音韻結合の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/20 08:08 UTC 版)
3世紀以前の倭人語の音韻結合の特徴は8世紀(奈良時代)の日本語の特徴と同じであることが、森博達らによって解明されている。奈良時代(上代)における日本語の音韻結合の主な特徴としては 開音節(母音終わり)を原則とする。 ア行は原則として頭音にくること。 頭音には原則としてラ行が来ないこと。 頭音には原則として濁音が来ないこと。 などがある。他方、倭人伝の訳音語を中国の中古音体系の「切韻」によって分類すると次のような特徴が明らかとなる。 開口字が全体の92%を占め、母音終わりの文字が88%を占めている。したがって、倭人伝の訳音語は開音節が原則となっている。「おそらく倭人語には、上代日本語と同様、閉音節(子音終り)は存在しなかったであろう」。 ア行に用いられた可能性のある字は「伊」「巳」「惟」「一」「邑」「烏」の6種類10字であるが、この内、語頭以外で用いられているのは「支惟国」、「呼邑国」および「載斯烏越」である。しかし「惟」が「邪(ヤ)」や「与(ヨ)」と同じ喉音「以」の子音(声類)に属しているので「ヤ」行の語であればア行ではなくなる。「邑」と「烏」も「倭(ワ)」と同じ喉音「影」の子音(声類)に属しているのでワ行であればア行ではなくなる。すなわち頭音でないところで使われているア行の字は見当たらなくなり、奈良時代の日本語の特徴に一致する。 ラ行と考えられる舌音「来」の子音に属する「廬」「離」「利」は、末盧国、都市牛利、彌彌那利、巴利国、卑奴母離の6例であり、すべて頭音にきていない。 語頭に濁音文字(全濁音字)が来ている語には「兕馬觚」、「投馬」そして「臺与」の3つがある。しかし、これらの「全濁音字が場合によっては倭人語の清音を表すのに用いられた可能性もある」。「兕馬觚」は「しまこ」、「投馬」は「とま」あるいは「つま」、「臺与」は「とよ」と読む可能性が指摘されており、その場合頭音に濁音が来ないこととなり、奈良時代の日本語の特徴に一致する。 このように、倭人伝の訳音語は基本的に上代日本語の音韻結合の法則性に従う可能性の高いことが明らかになってきた。
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