ジクロフェナク 禁忌・注意

ジクロフェナク

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/29 23:02 UTC 版)

禁忌・注意

禁忌

以下の場合は原則用いてはならない。ただし、医師薬剤師の判断で使用される場合もある。

注意

以下の場合は使用に際して注意が必要である。

副作用

ジクロフェナクはよく用いられている薬であるが、いくつか副作用がある。長期間服用した場合は20%の患者に副作用が見られ、2%の患者は胃腸障害のため、投与中止しなければならない[要出典]

報告されている副作用

一般的な副作用は次の通りである:吐き気、消化不良、消化器潰瘍・出血、肝臓酵素増大、下痢、ふらつき、塩および体液停留、高血圧

まれな副作用は次の通りである:食道潰瘍、心不全高カリウム血症、腎臓障害、昏迷気管支痙攣発疹

心臓

2004年、選択的COX-2阻害剤ロフェコキシブによって心臓発作が起こったため、ジクロフェナクを含む他のNSAIDsの薬剤も同様の副作用を疑われた。2006年4月までの論文と報告を分析した結果、非投与者に比べて心臓病のリスクが1.63倍になることが判明した[7]。しかし、このリスクより薬が持つ利益の方が大きいため、状況に応じて投与されている。

74,838人のNSAIDs、もしくはコキシブの投与を受けている患者を調査した結果、ジクロフェナクによる心臓病のリスクが上昇しないことが2006年5月に報告された[8]

2006年9月、アメリカ食品医薬品局(FDA)のメディカルオフィサーにより、ジクロフェナクが心筋梗塞のリスクを上昇させると結論付けられた[9]

胃腸

ジクロフェナクは胃や腸に対してダメージを与え、NSAID潰瘍を引き起こす恐れがある。このような症状が現れた場合は、ただちに使用中止すること。

肝臓

肝臓に対する副作用がごくまれに起こる場合があるものの、通常は可逆的である。肝炎が突然発症し、死亡する可能性もごくわずかにある。長期間投与する場合は、肝機能の変化を調べ続けなければならない。ただし、短期間しか使用しない場合はあまり影響しない。

腎臓

パキスタンで、ジクロフェナクに曝露された動物の死体を食べたハゲワシが、急性腎不全を起こして死亡した。

NSAIDsは、薬物に敏感なヒト・動物の腎臓におけるプロスタグランジン合成によって起こる腎臓への影響に関係している[10]。腎臓ではCOX-1とCOX-2の両方が存在するため、選択的COX-2阻害剤を使ってもこの影響が出てしまう。そのため、薬物に敏感なヒトは選択的COX-2阻害剤を使う場合でも予防措置を取っておかなければならない[10]

その他

ごくまれに骨髄への影響(白血球減少無顆粒球症血小板減少再生不良性貧血など)がある。これらは発見が遅れれば、後遺症や命に関わる恐れがある。

環境問題

動物へのジクロフェナクの使用により、インド亜大陸の95%の地域ではハゲワシの個体数が減少した[11]。これは副作用の腎不全によるものである。ハゲワシは、獣医によってジクロフェナクが投与された家畜の死体を食べ、家畜にジクロフェナクが蓄積していたため、これを食べたハゲワシが死亡した。2005年3月、インド政府はジクロフェナクを段階的に排除することを発表した[12]メロキシカムは高価ではあるが、より安全な代用品として候補に挙がっている[13]

インド亜大陸で10年間に数千万羽のハゲワシが死亡したが、これは同時に人間の健康も脅かしていることを意味している[13]。ハゲワシの数が減少したことで野犬の数が各地で増加した。イヌ狂犬病のキャリアであり、ヒトへも狂犬病を感染させるため危険視されている。ハゲワシの数が大幅に減少したため、絶滅危惧種に指定されている[13]。なお、パンジャーブではジクロフェナクの使用が禁止されたが、徐々にハゲワシの数が回復しつつある。


  1. ^ https://www.hisamitsu.co.jp/medical/data/zicthoru_t.pdf
  2. ^ 商品一覧 : ジクロフェナク KEGG: Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes
  3. ^ 添付文書 ジクロフェナック点眼液0.1%
  4. ^ 大久保調教師の処分取り消し 管理馬が残留薬物摂取の可能性―JRA”. 時事通信 (2021年3月5日). 2021年3月6日閲覧。
  5. ^ Mazumdar K, Dutta NK, Dastidar SG, Motohashi N, Shirataki Y (2006). “Diclofenac in the management of E. coli urinary tract infections”. In Vivo 20 (5): 613–9. PMID 17091768. 
  6. ^ 子どものインフル解熱剤に注意 重い脳症誘発の仕組み解明(中日新聞)
  7. ^ Kearney P, Baigent C, Godwin J, Halls H, Emberson J, Patrono C (2006). “Do selective cyclo-oxygenase-2 inhibitors and traditional non-steroidal anti-inflammatory drugs increase the risk of atherothrombosis? Meta-analysis of randomised trials.”. BMJ 332 (7553): 1302-8. PMID 16740558. 
  8. ^ Solomon D, Avorn J, Stürmer T, Glynn R, Mogun H, Schneeweiss S (2006). “Cardiovascular outcomes in new users of coxibs and nonsteroidal antiinflammatory drugs: high-risk subgroups and time course of risk.”. Arthritis Rheum 54 (5): 1378-89. PMID 16645966. 
  9. ^ Graham D (2006). “COX-2 inhibitors, other NSAIDs, and cardiovascular risk: the seduction of common sense”. JAMA 296 (13): 1653-6. doi:10.1001/jama.296.13.jed60058. PMID 16968830. http://jama.ama-assn.org/cgi/content/full/296/13/1653. 
  10. ^ a b Brater DC (2002). “Renal effects of cyclooxygyenase-2-selective inhibitors”. J Pain Symptom Manage 23 (4 Suppl): S15-20; discussion S21-3. PMID 11992745. 
  11. ^ Oaks JL, Gilbert M, Virani MZ, Watson RT, Meteyer CU, Rideout BA, Shivaprasad HL, Ahmed S, Chaudhry MJ, Arshad M, Mahmood S, Ali A, Khan AA (2004). “Diclofenac residues as the cause of vulture population decline in Pakistan”. Nature 427 (6975): 630-3. PMID 14745453. 
  12. ^ "Saving the Vultures from Extiction" (Press release).”. Press Information Bureau, Government of India. (2005年5月16日). 2005年11月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2006年5月12日閲覧。
  13. ^ a b c Swan G, Naidoo V, Cuthbert R, Green RE, Pain DJ, Swarup D, Prakash V, Taggart M, Bekker L, Das D, Diekmann J, Diekmann M, Killian E, Meharg A, Patra RC, Saini M, Wolter K (2006). “Removing the threat of diclofenac to critically endangered Asian vultures”. PLoS Biol 4 (3): e66. PMID 16435886. 


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