ女王を不妊化させる線虫が発見された。スズメバチの女王を不妊化する寄生線虫を世界で初めて発見(独立行政法人 森林総合研究所)
  4. ^ 特にオオカマキリは危険な相手であり、返り討ちに遭うケースも多い。
  5. ^ コガタスズメバチの方が頭部の凹みがやや深く、また繊毛が若干長い。

出典

  1. ^ 住宅地を襲うスズメバチから身を守るには?”. SAFETY JAPAN BPnet. 2013年7月29日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年9月17日閲覧。
  2. ^ a b c d スズメバチにご注意!”. 福岡県森林林業技術センター. 2013年7月2日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年5月22日閲覧。
  3. ^ 小川原辰雄『人を襲うハチ 4482件の事例からの報告』山と渓谷社、2019年6月、190頁。ISBN 978-4-635-23010-0。NCID BB28243939
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』どうぶつ社、1988年
  5. ^ a b “くまんばち”. 日本語大辞典 (初版 ed.). 講談社. (1989年11月6日). p. 556. ISBN 4-06-121057-2. 
  6. ^ “くまんばち”, 新明解国語辞典 (第4版小型 ed.), 三省堂, (1989年12月10日), p. 345, ISBN 4-385-13142-2 
  7. ^ ミツバチの分類”. みつばち健康科学研究所. 2017年6月10日閲覧。
  8. ^ 寺澤芳雄編「英語語源辞典」、研究社、1997年のwasp, hornetの項
  9. ^ 山中元編著「英語-日本語-ラテン語 語源辞典」、国際語学社、2009年
  10. ^ 理化学研究所広報室 (2005-11-07). “スズメバチに学んだスポーツ飲料VAAM”. 理研ニュース 293: 2-4. https://www.riken.jp/medialibrary/riken/pr/publications/news/2005/rn200511.pdf. 
  11. ^ 相良直彦 1989.
  12. ^ オオスズメバチの「警報フェロモン」の成分を突き止めた、小野正人、MATSUNAGA Waki、環境goo、2010/04/17閲覧
  13. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 『スズメバチ 都会進出と生き残り戦略 増補改訂版』
  14. ^ 『身近なムシのびっくり新常識100』
  15. ^ ハチの豆知識千葉中央博物館
  16. ^ 井上秀雄、萩原健一、中嶋暉躬「パターン分析によるチャイロスズメバチとキイロスズメバチ及びモンスズメバチの毒嚢抽出成分の比較」『衞生動物』第44巻第4号、日本衛生動物学会、1993年12月15日、 307-313頁、 NAID 110003818256
  17. ^ 学んで安心 スズメバチ
  18. ^ 特願2015-221379、特開2017-088548、スズメバチ科ハチ忌避剤、金ら
  19. ^ スズメバチ!!どう対処? 自治体で異なる「対応」”. 産経ニュース. 産経新聞社 (2017年9月20日). 2019年5月23日閲覧。
  20. ^ 鮫川で民家焼く スズメバチの巣駆除、火が燃え移る”. みんゆうNet. 福島民友新聞社 (2013年9月8日). 2013年9月14日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年9月8日閲覧。
  21. ^ 蓬田正志 (2013年9月8日). “火災:スズメバチ駆除、住宅の一部焼失??鮫川 /福島”. 毎日jp. 毎日新聞社. 2013年9月14日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年9月8日閲覧。
  22. ^ 「巣撃滅」は強力すぎる? 対スズメバチ新商品巡り騒動”. 朝日新聞 (2020年2月4日). 2020年2月6日閲覧。
  23. ^ a b c d e f ハチに刺されたときの応急処置”. 豊島区 (2015年2月25日). 2017年7月4日閲覧。
  24. ^ アレルギー対策について (PDF) 厚生労働省
  25. ^ わが国における蜂刺症 The Topic of This Month Vol.18 No.8(No.210)国立感染症研究所
  26. ^ 平田博国; 石井芳樹 「蜂毒アレルギーの臨床」 『Dokkyo Journal of Medical Sciences』 41巻3号、295–306頁、2014年10月25日。ISSN 03855023http://id.nii.ac.jp/1199/00001237/2019年4月29日閲覧 
  27. ^ 大利昌久、樋山御理男「ヒメスズメバチ Vespa tropica の刺傷によるアナフィラキシーショックの一例」『衞生動物』第28巻第3号、日本衛生動物学会、1977年9月15日、 281-284頁、 NAID 110003815418
  28. ^ ハチに刺されたときの応急処置”. 北海道オホーツク総合振興局 (2014年6月25日). 2017年7月4日閲覧。
  29. ^ 凶暴なオオスズメバチを虫網で捕まえてはちみつ漬をつくる! ただし、「虫網での捕獲は危険」との注意書きがある。
  30. ^ スズメバチも蜂蜜をつくる?
  31. ^ スズメバチ酒製造法
  32. ^ 生きたスズメバチで作った焼酎を飲んでみた→塩っぽい味がした→「その毒成分です」
  33. ^ 串原にへぼミュージアム 恵那農高生が整備”. 岐阜新聞Web. 岐阜新聞社 (2017年11月2日). 2017年11月7日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2017年11月2日閲覧。







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