非鼻音化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/18 14:51 UTC 版)
漢音は当時の長安地方で起こった中国語の音韻変化、非鼻音化現象 denasalization(鼻音の後半部が口音化する現象)を反映している。子音を表す字母である三十六字母の鼻音のうち、明母は[m]から[mb]となり、微母は[ɱ]から[ɱv]、泥母は[n]から[nd]、疑母は[ŋ]から[ŋg]、日母は[ȵ]から[ȵʑ]となった。漢音はこれを反映して、中古音の鼻音を、馬(バ)、微(ビ)、泥(デイ)、疑(ギ)、日(ジツ)と口音で伝えている。このため、呉音に比べて漢音では鼻音が極端に少なくなっている。ただし、明(メイ)や寧(ネイ)のように韻尾が[ŋ]のものは鼻音のまま伝わり、韻尾が[n]のものも面(メン)や年(ネン)のように鼻音のまま伝わったものが少なくない。しかし、明の新漢音が「ベイ」、寧の新漢音が「デイ」という変化もある。
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非鼻音化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/23 02:01 UTC 版)
非鼻音化は、一般的には病理的なものを指す。鼻音や鼻母音を調音している途中で、気流を鼻腔へ送ることができずに鼻音の音価が失われる現象を非鼻音化と呼ぶ。風邪を引いて鼻が詰まったときに表れる、一般に「鼻にかかった声」「鼻声」と呼ぶものがこれに相当する。鼻声とは、音声学的には、口蓋帆は下がっていて後鼻孔(鼻の奥からのどへ抜ける穴)は開いているにもかかわらず、気流は前鼻孔(鼻の穴)から外へ抜けることができないので、鼻音をうまく調音できず、音が鼻腔にこもったように共鳴しながら、部分的に口音化した音である。前鼻孔が開放していない点で響きはやや異なるが、鼻腔に共鳴させる点では鼻音化した口音と類似する。表現する記号として、拡張IPAで補助記号[ ͊ ]が用意されており、[m͊]のように記述する。 言語の歴史的な音韻変化の途中でも、部分的な非鼻音化が起こる場合がある。鼻音の調音途中で口蓋帆が上がり後半部分が有声破裂口音として発音される。日本語の漢字音で呉音で鼻音であったものが、漢音では破裂口音として伝わっているものがあり(例えば「馬」は呉音が「マ」、漢音が「バ」)、これは唐代の中国語に起こった非鼻音化を反映しているといわれる。
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