イボダイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/12 02:33 UTC 版)
名称
日本での地方名は、エボダイ(東京都・神奈川県・静岡県)、メダイ(伊豆諸島)、アゴナシ(銚子)、ヨヨシ(宮津)、ウオゼ(大阪府)、ウボゼ(関西・四国)、ボウゼ(徳島県)、シズ(愛媛県)、アマギ(八幡浜)、バカ(高知県)、クラゲウオ(兵庫県・広島県の一部)、シス(広島市周辺)、ナッカン(下関)、シュス(下関)、モチノウオ(福岡市)、モチウオ(長崎県)、ギチ(熊本県)、アメタ(大分県)、コタ(鹿児島県)など多数ある。
漢名は「刺鯧」(ツーチャン)である。地方名には、䖳鲳、肉魚、瓜核、瓜核鯧(クワワーッチョン、香港)、肉鯽仔(バッチッアー、台湾)、南鯧、玉昌、海仓などがある。
英語名は、パシフィック・ラダーフィッシュ (Pacific rudderfish)[2]、ジャパニーズ・バターフィッシュ (Japanese butterfish)[注釈 1]、wart perch のほか、「瓜核」を直訳したメロンシード (Melon seed) などがある。
特徴
成魚は全長30cmに達するが、漁獲されるのは20cm前後のものが多い。体は楕円形で側扁し、体高が高い。口吻は尖らず、頭部は丸い。体色は鈍い光沢のある銀灰色であり、鰓蓋の上に褐色の斑点が1つある。和名「イボダイ」は、この斑点を灸の跡(いぼお)に見立てたものである。
全身は細かい円鱗に覆われ、側線鱗数は55—65枚に達する。鱗は剥がれやすいが、体表からは多量の粘液が分泌される。背鰭は1基だけで、棘条はあまり発達しない。側線は体側を湾曲して走り、側と別の葉脈状の線が側線の下にある。食道の左右に食道嚢がある。
生態
男鹿半島・松島湾以南の日本列島沿岸、朝鮮半島、台湾、東シナ海まで、東アジア沿岸の温暖な海域に分布する。特に東シナ海や南日本沿岸で個体数が多い。イボダイ科としては分布が狭い部類に入る。
やや深い海の海底付近に多く生息する。食性は肉食性であって、クラゲ類、サルパ類、甲殻類など浮遊性・遊泳性の小動物を捕食する。
産卵期は4—8月(盛期5月)で、東シナ海では南部の大陸沿岸に産卵場があると推定されている。卵は直径約1mmの分離浮性卵である。孵化した稚魚は、近縁のイボダイ科・エボシダイ科魚類と同じく、海洋表層を遊泳するクラゲ類の触手付近で生活し、敵から身を守る。成長すると海底付近に移り、1年で約13cm、2年で18cm、3年で20cmほどに成長する。
注釈
- ^ バターフィッシュと呼ばれる魚は、他にもマナガツオ科のアメリカン・バターフィッシュ(American butterfish, ニシマナガツオ)や同じくイボダイ科のアンタークティック・バターフィッシュ(Antarctic butterfish, ブルーノーズワレフー)などがある。
出典
- ^ 『難訓辞典 中山泰昌編』東京堂出版、1956年。
- ^ Temminck and Schlegel, 1844.
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