BWRの自己制御性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 10:21 UTC 版)
「沸騰水型原子炉」の記事における「BWRの自己制御性」の解説
BWRにおいて、何らかの原因で核分裂反応が増大すると、それに伴って発生する熱エネルギーも増大する。BWRの冷却材は原子炉内で沸騰しているので、増大する熱エネルギーに比例して冷却材中の蒸気の泡(ボイド)の量も増えてゆく。これは結果として冷却材の密度を低下させるが、軽水炉の冷却材は減速材でもあるため、冷却材の密度が減ると減速される中性子が少なくなり、そのため核分裂反応が減少していく。逆に核分裂反応が減少すると熱エネルギーが減って蒸気泡が減り、減速される中性子量が増えていくため、核分裂反応が増えていく。このような現象は負の反応度係数によるフィードバックといい、BWR固有の自己制御性であり、核分裂反応の極端な増減を自ら抑えている。 BWRでは、この自己制御性を利用して原子炉出力の短期的な制御を行っている。すなわち原子炉出力を上げたい時は冷却材再循環ポンプの出力を上げる。すると原子炉内を循環する冷却材の流量が増え、運び出される熱量が多くなる結果として蒸気泡の量が少なくなり、原子炉出力が上昇する。逆に原子炉出力を下げたい時は再循環ポンプの出力を下げると蒸気泡が多くなって原子炉出力が低下する。 ちなみに、負荷が増えると原子炉の温度が下がり、泡が減るため核分裂が増加するので、負荷追従運転が可能であるが、日本国内では行われていない。 尚、主蒸気隔離弁が誤閉鎖し、主蒸気の流れが遮断され原子炉圧力が急上昇した場合等には蒸気の流出が減るため原子炉圧力が上昇し、ボイドがつぶれて正の反応度が添加され中性子束が上昇する事がある。 しかし、実際の原子炉は、正の反応度係数によるフィードバックの影響を抑制し、最大出力時に主蒸気隔離弁を急閉しても暴走しないよう設計されている。具体的には主蒸気隔離弁が10%位置まで閉鎖されると、原子炉保護系が原子炉の自動停止信号を発し、原子炉がスクラム停止するようになっている。また、主蒸気管のヘッダーにこの急な圧力上昇を防ぐため逃し安全弁が数多く取り付けられている。
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