MPZ 2009/1241に関する議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 07:15 UTC 版)
「カリョシントリプス」の記事における「MPZ 2009/1241に関する議論」の解説
スペインの堆積累層 Valdemiedes Formation(Murero biota)から発見された化石標本 MPZ 2009/1241 は、Gámez et al. 2011 に葉足動物の前半身と考えられ、新属(ムレロポディア Mureropodia)新種の葉足動物 Mureropodia apae として命名された。しかしこの見解は Stephen & Daley 2017 によって否定され始め、MPZ 2009/1241 は本属由来の前部付属肢の先端6節と見直され(葉足=内突起、頭部と吻=前部付属肢の先端)、本属の新種の可能性をもつ Caryosyntrips cf. camurus として再記載された。 一方で、Gámez et al. 2011 の著者をも含んだ Gámez et al. 2017 は、Stephen & Daley 2017 に対して反論を挙げた。本文献は Gámez et al. 2011 通りに MPZ 2009/1241 を葉足動物と見なし、Stephen & Daley 2017 は、MPZ 2009/1241 の多くの葉足動物的形質、例えば筋組織・触角・突出した吻・鉤爪らしき痕跡を無視していると批判した。同時にカリョシントリプスの特異性(ラディオドンタ類にしては尋常でない節間膜とされる部位の幅狭さや左右に嚙み合わせた保存状態)を取り上げて、それに基づいてカリョシントリプスはラディオドンタ類ではなく、むしろカイメン、ヒオリテスやChancelloriidae科などの他の動物であるとの説も提唱した。 この反発に対して、Stephen & Daley 2017 の著者を含んだ Pates et al. 2018 は幾つかの証拠を補足し、Gámez et al. 2017 の見解を否定した。Gámez et al. 2011 と Gámez et al. 2017 に筋組織や触角と思われた痕跡は化石の周りの石基までにも伸びており、該当化石に属しない非生物的な痕跡であることを示した。吻と思われた前部付属肢の先端は葉足動物の吻との類似性が低く、しかも突出した吻は葉足動物の中でオニコディクティオンなどごく一部の種類のみから知られ、葉足動物において一般的な特徴ではない。他の脚の短い葉足動物に比べても、"体"(=前部付属肢の肢節部分)の直径と"葉足"(内突起)の長さの比率は特異的すぎる。"葉足"(内突起)の先にある爪と思われた痕跡も化石の処理過程による痕跡で、葉足動物の鉤爪として一般的な炭素由来の濃い色すら持たない。こうした MPZ 2009/1241 の特徴の多くが葉足動物的ではないと指摘した。同時に、カリョシントリプスはラディオドンタ類であるとこを支持する証拠(カリョシントリプスとカイメン/ヒオリテス/Chancelloriidae類の類似性は大まかな輪郭に過ぎないこと、幅狭い節間膜と左右に嚙み合わせた保存状態は、カリョシントリプス以外の少なからぬラディオドンタ類の前部付属肢にも見られることなど)をもいくつか追記した。
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