Ndc80複合体の役割
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/24 06:08 UTC 版)
キネトコアに結合した微小管は特別な特徴を示す。遊離している微小管と比較して、キネトコア微小管は低温による脱重合、高い静水圧、カルシウムへの曝露に対してかなり高い抵抗性を示す。さらに、キネトコア微小管は遊離(+)端を持つ星状体微小管や紡錘体微小管よりも再生がかなり遅いが、レーザーによってキネトコアから解離した場合には迅速に脱重合する。 ダイニンやCENP-Eはキネトコア微小管の形成に必要不可欠ではなく、キネトコア微小管の固定を担っているのはNdc80複合体であることが酵母での先駆的研究により明らかにされている。出芽酵母では、Ndc80複合体は、Ndc80p(英語版)、Nuf2p(英語版)、Spc24p(英語版)、Spc25pの4つの構成要素からなる。この複合体のいずれかの構成要素を欠失した変異体では、キネトコアの構造が完全に失われるわけではないが、キネトコアと微小管の連結が失われる。キネトコアの構造が失われる変異体(酵母のNdc10の変異体など)では、微小管との連結とスピンドルチェックポイントの活性化の双方が失われる。これは、キネトコアがスピンドルチェックポイント構成要素が組み立てられるプラットフォームとして機能しているためであると考えられる。 Ndc80複合体は高度に保存されており、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe、線虫Caenorhabditis elegans、ツメガエルXenopus、ニワトリ、ヒトでも同定されている。Ndc80pのヒトホモログであるHec1の研究からは、適切な染色体の集合と有糸分裂の進行に重要であること、そしてコヒーシンやコンデンシン複合体の構成要素と相互作用することが示されている。 さまざまな研究によって、Ndc80複合体はキネトコア-微小管間の固定の安定化に必要不可欠であり、高等真核生物での適切な染色体集合の確立へ関与していることが示唆されている、セントロメアでの張力の発生の補助に必要であることが示されている。RNAiや遺伝子ノックアウト、抗体のマイクロインジェクションを用いてNdc80の機能不全となった細胞では、異常に長い紡錘体が形成され、姉妹キネトコア間の張力が失われ、染色体は中期板に集合することができなくなり、キネトコア微小管の結合はほとんど見られなくなる。 Ndc80複合体が直接微小管と結合し、キネトコア-微小管間相互作用面の核となる構成要素を形成していることを支持する、さまざまな強力な証拠が存在する。しかしながら、堅固なキネトコア-微小管間相互作用の形成にはさらなるタンパク質の機能が必要である可能性がある。酵母では、この連結にはDam1-DASH-DDD複合体の存在が必要である。この複合体の一部のメンバーは微小管に直接結合するが、他の因子はNdc80複合体に結合する。このことは、Dam1-DASH-DDD複合体はキネトコアと微小管の間の必要不可欠なアダプターである可能性を意味している。しかしながら、動物では対応する複合体は同定されておらず、この疑問に対して現在精力的な研究が行われている。
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