スズメバチ 生活史

スズメバチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/12 02:26 UTC 版)

生活史

性別や女王蜂、働き蜂の決定は基本的にはミツバチと同じようなものである。ハチ目の共通の性質として未受精卵はオス蜂に、受精卵はメス蜂になる。従って、女王蜂が精嚢から精子を取り出す、もしくは取り出さないによって性別を決定している。働きバチはすべて雌である。

また、女王蜂になる卵と働き蜂になる卵は同じで、幼虫時代に食べさせられた餌によって地位が決定される。

女王蜂は8-12月頃に羽化すると(種により差がある[4]:54)、終齢幼虫から栄養液を十分摂取した後に巣を離れる。雄蜂と交尾した後は一切摂食せず、朽木などに越冬室を掘り、その中で冬眠に入る。

翌年の春、冬眠から覚めた女王蜂は営巣を開始する。巣材収集や幼虫の餌の狩猟は主に働き蜂の役割であるが、働き蜂が誕生するまでは女王蜂が単独で行い、また働き蜂誕生後もある程度の規模に巣が大きくなるまでは、働き蜂らと共に巣の維持や狩猟をこなす。

働き蜂は7月頃から羽化を始め、9月から10月にかけて集団の個体数が最大になる。種や気候によっても異なるが、例えばオオスズメバチでは一つの巣で数百匹規模にまで増える。働き蜂の個体数が最大になる少し前から、次世代女王蜂候補の育成が始まる[13]:36。なお、巣の女王蜂が死ぬと働き蜂が代わりに産卵するようになるが、働き蜂は未受精なのでオスしか生まれず、オスは働き蜂にならないためコロニーは遠からず滅びる[4]:196。次世代女王蜂候補は結婚のため巣を離れるまで働かないのが基本だが、何らかの原因で働き蜂が減少すると、働き蜂として働き始める。この場合、女王として蓄えた脂肪を消費してしまうため、オスが交尾しようとしなくなり、女王となることはなくなる[4]:208

雄蜂は次世代女王蜂候補より少し早い9-11月頃に生まれる。雄蜂は子孫を残すためだけの存在であり、全く働かない。ただし、同じスズメバチ科のアシナガバチの仲間では幼虫に餌を運ぶ等の行動が痕跡的にだが見られることがある。

繁殖期になると若い女王蜂候補が巣から飛び立ち、雄蜂も交尾のために一斉にその後を追う。大半は天敵に捕食されるか力尽き、交尾に成功するのはこの中の極一部である。無事に交尾に成功したオスも間もなく死亡し短い生涯を終える。

元の女王蜂はほとんどの場合女王蜂候補の巣立ち前に死に、働き蜂と雄蜂は基本的には越冬しない。つまり、越冬するのは女王蜂候補のみである。女王蜂候補は朽木の中などで越冬する[4]:42。例外としてネジレバネの寄生した働き蜂は、労務に加担せず、越冬も行う。


注釈

  1. ^ Jリーグのチーム「アビスパ福岡」は、これより命名されている。
  2. ^ これはスズメバチに限ったことではなく、大型の捕食生物同士が衝突するケース全般に言えることである。
  3. ^ スズメバチ女王を不妊化させる線虫が発見された。スズメバチの女王を不妊化する寄生線虫を世界で初めて発見(独立行政法人 森林総合研究所)
  4. ^ 特にオオカマキリは危険な相手であり、返り討ちに遭うケースも多い。
  5. ^ コガタスズメバチの方が頭部の凹みがやや深く、また繊毛が若干長い。

出典

  1. ^ 住宅地を襲うスズメバチから身を守るには?”. SAFETY JAPAN BPnet. 2013年7月29日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年9月17日閲覧。
  2. ^ a b c d スズメバチにご注意!”. 福岡県森林林業技術センター. 2013年7月2日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年5月22日閲覧。
  3. ^ 小川原辰雄『人を襲うハチ 4482件の事例からの報告』山と渓谷社、2019年6月、190頁。ISBN 978-4-635-23010-0。NCID BB28243939
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 松浦誠『社会性ハチの不思議な社会』どうぶつ社、1988年
  5. ^ a b “くまんばち”. 日本語大辞典 (初版 ed.). 講談社. (1989年11月6日). p. 556. ISBN 4-06-121057-2. 
  6. ^ “くまんばち”, 新明解国語辞典 (第4版小型 ed.), 三省堂, (1989年12月10日), p. 345, ISBN 4-385-13142-2 
  7. ^ ミツバチの分類”. みつばち健康科学研究所. 2017年6月10日閲覧。
  8. ^ 寺澤芳雄編「英語語源辞典」、研究社、1997年のwasp, hornetの項
  9. ^ 山中元編著「英語-日本語-ラテン語 語源辞典」、国際語学社、2009年
  10. ^ 理化学研究所広報室 (2005-11-07). “スズメバチに学んだスポーツ飲料VAAM”. 理研ニュース 293: 2-4. https://www.riken.jp/medialibrary/riken/pr/publications/news/2005/rn200511.pdf. 
  11. ^ 相良直彦 1989.
  12. ^ オオスズメバチの「警報フェロモン」の成分を突き止めた、小野正人、MATSUNAGA Waki、環境goo、2010/04/17閲覧
  13. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w 『スズメバチ 都会進出と生き残り戦略 増補改訂版』
  14. ^ 『身近なムシのびっくり新常識100』
  15. ^ ハチの豆知識千葉中央博物館
  16. ^ 井上秀雄、萩原健一、中嶋暉躬「パターン分析によるチャイロスズメバチとキイロスズメバチ及びモンスズメバチの毒嚢抽出成分の比較」『衞生動物』第44巻第4号、日本衛生動物学会、1993年12月15日、 307-313頁、 NAID 110003818256
  17. ^ 学んで安心 スズメバチ
  18. ^ 特願2015-221379、特開2017-088548、スズメバチ科ハチ忌避剤、金ら
  19. ^ スズメバチ!!どう対処? 自治体で異なる「対応」”. 産経ニュース. 産経新聞社 (2017年9月20日). 2019年5月23日閲覧。
  20. ^ 鮫川で民家焼く スズメバチの巣駆除、火が燃え移る”. みんゆうNet. 福島民友新聞社 (2013年9月8日). 2013年9月14日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2013年9月8日閲覧。
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  22. ^ 「巣撃滅」は強力すぎる? 対スズメバチ新商品巡り騒動”. 朝日新聞 (2020年2月4日). 2020年2月6日閲覧。
  23. ^ a b c d e f ハチに刺されたときの応急処置”. 豊島区 (2015年2月25日). 2017年7月4日閲覧。
  24. ^ アレルギー対策について (PDF) 厚生労働省
  25. ^ わが国における蜂刺症 The Topic of This Month Vol.18 No.8(No.210)国立感染症研究所
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  28. ^ ハチに刺されたときの応急処置”. 北海道オホーツク総合振興局 (2014年6月25日). 2017年7月4日閲覧。
  29. ^ 凶暴なオオスズメバチを虫網で捕まえてはちみつ漬をつくる! ただし、「虫網での捕獲は危険」との注意書きがある。
  30. ^ スズメバチも蜂蜜をつくる?
  31. ^ スズメバチ酒製造法
  32. ^ 生きたスズメバチで作った焼酎を飲んでみた→塩っぽい味がした→「その毒成分です」
  33. ^ 串原にへぼミュージアム 恵那農高生が整備”. 岐阜新聞Web. 岐阜新聞社 (2017年11月2日). 2017年11月7日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2017年11月2日閲覧。






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