イボタ蝋とは? わかりやすく解説

イボタ蝋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/13 09:50 UTC 版)

イボタ蝋(イボタろう、英語:Chinese wax)または会津蝋(あいづろう)は、白色から黄色がかった白色で、ゼラチン質、結晶性、水に不溶な物質である。ある種の昆虫から分泌されるから得られる。鯨蝋に似ているが、より硬く、より脆く、より融点が高い。

生成方法

中国インドに生息するツノロウムシと、中国や日本で見られるイボタロウムシという2種のカイガラムシが生産する。これらの昆虫は、イボタノキ属の枝の上に分泌物を堆積させる。昆虫と堆積物を収穫し、水で煮て、蝋を抽出する。底に沈んだ昆虫は、の餌に利用する[1]

ハーバード・ビアズリーは、1932年11月の『ネイチャー』誌に掲載された論文に、以下のように書いている[2]

程の大きさの白い昆虫のオスの幼虫は、混じりけがなく輝く蝋の繭を作る。この昆虫の成長する木は、西昌市の谷にあり、そこでは、3月頃には、木の枝の上に、数えきれないほどの昆虫を含む、丸く茶色い繭を見ることができる。これらがその場所に留まると、餌が合わないため、最終的には死んでしまう。他の種類の植物に移動することができると、メスは卵を産み、幼虫は成長し、オスの幼虫は輝く宮殿を作って、蝋農家に利益をもたらす。そのため、3月下旬には、昆虫はアブラナの葉に縛られ、2つの大きな竹の籠に詰められたヒョウタンのような形の容器に入れられる。真昼の暑さに晒されるとさなぎの段階がすぐに終わってしまうため、その籠を肩にかけて、岩道や山を越え、夜間に農場のある地区まで運ぶ。昆虫の入った籠は農家に配布され、農家は、それをすぐに餌となる植物(通常は、高さ5-6フィートのマルバアオダモ)の上に置く。葉で作った小さな袋の中で昆虫を枝に結び、成虫が逃げ道を見つけられるように、尖っていない針で袋に穴を開ける。最初に出てきた際には、すぐに葉まで這いより、そこに2週間近く留まる。この後は散らばり、枝に沿って這うことを始める。6月初旬頃には、メスは卵を産み始め、8月には蝋の繭が形成されて、全ての枝と茎を覆う。9月初めには、全ての木は文字通り、4分の1程度の厚さの、混じりけのない白い蝋の層で覆われる。農家はそれを枝からこすり落とし、市場に出す準備をする。

利用

主にろうそく、寺院の絵画やその他の宗教儀式に関連する物品の製造、また家具を磨いて艶を出すために用いられる。さらに、掛軸の裏を磨いて艶を出すのにも、石と一緒に用いられる。

中国では、薬用としても使用され、内服薬として、しわがれ声、痛み、寄生虫不安骨折等の治療に用いられる。外用薬として、傷治療用の軟膏として用いられる。日本でも、イボタノキの蝋を飲むと咳が止まるという伝統的民間療法が長野県阿智村、喬木村などの周辺に残っている[3]

日本では、会津地方が主産地であったため、会津蝋とも呼ばれ、碁石貝殻を磨くのにも用いられる。

出典

  1. ^ Chinese wax - insect secretion”. 2022年8月20日閲覧。
  2. ^ Herbert Beardsley, Nature Magazine article from November issue 1932
  3. ^ 『信州の民間薬』全212頁中79頁医療タイムス社昭和46年12月10日発行信濃生薬研究会林兼道編集

イボタ蝋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/06 03:04 UTC 版)

」の記事における「イボタ蝋」の解説

カイガラムシ一種イボタロウムシイボタノキなどモクセイ科樹木寄生する)の雄幼虫イボタノキ周囲群生して分泌し棒状塊より得られる固く融点が高い。木製品生糸つや出し、襖や障子滑りよくするためなど。掛軸巻物の裏側にすり込んで巻き取りやすくしたり微粉末として古いSPレコード再生助けるためにも用いられる

※この「イボタ蝋」の解説は、「蝋」の解説の一部です。
「イボタ蝋」を含む「蝋」の記事については、「蝋」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「イボタ蝋」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「イボタ蝋」の関連用語

イボタ蝋のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



イボタ蝋のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのイボタ蝋 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの蝋 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS