BETの吸着等温式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/30 03:14 UTC 版)
ラングミュアの吸着等温式では1つの吸着サイトは1つの吸着質分子としか結合せず表面に単層しか生成しないという仮定があったが、実際には単層ではなく、その上にさらに数層分の分子を吸着しうる。1938年にこの点を拡張した吸着等温式がスティーブン・ブルナウアー(it:Stephen Brunauer)、ポール・エメット、エドワード・テラーによって導出された。この式を各人の名前の頭文字をとってBETの吸着等温式という。 BETの吸着等温式においては M − S n + S ↽ − − ⇀ M − S n + 1 {\displaystyle {\ce {{M-S_{\mathit {n}}}+S<=>{M-S_{{\mathit {n}}+1}}}}} の化学平衡を考慮する。そして一層目(n = 0 )の吸着については吸着熱E1 、二段階目(n > 1)以降の吸着については吸着熱E を放出するとする。すなわち固体表面とじかに接触する一層目の吸着熱を与え、二層目以降には固体表面からの相互作用は働かず、吸着分子同士の相互作用のみが働くと仮定する。これにより二層目以降の吸着熱は吸着質の凝縮熱と等しいとおくことができる。 この結果導出される式は p / p 0 v ( 1 − p / p 0 ) = 1 c v 1 + ( c − 1 ) p c v 1 p 0 {\displaystyle {\frac {p/p_{0}}{v(1-p/p_{0})}}={\frac {1}{cv_{1}}}+{\frac {(c-1)p}{cv_{1}p_{0}}}} p0 はその温度での吸着質の飽和蒸気圧、v1 は仮に二段階目以降の吸着が起こらなかったとした場合の飽和吸着量、c は c = c 0 exp ( E 1 − E R T ) {\displaystyle c=c_{0}\exp \left({\frac {E_{1}-E}{RT}}\right)} c0 は定数であり、R は気体定数、T は絶対温度である。 この式は固体の比表面積を不活性気体の吸着量から算出するのにしばしば用いられる。 比表面積の算出手順の概要は、以下のとおりである。 通常は、吸着等温線の測定を吸着させる気体の気化温度付近で行う。例えば、窒素では77 K(−196 ℃)、二酸化炭素では194 K(−79 ℃)とする。従って、p0は測定装置付近の気圧とほぼ等しくなる。 吸着等温線の測定結果から p/p0 に対する p / p 0 v ( 1 − p / p 0 ) {\displaystyle {\frac {p/p_{0}}{v(1-p/p_{0})}}} をプロットすることができる。 低圧域(多くの固体では p/p0 が0.35以下)では、プロットがほぼ直線となるので、その切片と傾きからv1を求めることができる。 v1と吸着させる気体の液体状態における密度から、表面積を算出する。 このモデル式は多分子層吸着を仮定するため、メソ孔より大きな細孔でしか成立しない。また、二層目以降に働く固体表面からの相互作用を無視しているために、細孔表面積を過大評価する傾向がある。
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