塩素殺菌 [Chlorine sterilization,Chlorination]
塩素は一般細菌やウイルスの殺菌・不活化に比較的低濃度(塩素量:0.1ppm)で有効であるが、芽胞を形成する細菌やかびに対しては高濃度で長時間処理が必要である。上水道では注入塩素が10分後に殺菌力をもつ量として0.1-0.2ppm以上になるように規定されている。
一般に無機塩素の場合は塩素と水で生じる次亜塩素酸イオン、または次亜塩素酸塩の分解で生じる酸素の酸化作用によって微生物が殺滅される。しかし、その効果は水中の溶存物質や浮遊物、温度、pHなどの環境要因によって左右される。したがって、溶存塩素量が多いほど殺菌効果が強い。一方、水に対する溶解度が高いため、残留塩素による臭気や共存する有機物によっては発癌性のトリクロロメタン(trichloromethane)が生じることなどが問題である。また、誤って塩素系殺菌剤と合成洗剤を併用した場合には、致死性の有毒ガスが発生することがあるので充分注意する必要がある。これらの欠点を補う殺菌法として近年用いられるようになったオゾン殺菌がある。
塩素化
(Chlorination から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/26 08:44 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動塩素化(えんそか、chlorination)とは化合物に塩素原子を導入する化学反応のことをいう。文脈によっては塩素化反応を使用した実験手法・技術のことを指す場合もある。
アルコールの塩素化
アルコールの水酸基は種々の方法でクロロ基に置換することができる。
塩化水素を用いる方法
塩化物イオンは求核性が他のハロゲンと比べて乏しいので、一級アルコールや二級アルコールと塩化水素の反応で対応する塩化アルキルを得ることはできない。これは臭化水素が第一級アルコールや第二級アルコールと反応して対応する臭化アルキルを与えるのと対照的である。
三級アルコールはSN1反応により対応する塩化アルキルへと変換される。
- (CH3)3C-OH + HCl → (CH3)3C-Cl + H2O
塩化チオニルを用いる方法
アルコールは塩化チオニルとの反応により対応する塩化アルキルを与える。副生成物である二酸化硫黄と塩化水素はいずれも室温で気体であることから、容易に系から除くことができる。この方法は比較的温和な条件で進行するため実験室では常用されるが、原子効率(アトムエコノミー)が低いため工業的には他の方法が用いられることが多い。
アッペル反応
トリフェニルホスフィンと四塩化炭素の作用により、アルコール (R-OH) を塩化アルキル (R-Cl) に変換する手法。穏和な条件で有機化合物にハロゲン原子を導入できる手法であり、一級、二級、そしてほとんどの第三級アルコールに対して適用できる。
オレフィンの塩素化
オレフィンへの塩化水素付加はマルコニコフ則に従った生成物を得ることができる。
カルボン酸塩化物の合成
カルボン酸塩化物はカルボン酸と塩化チオニルの反応で合成される。このとき、触媒量のN,N-ジメチルホルムアミドを加えると反応が速やかに進行する。
- R-COOH + SOCl2 → R-COCl + SO2 + HCl
三塩化リンや五塩化リン、塩化スルフリルを用いて合成することもできる。
- R-COOH + PCl5 → R-COCl + POCl3 + HCl
塩化オキサリルを使う方法もよく使われる。
- R-COOH + (COCl)2 → R-COCl + CO + CO2 + HCl
関連項目
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